第162話初音のドラ愛ヤー
俺はお風呂上がりに冷たいジュースを飲んだ後自分の部屋に戻った。そして部屋の扉を開けるとそこには初音がいた。
「えっ、掃除って俺の部屋のことだったのか!?」
「うん、そうだよ?あれ、そーくんドライヤーは?」
「あっ・・・」
霧響から離れることで精一杯でドライヤーするの忘れてた。
「うっかりさんだね、私がドライヤーしてあげよっか?」
「え?いや、ドライヤーぐらい自分でもでき──」
「・・・・・・」
無言の圧を感じる・・・
「あ、は、初音、よかったら──」
「うんっ!いいよ!もう、仕方ないなー、私がいないとなんにもできないんだからー」
「あ、はは、わ、悪い」
なんなんだこの小芝居は・・・まあそんなことを口に出していったら雰囲気を壊したとかって言って怒られそうなので特に何も口に出さないでおく。
そして初音は下の回からドライヤーを持ってきて、俺にベッドに座るように促した。俺はその促し通りにベッドに座る。初音は俺の後ろに周りドライヤーの電源を入れ、俺の髪の毛を乾かし始めた。
「んー、いいね、そーくんの香り」
仮に初音が男で俺が女の子だったら初音は少なくとも20回は訴えられてるはずだ。性別に助けられてるな・・・
「口に出さないでくれ、恥ずかしい」
「照れてるの?」
「うるさいっ!」
しばらく俺の髪を乾かしている初音が俺の髪の毛を力強く握って────
「もう、離さないからね・・・」
「・・・・・・」
そう小さな声で俺の耳元に呟いた。そうか、初音は──
「あっ!そーくんの髪の毛が抜けたー!!やったー!!」
「っ・・・!」
今のシリアスな空気はなんだったんだ!
「ああ、もう乾いたし、いい?」
「よくないよ!まだまだ密着──」
「あー!俺トイレ!!」
そして俺は実際にはトイレには行かずリビングに逃げ込んだ。
「はあ、全く、今日は本当にツイてない、っていうか今日だけじゃないけどここ最近の俺は全然ツイてない」
「あれ、もしかして私のことを待っていてくれたのですか?」
「違う、ちょっと逃げてきただけだ」
「はあ、そこは嘘でも肯定すべきところですよ」
と、呆れたように霧響は言うと、俺の腰掛けているソファーの隣に座ってきた。
「お兄様、ちょっと外に行きませんか?」
「外って・・・もう夜の9時だぞ?」
「いいじゃないですか、ちょっと夜風に当たりましょう」
「はあ、まあいいか、じゃあ初音に一声かけて────」
「ダメです、早く行きましょう」
霧響は俺の手を掴み、無理矢理靴を履かせるとすぐに家の外に出た。ああ、終わった。本当になんてことをしてくれたんだ。いくら初音が霧響には甘いとはいえさすがに無言でこんな夜遅くに外に出ていったりしたら浮気を疑われる。いや、初音じゃなくてもこんな夜遅くに勝手に出ていったら浮気を疑うだろう。
「・・・はあ」
俺は帰ったら死ぬという覚悟で霧響に引っ張られていた。
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