第3話 修正内容の確認とPKK

 

 お知らせの確認も終わったので、まずは何をするかを考える。


 初心者支援はやるとして……初級ポーションが先かなぁ。PKKはPKerが出てこないとできないし、出てくるのは今日のログイン開始から始めた2陣がチュートリアルを終えてからになるから時間的にまだ早いはず。

 うん。先にポーションを作って委託に流したくらいでPKKしに行けばタイミングは良いかな。

 ああでも、PKKしに行く前にブラッドウェポンの確認をしないと。距離によって威力が変わるのがどんな感じなのか把握しておかなければ、戦いの時にどの攻撃をするかの判断ができなくなるから駄目だよね。


 ギルドに向かい生産施設でポーションを作ることにする。

 ある程度、買い占められることを見越して薬草を購入しているのでそれを全て使い、作ったポーションを委託に流す。制限は……LV10で転売不可。価格は標準で、これでも利益は出るし問題はないだろう。

 それと後でウエストポーチでもいくつか委託に流すのも良いかもしれない。もちろん制限は付けるし初心者用の容量を拡張していない安いやつだけど。


 1時間ほど使いポーションを作り委託に流した。すぐに捌けるとは思えないけどそう時間がかからないうちになくなるかな。少なくとも現状流れている私が流したものと同じ初級ポーションQu:Bは最高額のみなので、少し安いQuが低いものが無くなったり、回復量が少ないと思えば買うことになるだろう。もしかしたら先に買いだめされるかもしれないけど。


 生産しているときに気づいたのだけど、賞金付きのPKerをPKKすれば生産したアイテムを安く委託に流しても補完できそうなんだよね。

 まあ、行き当たりばったりというか計画性のない案だから上手くいくかはわからないけど、そこそこの賞金がついているのを倒せればそれだけでアイテム販売分で損……はしていないけど、本来なら手に入れることができたAS分くらいはどうにかできるかもしれない。




 PK勢が多いらしいウエストリア側へ移動した。この辺りに長く留まるつもりはないし、ブラッドウェポンの確認が終わってすぐにPKKに移れるようにしたかったからだ。


 移動中に確認した限り、確かに距離の制限は受けていた。ただ、規定距離以上のところへブラッドウェポンを飛ばすと武器化が解除された。そのまま落ちるのかと思えばそうでもない。武器化が解除された後は武器化する前の状態というか、【血魔術】の初期スキルであるブラッドの状態で空中に漂っている感じだ。もう一度私の方へ近づければ戻るかとも、と思ったけれどそんなことはなかった。


 どうしてこのような状況になっているのかと考えてみたら、修正の内容はあくまでもブラッドウェポンのみで他のスキルは修正されていない。だから一定以上距離が離れても武器化が解除されるだけで、ブラッドの効果は残る。

 何でか試してみた限り、距離制限を超えてブラッドウェポンを飛ばすと、強制的にブラッドへ変換される感じなのだと思う。確認したらMPの消費量も変化していたし。

 

 威力についてはギリギリ武器化が解除されないところで今までの6割くらい。元のダメージ量を正確に把握していないから多少は前後すると思うけど、たぶんこれくらいの変化。ただ、一定距離離れる毎に一定数減ではなく、離れていく程に減少する威力が増加していくやつみたい。

 試しに最大距離の半分、7.5メートルくらいのところのエネミーに攻撃したら元のダメージ量に比べて9割くらいになっていた。3メートルくらいの位置では威力に変化はなかった。

 ただ超近距離、要するに手に持った状態で使うと、今までに比べ何故か2割ほどダメージ量が増加した。こっちが本来の威力かとも思ったけれど、そうすると最大距離の威力が半減以下になるのでそれはなさそう。

 近い方が力を入れやすいとかそんな感じなのかな? いや、これが増減の増の部分なのか。となるとブラッドウェポンの標準攻撃距離は私から3メートルくらい離れた位置なのかな?


