第185話 アリスは敏感
百鬼アリスは今日も規則正しい生活をしている。
朝は早くから起きて準備をし、夜は早めに寝てしまう。
というか、
身長が143センチと小さく、よく小〇生に間違われてしまうことが多い。
アリスは幼い頃から呪力が漏れ出ていた。その身の周囲に磁場のような物を形成し、近付く人に無意識なまま悪影響を与えてしまっていたのだ。
その為、出来るだけ人と関わらず、一人でいるようにして生きてきたのだ。
春近やルリと関わってから真の力に目覚め、周囲に展開していた磁場は破壊され、自分の呪力を制御することに成功する。
切っ掛けとなった春近には格段の強い想いを持っており、普段はツンツンしていたり強気な態度を取ったりしているのだが、本心では身も心も捧げてしまいたいほど心酔しているのだ。
そして、たくさんの彼女たちから迫られて困っている春近を、陰から支えたり手を回したりして助けているのもアリスなのだ。
そんなアリスの気持ちを知ってか知らずか、春近は小っちゃなアリスを可愛がったり撫でまくったりしているのだが――――
「まったく、世話が焼けるです」
アリスは『えっへん』という感じに小さな胸を張る。
たまに彼女たちのところを回って、時に注意したり時に誘導したりして春近の負担を和らげていた。
あんなエッロい女たちから一斉に迫られたら、いくらハレンチな春近でも体が持たないと心配だから。
アリスは、春近の役に立っていることが嬉しかった。
だが……最近、そんなアリスが不安に思っていることが――
ハルチカ――
他の女とはエッチしまくっているのに、何でわたしのところには来ないのです?
そりゃ、他のちょっと胸の辺りが豊満な女に惹かれる気持ちは分かるけど、待てど暮らせど全く手を出して来ないのはおかしいのです!
もういい加減待てないのです!
とっちめてやるのです!
思い返せば去年の夏……
春近のおかげで呪力の制御に成功し、その恩人であり好きになってしまった彼に全てを捧げようと誓った。勇気を出して迫ったのだが、春近には『もっとお互いを知ってから』というセリフで断られてしまったのだ。
それから一年以上経つのに、春近はナデナデするばかりで全く大人の関係になならない。
もしかして自分のことを子ども扱いしているのかと、思い返すだけでちょっと腹が立ってくる。
春近と仲良くなってからというもの、春近への想いと共にカラダの芯から溢れ出るような性欲とも肉欲ともとれるエッチな欲望が、常にムラムラと体を苛んで仕方がないのだ。
それが鬼の遺伝子のせいなのか、それとも元から性欲が強い体質なのかは分からないのだが……
いっその事、他の子のように過激に迫ってエッチなおねだりをしまくりたい……
そんな衝動にも駆られてしまう。
そしてアリスは春近に直談判する事に決めた。
――――――――
「春近、来てやったのです」
アリスは春近の部屋に突撃した。
まるで池田谷事件のように、新選組が突入し『御用改めである』と言わんばかりだ。
「あっ、アリス。今日も可愛いね」
「えっ……可愛いだなんて……照れるです♡」
お人形のように可愛いアリスがピョコピョコと現れて、春近は自然に可愛いと言葉が出て彼女を抱き上げる。
これはもうアリスの可愛らしい姿が原因なので、愛でたくなってしまうのは仕方がない。
アリスはといえば、最初の勢いはどこへやら、可愛いと言われて完全に舞い上がってしまう。
「ほーらっ、なでなでなでなで」
「はああっ気持ち良過ぎて……って、コラっ! ナデナデ禁止です!」
「ええーっ」
アリスは春近の抱っこから逃れて、正面に立って指をビシッっと突き付けた。
「今日こそは言わせてもらうです!」
「どうしたの?」
「ハルチカ、他の女とはエッチでハレンチなコトをしまくっているそうですね?」
「うっ……そ、それは……」
「わ、わわ、わたしにも……エッチなコトをしても良いです……いや、エッチしろです!」
アリスは顔を真っ赤にして、両手をジタバタしながらエッチをしろと命令する。
今度こそは、はぐらかされないようにストレートに伝えた。
「アリス、エッチに興味津々なのはオレも一緒だから分かるけど、もっと大きくなってからの方が……」
「だから同い年だと言ってるのです! もう大人なのです! 去年から全く身長が伸びていないのです!」
ポカポカポカポカポカポカ――――
アリスに腹をポカポカされる。
「そういえば、そうだった……アリスは大人だった。なんか、オレの中でロリキャラのイメージが消えなくて」
「まったく、小さいからといって不適切扱いなのは不本意なのです。全国の低身長女子を代表して主張したいのです」
「ごめん……」
「分かれば良いのです。もう、おこです。檄おこぱんぱん丸なのです」
「アリス……それ、古い上にちょっと間違ってるよ」
「…………っ」
アリス……
素で間違えていたのか……
そんなの反則だぜっ!
可愛すぎるだろ!
「おい、そんなバカな子供を見守るような目をやめろです」
「もう、アリスったら。良い子~良い子~」
「くっ……不本意なのに心地良すぎて……」
再び抱っこして頭をナデナデすると、アリスは甘えるようにゴロゴロし始める。
そのままベッドまで移動する。
「そういえば……ハルチカ、ちょっと感じが変わったです?」
「うん、最近鍛えられてきたのかな?」
「うーん……何か少し不思議な感じがするような……?」
「気のせいでしょ。いや、もしかしてオレの時代来た?」
「バカです?」
アリスは色々と敏感にできていて、春近のほんの些細の変化を感じ取った。
因果や運命を操る呪力のせいなのか、人より敏感に周囲の変化を感じ取ってしまう。
だが、春近も問題無いとの事で、その時はそのまま流したのだった。
そして、敏感なのはカラダの方もかなりのもので、ちょっと撫でられただけでも感じ過ぎてしまう体質のアリスは――――
「ちゅっ……んっ、んんんんんんーーーーーっ!」
キスをしながら敏感な体を撫でられていると、まだ序盤なのに何度目かの絶頂を体験してしまう。
喜んでくれていると思った春近は、更に念入りにナデナデしまくり、アリスの反応を喜んでいた。
そう、彼女がこんなに喜んでくれていると思えば、やっぱり男としては嬉しいものなのだ。
「うぐぅぅぅぅぅぅっ♡ もう……ダメぇ♡ それ以上されると死んじゃうからぁぁぁぁぁぁっ!」
「そんなに喜んでくれるなんて嬉しいよ」
「ちがっ、ちょ、ちょっと待つれす♡」
「えっ、もっと?」
「ら、らめぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
――――――――
――――――
――――
息も絶え絶えになり春近の胸で眠るようにぐったりしたアリスが、ジト目になって文句を言いまくる。
「まったくハルチカは、とんでもない男です。わたしをあんなに……っ、して……」
「でも、やめないでって言ってたから」
「バカバカ、知らない……」
拗ねてしまったアリスの小さなカラダを抱きしめて、穏やかな気持ちになって眠りに落ちた。
やがて訪れる恐ろしい運命も知らずに――――
幸せの形は人それぞれ違う――――
それは金なのか……地位なのか……社会的成功なのか……
それとも、愛なのか……
今、ここにいる男と少女たちは、他人から見たら異常な関係に見えるかもしれない。
しかし、固い絆で結ばれた者たちは、この時確かに幸せを感じていた。
その絆さえあれば、この先どんな運命が待ち受けていても、必ず乗り越えられると信じていた。
そして、物語は動き始める。
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