第28話 運搬とギルドでの一幕
タマゴ、どうやって運ぼうかなぁ。
インベントリに入れられないとなると持ち運びが面倒だし……いや、待った。インベントリに入れられないというだけで、別にインベントリ以外の入れ物に入れられない訳ではないのでは?
そう思い、インベントリの中を整理し、空にしたリュックを取り出す。リュックに入れる前に、とりあえずタマゴのSSと説明文のSSを撮っておく。
SSは食材にならないままリュックに入れることが出来たら兄のフレチャに送ればいい。先に送っておいてリュックに入れた途端食材になったとかだったら訂正が面倒だし。
さて、タマゴを回収。リュックに入れて……あ、クッション用に鉱山へ来る前に手に入れたフォレストディアの毛皮を入れておこう。毛皮の上にタマゴを入れて……うん。食材には変わっていない。良かった良かった。
っと…………特に周囲で変化があるような気配は……ないかな。周囲を見た限りエネミーが出て来るような様子もないね。
あっさりタマゴが手に入った。何も無い方が嬉しいけど、無いなら無いで釈然としない感じ。
あれもこれも求めるのは我が儘かな。あ、いや、無い方が良いのだけども。
問題なくタマゴをリュックに入れられたので兄へフレチャを送る。返信がすぐに来るかどうわからないので、一旦フレチャの画面を閉じた。
〇
「ファルキン。そっち終わったらこっち来てくれ!」
「今終わったところだから今行――あ、ちょい待ってフレチャだ」
丁度手元の作業が終わったところでエンカッセからの呼びかけに答えたところでフレチャの通知が来ていたことに気付いた。
アユから? 食べ物は少し前に受け取っているし、返済用の素材もその時に渡しているよな?
このタイミングで何かあっただろうかと追考するが特に思い当たることはない。見ればわかるかとすぐさま思考を放棄しフレチャを開いた。
ア ユ:これいる?
ア ユ:SS
ア ユ:私がそっちに着くまでに考えておいて。いらないなら食材行きデス
連続でフレチャが届いているんだが、なんだ? いる?ってことは、まさかさらに借金しろと? まだ半分くらいしか返済していないっていうのに……
しかし、いらないなら食材行きって何だ?
「タマゴ? …………!?」
1枚目のSSに写っていたのは何かのタマゴ。画像を拡大してみても何のタマゴなのか一切わからないし、画像内に比較対象が無いのでサイズ感がわからなかった。しかし、これで食材云々の話は分かった。それと同時にある可能性に思い当たり、すぐさま2枚目の画像を拡大した。
「ワイバーンの卵……! きっ」
(゚∀゚)キタコレ!! と叫ぶ前に物理的に口を塞ぐ。ここで叫べば他のプレイヤーに何かがあったことがバレる。下手な騒ぎになればアユに迷惑がかかるかもしれない。
MPを注げば孵化するのか。アユ自身が孵化させないのかとも思ったが、生まれて来るのはワイバーンだ。その辺に居る普通のエネミーではない。どう足掻いても目立つだろうな。だからこっちに持ってくるのだろう。
ファルキン:(≻ω≺)いります! 欲しいです! いくらですか!!
返信したが、うーん反応ないな。移動中か? それとも俺の返答に呆れているのか? まあ、移動中なら返事は難しいだろうから返事が来たらすぐに気付けるようにしておこう。
とりあえずエンカッセにこれの事を話して、アユが来るまでにこのタマゴの扱いをどうするかを決めておかなければ。
〇
やっとイスタットの街に戻って来た。元来た道を戻って来たので行きよりも時間は掛からなかったけれど、それでもそこそこの時間が掛かった。
途中通り過ぎて来た坑道の前には多くのプレイヤーが集まっていたので、アナウンス通りしっかりと坑道の封鎖は解除されたのだろう。
そして鉱石の不足が問題になっていたようなのでその影響で坑道にプレイヤーが集中していた分、イスタットの街にはプレイヤーの姿は少ないように感じた。
いくつかイスタットのギルドでしか達成できない依頼を受けていたので、その達成を報告するためにギルドに入る。
「ん?」
ギルドの入り口を潜った瞬間違和感を覚えた。
別サーバーに飛ばされた? イベントでも発生したのかな。でも、そんな気配と言うか条件を満たしたようなことは何もしていない……わけなかった。あれかぁ。
不思議に思ってギルドの中を見渡していると取り押さえられている3人の人影。その影に見覚えがあったのでどうしてこうなったのかの原因を理解した。
捉えられている3人は鉱山でロックワイバーンに追われていたプレイヤーだった。
ただ、少し違和感。
何と言うかほんの少しの接触だった訳だけど、あの3人組と今目の前で捕らえられている3人で印象が一致しない。別人っぽい感じ?
「ああ、貴方はこの者たちを捕らえてくれた方ですね」
「え? あ」
ああ、そういう事か。
レッドNAMEのプレイヤーは倒されると逃走か牢獄行きなわけだけど、実際はそのレッドNAMEプレイヤーを倒したプレイヤーが捕らえて衛兵とかに受け渡したとかそんな流れなのだろう。殆ど省略されていた上に大して気にしていなかったから知らなかったけど。
それにあの3人組。ギルドから指名手配されていたから、捕まえたってことで報酬が支払われるはず。だから、これはそのためのイベントということか。
となると、あの3人は別人というよりもこのイベント用に外側だけ複製されたアバターという事かな。だから印象が違うと感じたのだろうね。
「貴方のお陰で逃げていたこの者たちを捕らえることが出来ました。ありがとうございます」
「えっと」
偶然見つけていつもの流れで倒しただけだから、感謝されても困る。
「報酬についてなのですが、受付の方へ来てもらってもよろしいでしょうか。あちらで手続きをしますので」
何か時間が掛かりそうな気配。
というか、これあれだ。勝手に話が進んで行くタイプのイベント。たぶん会話の受け答えに何を言っても言わなくても進行に影響がないやつ。現に受付嬢の言葉に碌な返事をしていないのに話が進んでいるし、間違ってはいないと思う。
しかし、この手のイベントなら……あぁ、あったあった。
『このイベントをスキップしますか? YES/NO』
報酬を受け取るだけのイベントなら時間の無駄にしかならない。雰囲気と流れからしてそれ以上のことはなさそうだし、最後までイベントを見たとしてもいい情報が手に入るような気配もなさそう。
『イベントをスキップします。
・・・
・・・
報酬アイテムを受け取りました。
インベントリに入りきらなかったアイテムはギルド倉庫へ移動しました。
ギルド貢献ポイントを獲得しました。』
イベントスキップ終了。目の前からアナウンスウィンドウが消えると同時に視界が一瞬揺らぎ、気付けば訓練場入口に立っていた。
何でここにと思ったけど、入り口付近に戻されれば目立つからその辺に気を使ったのかな。イベント空間と同じように、訓練場も別サーバーらしいからこっちの方が戻し易い、とかもありそうだけど。
受付に向かい、依頼の達成報告し、新しく依頼を受ける。その後にインベントリ内にある素材をギルド倉庫へ移動させた。
ギルドでの目的を終えたのでギルドから出て噴水広場へ移動し、そこからセントリウスへ移動した。
―――――
あの巣はマップで確認するとワイバーンの巣になっています。
タマゴに触ると同時にロックワイバーンが出て来る仕様でしたが、先に倒してしまったので何も起こらず。
ギルドでのイベントはギルド職員から感謝されて報酬を渡すだけの物。報酬の内容は捕らえたプレイヤーが持っていた未使用の消耗品と素材、AS。それと、ギルド職員の好感度。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます