第13話 生産作業開始

  

 

 廃村を出て、ハウス方面には向かわずにセントリウス方面に出た。

 ログインする前はハウスに戻る予定だったのだけど、後の予定を考えるとセントリウスに行って、そこで生産をした方が何かと都合がいいことに気付いて、急遽予定を変更したのだ。


 フィールドに出るとすぐに移動時間を短縮するため、ゴフテスとの戦闘エリアに入った。

 最初はすごく苦労したゴフテスも今では片手間、まではいかないまでも、ほぼノーダメージかつ短時間で倒すことができるようになっている。なので、戦って倒した方が早くセントリウスにつくことができる。

 ……オルグリッチみたいにレアBOSSが出てこない限り。


 フラグめいたことを考えてしまったことでちょっと不安になったけれど、出てきたのはいつも通りのよく見たゴフテスだった。



 出てきたゴフテスをさくっと倒して第3エリアの端にあたる防壁のところまで移動。そこから一気にセントリウスへ移動する。


 途中、これからゴフテスに挑む予定なのか、ちらほらプレイヤーたちが集まっているところを見かけた。

 もとから関わるつもりはないけど、何やら雰囲気が殺伐としていたのでなるべく視線をそちらに向けないように意識しながら通り過ぎた。


 もう2月に入って、イベントまで後2週間くらいだし、そろそろ追い込みを始める時期なのかな。本格的にそうなるのは1週間切ってからだろうけど、武器や防具を新しく揃えようと思うとこれくらいから動いていないと間に合わないのだよね。


 現実よりも早くできるとはいえ、どうしても今までやっていたゲームとは違い、武器なり防具なりを作るのに結構時間がかかる。だから、イベント前ギリギリになってから作ろうとしても間に合わない可能性が高い。


 強い武器や防具を作れるプレイヤーも住民も限られているからね。今の状態だと戦闘をメインにしているプレイヤーの方が圧倒的に多いし、需要と供給が釣り合っていないのだ。


 素材を揃えてボタン1つでぱーっと出来てしまうシステムは早くて楽でいいけど、物足りないのだよね。

 UWWOみたいに時間はかかるけど、作っている途中であれこれ手を入れられる方が私は好きだ。


 それに、手を入れられないってことは武器や防具で差が出にくいということでもある。最終的にその職とかスキルにあった最強装備で全身揃えている人たちで溢れかえることになるわけで。

 まあその代わり、武器に別の武器の見た目を張り付けるスキンシステムとかがあったりして、見た目はそこまで一緒にならないこともあるけども。


 差が出ないからいい、という人もいるだろうけど、それってつまらないと思うわけです。これは好みの問題なのだろうけど。


 ってまあ、どっちがいいはともかく、こういう事情があるから、生産関係でごたついているわけなのだ。


 それで、私が廃村を出る前に兄が言っていたのもこれに関係しているのだ。


 前にちょっと強化しすぎて高額になったナイフを兄に売ったのだけど、また同じように作った物を売ってほしいとお願いされている。今回は兄だけじゃなくて、他のパーティーメンバー分も含めて。


 別に作るのはいいのだけどね。ただ、どうしてもパーティーメンバー分となると、私が作ったことのない武器や防具があるから、それらは中途半端な性能になりそうなのだ。だから、すんなりいいよと安請け合いはできない。


 前みたいに強化元となる物を買ってそれを強化してもいいのだけど、いい武具の争奪戦が始まりかけている中で、いいものが手に入るかといえば難しいだろうし。


 それに土台の武器や防具が強ければ長く使えるし、高くなることは最初から分かっている以上、やっぱり中途半端な物じゃなくていいものを土台にした方がいいよね。


 私もスキルの熟練度が上がるし、これからハウス関連でASが必要だから、最初から受けるつもりではあるのだけども。上手く行くのか、良いものができるのかわからないからそのあたりの注意は先に説明しておいた方がいいかな。それで嫌とかためらうとかなら他の知り合いに頼むだろうし。


 そんなことを考えているうちにセントリウスの街に到着した。


 街の中にいるプレイヤーの数はそこまで多くはない様子。今の時間は現実では早朝なので土曜とはいえ、まだまだログインしているプレイヤーの数は少ないようだ。


 そのままギルドに入り、達成できる依頼を片っ端から受けていく。中には討伐系の依頼もあったので、それは先に達成しておくことにした。


 

 早々に討伐系の依頼を終えて、ギルドの生産工房に入る。


 依頼で受けたものは先に作るとして、それ以外で作るものはまだ決まっていない。

 とりあえず今のままだと委託からたくさん素材を買うことができないので、インベントリの中に入っている素材を使って何かを作ることにしよう。


 今持っているのはフォレストシャドウウルフ、フォレストスラッシュディアの素材が多め。他はトレントの素材やフィールドで採取できるものがちらほら。

 あとはハイドスネークの素材がまとまってある感じかな。


 ハイドスネークは第3エリアの森で出てくる蛇型のエネミーなのだけど、ネームの通り普段は隠れていて獲物が来たら奇襲してくるタイプ。

 本来なら厄介なエネミーなのだけど、【感知】スキルの影響なのか攻撃してくる少し前くらいから見えるのだよね。だから、あっさり迎撃できる。


 奇襲型だけあってこの蛇、普通に戦ったらあっさり倒せるくらいには弱い。第3エリアに生息しているだけあってベアくらいの強さはあると思うけど、ベアなら瞬殺できるからやっぱり強くはないかな。


 ただ、この蛇の素材を防具に使えば【隠蔽】とかの気配を殺す系の能力がつくと思う。最初にガルスに作ってもらった防具に隠蔽能力強化がついていたし、似たような効果がつくはず。

 素材のQuも低くないし、これは装備に使いたいから後にしよう。

 

 やっぱり最初はポーチ系かな。

 フォレストベアの毛皮は結構あるし、防具に使うには弱いからありだよね。それにポーチ需要もまだあるみたいだから作れば売れるはずだ。2、3個合成して拡張しておけばそこそこのASになるし、最初に作るのはこれにしておこう。


 依頼で受けたポーションなどを先にポイポイ錬金で作ってから、サクサクフォレストベアの毛皮を使ってポーチを作っていく。ポーチ自体が小さいので、1つ作るのに必要な毛皮が1つとその他いろいろだけあって、結構な数が作れた。それを2個から3個ずつ合成エンチャントして、容量を拡張していく。


 出来上がったフォレストベアのウエストポーチはVIT+3、MND+1と、ないよりはましという結果に。容量は2Lと3L。SASは12000から16000くらいとまあまあな感じ。

 エンチャントも使っていないし重力石も使っていないからこんなものかな。フォレストベアの素材なら防具に使えばSTRも上がったと思うけど、やっぱりアクセサリー系だとSTRは上がらないみたいだね。まあ、アクセサリーでSTR上がったらどうやって上げているのって感じだからおかしくはないのだけどね。


 それで、ポーチを作っていて気づいたんだよね。防具は作るつもりだったけど、私が装備しているポーチも更新していないなって。


 だから作りました。



[(アイテム・収納)森切鹿のウエストポーチ Ra:Uc Qu:B Du:120/120 SAS:138600]

フォレストスラッシュディアの皮を使ったウエストポーチ。小さいながら容量の拡張ため本来の容量よりも多くアイテムを入れることが出来る。重量も特殊な加工がされているため、内容物の本来の重量よりも軽くなるようになっている。(容量:0/5L)

VIT+8 MND+3 重量軽減70%

装備可能:アクセサリー



 動きに干渉しないよう小さいウエストポーチだけど、容量を拡張しているので結構入るようになった。

 これなら前よりも戦闘中に使う毒液玉とかをポーションと一緒に入れておくことが出来る。現実だったら毒液玉が中で破損するとかありそうだけど、ゲームなのでそんなことは起きないし、取り違えるなんてこともないからいいよね。


 ついでに、というか調子に乗って同じような感じで、もう2つ強化したウエストポーチを作ってしまったのだけど、委託に流す前に兄に購入の打診をしたらお買い上げされました。


 兄はASがなくて買えなかったみたいだけどね。なんでだろうね?




 ―――――

 限定近況用のネタが切れてきているので、何か読みたい展開とかがありましたら、こちらの近況ノートの方で出してくださると助かります。UWWOに限らずネタ募集中です。

https://kakuyomu.jp/users/Tofu-with-little-bittern/news/16817330667934660757

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