第270話結愛の初音責め

「あっ、虫と・・・もしかして、霧ちゃん!?」


「え、もしかして、桃雫さん?」


 結愛と霧響が同時に反応した。この状況は冗談抜きでやばい。今までは初音と結愛だけでなんとかなった───かはわからないけどそこに霧響まで混ざるとなるももうどうなるかわからない。ただ幸いなのは、結愛と霧響は小さい時に面識がある。そこに賭けるしかない。


「まだそんな呼び方してるの?いい加減結愛でいい───」


「なんでお前がここにるの?」


 初音が結愛の空気間に飲まれず自分の空気感で切り出した。


「なんでって、私は温泉に来たらいけないの?」


「うん」


「虫でも入れるのに?」


 相変わらず煽るな・・・


「人間を虫としか認識できないあなたが人外なんじゃないの?」


 い、言い返した・・・


「虫を虫以外のものと認識する方がおかしいよ、じゃあ聞くけど、何科のつもりなの?」


「ヒト科」


 なんだこの会話。正直俺としては結愛とは友達として仲良くなりたいんだけど、なんでこんな虫がどうのとかって話になってるんだ?


「ヒト科のオス?メス?」


 だからなんだその質問は。


「メスだけど?」


「嘘つかないでよー」


 結愛は若干震えた声で言う。笑いを堪えるのが必死って感じの声だ。


「嘘・・・?」


「だってヒト科のメスで高校生なら胸はもうちょっと大きいもんー、中学生の霧ちゃんですらもうこんなにでかいんだよ?」


 その発言は全国の初音か初音未満の胸の持ち主の人を敵に回すことになるからやめといた方がいい・・・


「・・・は?死にたいの?」


 待て待て待て、だいぶ嫌な気がしてきた。


「死にたいの?って・・・虫が何言ってるの?駆除されるのはそっちだよ?」


「だから虫じゃないって、性別すら胸の大きさでしか測れない知能指数の低さが出てるよ?」


 こんな温泉で前みたいな物理戦になられたら困る。・・・そうだ!


「霧響!あの二人うまく止められないか?」


 俺はちゃっかり傍観を決め込んでいた霧響に小声で話しかける。


「それが・・・今ちょっと天使と悪魔が戦ってるんです」


「て、天使と悪魔・・・?」


「白雪さんを虫扱いなんて桃雫さんはひどいです!という考えと」


 どう考えてもそっちを優先していいだろう。


「もしこれで桃雫さんが白雪さんに勝ってくだされば長い間曖昧になっていた胸の大きさ問題に決着がつき、明確に白雪さんに勝てる点ができます!という考えです!!」


 明らかに後者の方が元気な感じで言ってたな。まあ、確かにこの胸論争に関しては霧響と結愛の考えが一致してるのか・・・どうなるんだ、場合によっては俺にまで火花が散ってくるかもしれないから注意しないと。

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