第150話初音による救済

「あっ、あー、初音、今は──」


「あっ!お兄様の彼女さん、ごめんなさい、もう大丈夫です!」


「あ、そう?よかったー」


「・・・・・・」


 変わり身がすごいな。でもそういうことならできるかぎり初音と離れたくないな。初音の前ならこうやって猫をかぶってくれるならずっと初音の近くにいたい。初音がいなくなったらまたものすごく怒られる気がしない。それにしてもさっきの霧響は本当に怖かったな。なんにしろ、初音に助けられた。


「あっ、そうだ、せっかくだしよかったらゴールデンウィーク中泊まって行きませんか?」


「えっ・・・」


「ほら!そうした方が親睦を深めるいい機会になるかもしれませんし」


「ま、待て、何を勝手に──」


 と、俺が反論しようとするも、すぐに初音が反応した。


「ほんとに!?やったー!!」


 と、初音は喜んでいる。う、嘘だろ、ゴールデンウィーク中ずっとこの家にいるって、下手したら俺の両親が帰ってくるかもしれないし、何より今の霧響と数日間一緒っていうのは本気でやばい。


「ま、待て、初音、そんなこと言っても着替えなんて持ってきて──」


「私持ってきてるよ?」


「な、なんで持ってきてるんだよ・・・」


「できる女っていうのは準備を怠らないんだよ❤︎」


 いや、できるできないの問題じゃない気がするな・・・っていうか──


「初音は替えの服持ってるかもしれないし、俺は着替えなんて持ってないぞ」


「大丈夫、お兄様の服は私がちゃんと`保管`してるから」


「うっ・・・そ、そうか」


 保管っていう言い方はやめてほしいな。普通に洗濯してるとかでいいだろ。


「そういうことなので、是非泊まっていってください!」


「うんうん」


 と、初音はものすごく乗り気なのに加え、俺の気分はジェットコースターの勢いで下がっていっている真っ最中だ。そこで俺は一つ気になったことがあったので質問してみる。


「あ、あのさ、ちなみになんだけど、ゴールデンウィーク中って、まさか──」


「もちろんゴールデンウィーク中ずっとですよ」


「・・・・・・」


 嘘だろ、俺は約一週間、こんな危険な場所にいないといけないのか。いや、だめだ、今は嘘でも喜んでおこう。


「た、楽しみだなあ」


「ですよね!」


「そうだよね!」


 なんか俺だけが置いていかれてる感じがするな。


「じゃあ、ちょっとキッチン借りていいかな?ちょっと中途半端な時間だけど、私がご飯作るよ」


「そうですか?ありがとうございます、全然遠慮せず使ってください」


「ま、待て初音」


「もう、そんなに私と離れたくないのー?」


 多分初音が思ってる理由とは別の意味で別れたくないとは言えないよな。


「いや、なんでもない、ご飯楽しみにしてるよ」


「はーい!」


 と、初音は元気よくキッチンに駆け込んでいった。


「さてと、お兄様・・・」

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