第169話初音による完全支配

 どうすればこの状況を切り抜け出せるんだ?この状態からどうにかして絶対に動かないといけない理由を作らないといけない。


「は、初音、喉が渇いたから一旦縄を解いてくれ」


 まあ、一旦なんて言ってるが、当然縄が解けたら全力で逃げるつもりだ。


「あっ、ちょっと待ってね」


 その掛け声とともに初音はキッチンのほうに行って、しばらくしてお茶の入ったコップを持ってこっちに戻ってきた。


「はい、そーくん、あーん❤︎」


「あーんじゃない!自分で飲む!」


「えー、別によくない?なんかそーくんが何もできない赤ちゃんになったみたいで楽しいね♪」


 こっちは何にも楽しくないんだけどな・・・


「もう、そんな照れないでいいからっ!」


 と、初音は強引に俺にお茶を飲ませた。いや、っていうか本当にやばいぞ、そんな勢いで飲まされたら蒸せ────


「ごほっ、ごほっ」


「あっ、ごめん・・・」


「そう思うなら縄を解いて────」


「私興奮してきたかも」


「・・・は?」


 おいおい、こんな状況で興奮するなんてどうかしてるんじゃないのか?いや、初音がどうかしてるのは確実なんだけど・・・


「だって、今そーくんは私がいないとお茶一つ飲めないんだよ?つまり、今は言葉通りそーくんは私の`物`なの」


「・・・・・・」


 た、確かに初音の思考ならそうなる!これはもしかして俺の思っている異常にやばい状況なのかもしれない。


「はあっ、はあっ、次は何して欲しい?なんでもいいよ?そーくん!」


 や、やばい、これは本気でやばいやつだいつもの初音とはまた違う意味でこれは本当の本当にやばいやつだ。なんとか鎮静しなければ・・・


「お、落ち着け、と、とりあえず深呼吸しよう」


「はあー、はあ・・・はあー、はあ・・・」


 だめだ。普通深呼吸は「すーはあ・・・」なのに息を吸う部分でさえ興奮しているせいではあになっている。これはもはや呼吸とは言えないだろう・・・


「本当に落ち着────」


「あー、もうそーくんは今私の物なんだから黙っててよー」


 そう言うと、初音はこれまたどこから出したのか、俺の口をガムテープで塞いだ。


「ん”ん”・・・!ん”ー!!」


「うん、これで今度こそ本当に私の物になったね♪」


 おいおい、冗談だろ・・・やばい、口を塞がれて身動きも取れないとなるともうこの場を理抜ける方法を思いつかない・・・いっそ寝たふりをしてみよう。


「・・・・・・」


「あれー、そーくん?」


「・・・・・・」


「あっ、寝たふりなんてしても意味ないからね?」


 初音は俺の作戦を見破ったように俺のことをこしょばし始めた。


「こしょこしょこしょこしょー」


「ん”ー!ん”っ!ん”ー!ん”・・!ん”ー・・・!!」


 死ぬ、死ぬ、これは死ねる。本当にやばい。こんなのほとんど拷問だろ・・・


「あはは、可愛いね、そーくん❤︎」


 くっ、今度絶対に仕返ししてやる!

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