 このことに気づいた時、同時にブラッドウェポンを【縄術】と合わせた際の威力の変化はどうなるのかが気になったので試してみた。

 いろいろ試してみた感じ、最大距離以上に伸びることはなかったけれど、距離による威力の減衰は殆ど起きなかった。ただ、他の武器とは違って手に持った状態でも威力が増加することはなかった。


 距離による威力の減衰は第1エリアのエネミーに対してはあまり影響がなかった。いや、影響はあったけれど気にするほどではなかったと言うべきか。


 元から一撃か二撃かで倒せていた相手だから当然と言えば当然だろうけど。第1エリアに出現するモブエネミーの中で一番強くタフと言われているフォレストベアでも二撃だった。前は一撃で瀕死状態まで持っていけていたのだけど、今回試しに攻撃してみたところ瀕死にはならないもののそれに近いダメージは与えられていた。正直誤差の範囲だ。


 うん。元からオーバーキルだったから修正された結果、ノーマルキルできるようになったって感じかな。うん、結果は変わらない。

 

 ただ、縄武器に変化させた際のダメージの通り方からして今までと同じように短剣を使うのではなく、【縄術】の上位スキルである【鞭剣術】を主に使う方がいいのかもしれない。

 まだ【縄術】のスキルは100%になってはいないので、もう少し先のことにはなりそうだけど。少なくとも第2エリアまでの活動であればそれほど影響がないことはわかったから良しとしよう。



 人目に付かないよう森の中を進む。中にはフォレストベアと戦っている無謀な2陣プレイヤーらしき集団も確認できたけど、自ら森の中に来て遭遇したのなら助ける必要はないだろう。まあ、フォレストベアを狙って戦いに挑んだとは思えないけれど。


 また、森の中に潜んでいたのか移動している最中だったのか、はたまた奇襲目的で待ち伏せしていたのか、数人ほどレッドNAMEプレイヤーを確認したので奇襲して倒した。

 HPやVIT、装備によるかもしれないけれど、どうやら奇襲弱点攻撃をすれば大抵のプレイヤーは一撃で倒せるようだ。

 いや、一撃判定が出ているだけかも?


 それと残念ながら賞金はかかっていなかったのか、投獄されたというアナウンスが流れただけでPKerたちはそのままポリゴンになって消えていった。


 初心者を襲っているようなPKerにはまだ出会っていないけど、やっぱり森の中からだと確認し難い。下手すると私も奇襲せれかねないし、もうちょっと平原寄りに移動することにしよう。


 平原からかろうじて見えるか見えないかという位置まで移動したところで初心者を襲っているPKerに遭遇した。

 距離は15メートル以上離れているからブラッドウェポンの射程外だ。まあ、元からこの距離からの攻撃は外す可能性が高いからと滅多にしなかったので、いつも通り気づかれないよう慎重に近づいていく。


 残念なことにようやくPKerを射程内に捉えたところで最初に襲われていた初心者パーティーは全滅してしまっていた。

 間に合わなかったことに少し申し訳ないと思いつつも、タイミング的に救うのは無理だと判断していたので仕方ないと切り捨てる。そもそも初心者はリスポーンしてもそこまでデメリットは大きくはない。

 LVもまだそう高くはないだろうから、場合によってはデスペナルティなしでリスポーンしているかもしれないし。


 まあ、いいや。さっさと仕留めてしまおう。


 すでに森から出ている。弱体化のデバフが状態異常に追加されたけれど、フードを被っているおかけで影響は最小限に留まっている。その状態でブラッドウェポンを短剣型に形成して構える。

 狙いはPKerの首。一撃必殺が一番楽だし、PKから視認されることもほとんどない。それに助けたプレイヤーからもなるべく見られたくはないからね。付き纏われても面倒なだけ。


 距離としたら10メートルちょっと。リアルでやったら結構な確率で外す距離だけど、スキルの補正もあるし問題ない。

 

 改めて狙いを定める。動いている相手の動きを予測して攻撃を放つイメージ。スキルが弱体化された上にRACEの特性でステータスが下げっている状況で、少しでも威力を上げる方法はないわけではない。この場において必要かどうかはわからないけれど、速度による威力の増加が存在するUWWOで、その手段を使わない手はない。


 手に据えたブラッドウェポンを高速で射出する。


 ソードをPKのネックにシュゥゥゥー!! 超エキサイティン!! 


 ……はい。


『アナウンス

 レッドNAMEプレイヤーを討伐しました。

 討伐されたレッドNAMEプレイヤーに掛かっていた懸賞金がギルド金庫に送金されました。おめでとうございます。』


≪ワールドアナウンス

 賞金首のレッドNAME:きのこたけのこ戦争が討伐されました。

 討伐判定の際、カルマ値が一定以下にならなかったため、逃走扱いになります。レッドNAME:きのこたけのこ戦争に懸かっていた懸賞金が半減しました≫


 私が放った赤い武器は一直線にPKerに迫り、そのままそのアバターの首を貫通していき、その攻撃が当たったPKerは一撃でHPが全損しポリゴンに変わっていった。その光景を端に捉えながら、制限距離外まで飛ばしていたブラッドを他のプレイヤーから見つからないように回収して、私はすぐに森の中へ足を戻した。


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