第10話 スキルの取得は計画的に
瓦礫を拾っていたらなぜか棺桶を手に入れるという想定外のことはあったものの、取り合えず動かせる瓦礫をあらかた拾い集めインベントリの中にしまったので、別の部屋に移動することにした。
他の部屋はあの日記が置かれていた部屋とネズミの王国の2部屋なのだけど、日記が置かれていた部屋はそれほど変化はなかった。
奥の部屋だったこともあり天井も崩れておらず、瓦礫が中に入ってきてはいなかった。ただ、残念なことに私がいた時にかろうじて形を保っていた棚やテーブルは完全に崩れ果ててしまっていた。
残っていたとしても回収するつもりはなかったけど、こういうのを見るとなんとなく悲しい気持ちになるね。
部屋の中を見渡した限り他に回収できるようなものは何も残っていなかったので、この部屋の確認は終わりにする。
あとはネズミの王国だけかな。そこの確認が終わったら上の階に登ってみることにしよう。
「うーん?」
そんなことでネズミの王国がある部屋の前に来たのだけど、マップでも【感知】でも中の状況が掴めないのだよね。前は【感知】で中にいるビッグラット(小)の存在が確認できたのだけど、それが一切見えない。
完全に部屋の中が埋まってしまっていて中に入れなくなってしまっているということなのかもしれないけど、ドアは相変わらず古びていて壊れかけているけど開けられないことはなさそうだし、この部屋の上が崩れてしまっているなら外からでも確認できるはずなんだよね。
だからおそらく私がいなくなったことで何かしらの変化があったのだと思うのだけど。これは中を確認してみないとわからないね。
ドアノブに手をかけ少し力を入れてドアを開ける。私がいた時と同じようにドアは何かが引っかかっているような音を立てて開いた。
「ん?」
ドアを開けた瞬間、エリアチェンジした時と同じような感覚を覚えた。
前はこの感覚はなかったと思うのだけど、簡易セーフティエリアになって変わったのかな。
ああ、でも。同じユニークエネミーが出てくるウエストリアの地下水道は、同時に何人も挑めるようにインスタンスエリアになっていたし、ネズミの王国もそれと同じようになったということか。
再度確認した【感知】で表示されるマップに多くのエネミーマークが表示されているところを見て、部屋の外から中の様子が確認できなかったのが、別エリア化していたせいだと理解した。
しかし、相変わらずたくさんいるよね。
ここを出る前は一気に倒せなかったから[ポイズンミスト]でちょっとずつ数を削っていたけど、今はそんなことをしなくても大丈夫なのだよね。
少し前のことを思い出しながら迫ってきているビッグラット(小)に[シャドウニードル]を放って一気に数を減らす。
ゴリっと一気に減ったネズミたちを見て、あの時と比べてずいぶん自分も強くなったなぁと感慨深い気持ちに浸りながら、残ったネズミたちを倒していく。
そして、奥の方にいるビッグラットを倒し、最奥にいたすでに懐かしく感じるグネズミーを瞬殺してネズミの王国を後にした。
廃屋の1階にある部屋の確認も終わったので、当初の目的である廃屋の2階に登ることにする。
廃屋の中にあるべき階段は崩れ落ちてしまっているため、中から2階部分に上がることはできないので、一旦外に出て上がれそうな場所を探すのだけど、意外と上れそうな場所は多くなかった。
ぐるりと一周廃屋の周りを回ってみたのだけど、登れそうな場所は1、2箇所といったところ。
最初の頃より崩れている範囲が広がっていることもあって、登る際の足場にできそうなところも少なくなっているようだ。
最初は一気にジャンプして登るつもりだったのだけど、意図的にそれができないような崩れ方をしている気がするね。2階の部屋に入るにも壁の崩れたところを伝っていかないと入れそうにないし、そこに行くにも何度か崩れた場所を足場に移動していかないとダメっぽい。
これはもうちょっと早く戻ってきた方が良かったのかもしれない。
残っている部分の構造があからさまに入り難くなっているし、これだと2階に何かあります、って言っているようなものだよね。
ここまであからさまだとまだ誰の手も入っていないとは思えないけど、もしかしたらここを初期地点として使っていた私しか手に入れることができないモノがあると信じて2階に登ることにする。
崩れている壁の中でも比較的上りやすそうな形で崩れているところを足場にしてちょっとずつ登る。
大丈夫そうな場所を選んでいるとはいえ、崩れた部分に足を乗せるたびにちょっと崩れる感触が足の裏から伝わってくるのがわかり、その度にヒヤヒヤする。
崩れた壁の上を滑って落ちないよう慎重に登っていく。当然、崩れた壁は階段のようにはなっていないので、何度か跳躍して幅の狭い壁の上を進むことになる。
今だと余裕で飛び越えられているけど、最初はこれができなくて2階に登るのを諦めたのだよね。セーフティーエリアだったからダメージはなかったけど、絵面は相当痛そう、というか痛覚オフにしていなかったら絶対痛かったよあれ。飛距離足らな過ぎて顔面からいったからね。
先に繋がっていない壁の上を飛び越えて少し離れた場所に飛び移る。
〈条件を満たしたため【跳躍】スキルが取得可能になりました〉
おっと。このタイミングで【跳躍】スキルが取得可能になるとは。もう少し早く取得できるようになっていれば、川を越えるのが少し楽になっていたのにと思わなくもない。
まあ熟練度が低い状態だと飛び越えられるかどうかは怪しい気はするけどね。【走法】も熟練度が0%の時そんなに走る速度が速くならなかったから、取得したてだと気持ち飛距離が伸びたかな、くらいの変化しかないのじゃないかな。
まあでも、無いよりはマシなのは確かだから取得はしておこう。早めに取得しておけばそれだけ熟練度は稼げるわけだし。
ウィンドウを操作しSKPを4消費して【跳躍】スキルを取得する。これで少し登るのが楽になるはず…………あれ?
待って。このタイミングでこのスキルを取得したら今までの感覚が狂うのでは? 今のところこれくらいの力加減でこれくらいの距離を飛べる、といった感じに登ってきたのだけど、今から【跳躍】スキルの効果も入るんだよね? そうなると同じように飛んだら想定よりもより遠くに飛ぶことになるわけで…。
これは取得するタイミングを完全に間違えた。ちょっとの熟練度を手に入れるために釣り合わないリスクをとってしまった感じ。
ま…まあ、落ちたらまた登ってくればいいだけなのだけどね。某崖登りゲーのおじさんみたいに数時間もかけて登ってきているわけではないのだから、ほんの数分の差だ。気にするほどじゃない。
この後、案の定飛びすぎて一度落下したものの、それ以降はしっかりどれくらい飛べるのかの感覚を覚えて、再度失敗することなく廃屋の2階部分に到着した。
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