第44話 坑道の先

  

 鉱山に潜り始めてリアル3日目。

 未だ目的の金鉱石どころか銀鉱石も取れていない。


 これでも結構奥の方に来ているのだけど、金鉱石を手に入れるにはもっと奥に行かないといけないのだろうか。


 他にプレイヤーが居ない、且つ、鉱山の奥となると場所が相当限られるし、他のプレイヤーが居ないことにも理由があるのだから、当然いい場所とは言えない。

 とすると、他のプレイヤーが居る場所で採掘すればいいのだけど。うーん……いや、まだ少し頑張ってみよう。



 坑道の奥に進む。ちらほらプレイヤーの姿が確認できるけれど、この辺りはあまりいい場所ではないのか微妙な表情をしているプレイヤーが多い。


 UWWOの採掘はリアル寄りだとは思うけど、さすがに鉱脈がある所しか取れないみたいなことはない。そうしてしまうと場所取りなどの問題が出てしまうから当然のことだと思うけど。


 そのため、採掘出来る場所はプレイヤーによって異なる仕様になっている。まあ、その場所自体はランダムらしいので、少ないけれど他のプレイヤーと被る時もある。その場合は先に居たプレイヤーを優先する、という暗黙の了解が採掘プレイヤーの中で決まっている。


 移動しながら、採掘できる場所を探し、見つけた場所で何度か採掘をしてどのような鉱石が取れるのかを確認する。採掘して出て来た鉱石が良くなかったらすぐに別の場所に移動。


 そんな感じで、さらに坑道の奥に進んで行った。



 暫く、採掘して出が微妙なら別の場所に移動を繰り返していたら、いつの間にか周囲にプレイヤーの姿が無いところまで来ていた。


 今回、これまでに採掘で手に入れたアイテムは石材と爆弾石で7割、残りは鉄鉱石や銅鉱石、重力石などが殆ど。後は全体の0.5%くらいで宝石といったところ。

 ただ、委託に流れていた宝石の数からして、宝石と重力石は同じくらい出てもおかしくないのに、私が手に入れた重力石と宝石の差は10倍近くも差がある。もしかしたら、宝石系が出やすいエリアがあるのかもしれない。


 それと、ここに来るまでに出て来たエネミーの大半がムーブロックだった。他にはロックワームという体長30センチくらいの虫型のエネミーも居たけど、ムーブロックよりも弱かったので気にするほどではなかった。ドロップアイテムも微妙だったし。


 そして現在、私が居る場所の少し先に兵士が2人立っているのが見えている。

 狭くはないけど幅3メートルくらいの坑道に兵士が2人も立っていると結構圧迫感があるね。


 どうしてこんな所にって思ったけど、たぶんあれ、街の入り口とか防壁の扉の前に立っているやつと同じなのだろう。

 立っている場所は変だけどウエストリアの出入り口で私を止めた検問を担当している兵士と同じ感じだし。


 この先は町と同じようなところなのか。いや、もしかしたら、第2エリアの防壁と同じでこの先がエリアBOSSとの戦闘エリアの可能性もあるか。


 どうしよう。先に進めばたぶん止められると思うけど、行ってみないとどうなのかはわからないのだよね。


 とりあえず行ってみるかな。駄目なら戻ればいいし、行かないって選択肢は普通ないよね?


「止まれ」


 兵士の様子を伺いながら横を通り抜けようとしたら、案の定兵士によって止められた。


「この先に進むのなら、通行許可証を出しなさい」


 通行許可証が何を指すのかがわからない。とりあえず、ここを通過するには条件を満たさないといけないことはわかったけど、それはどのようにして手に入れればいいのだろうか。


「む? お前、もしかして許可証を持っていないのか?」

「あ、えーと、そう……ですね?」


 そう言えば、兄たちがゴフテスに挑むために依頼を熟して許可証を手に入れる、みたいな事を言っていたね。だとすると、ここも似たような感じで許可証を手に入れる必要があるのかもしれない。


「とりあえず、ギルドカードを見せてみろ」


 そう言って片方の兵士がギルドカードを渡すように手を前に出し、催促して来た。それを見て私はギルドカードを渡す。


 もしかしたら、この兵士が偽物の可能性もあるのだけど、ギルドカードは基本的に盗める物ではないからあまり気にしないで良いはずだ。

 まあ、突然イベントが発生してカードが盗まれる可能性もあるかもしれないけど、今のところそんなイベントが起きたなんて報告はなかったし、もし起きたとしてもむしろそれはそれでありだと思う。


「ぬ? ああ、なるほど。君は北側の通行許可は貰っているのか。ならこの先に進んでも問題はないな」

「え?」


 想定外にあっさり通過の許可が出たことに驚いて声を上げてしまった。しかし、北側の通行許可、となると第3エリアの事になるのだけど、もしかしてこの先も第3エリアなのだろうか。


「ほら」

「あの、この先って何がある……のですか?」


 返却されたギルドカードを受け取りながら兵士に尋ねる。すると、2人の兵士は少し理解できないといった表情をした。


「お前、この先に何があるのかを知らずに来たのか?」

「えっと、そう……です」

「マジかよ。ああ、いや。そう言えば最近似たような奴も何人かここに来ていたな。そいつらはお前みたいに通行許可証を持っていなかったから、渋々帰って行ったが」


 なるほど。兵士の言っていた似たような奴がプレイヤーのことなら、私以外にもここへ到達したプレイヤーは居たということだ。それと、許可証を持っていなかったとは言ったけど、それがどのタイミングなのかはわからないので、もしかしたら近い内にここを通過するプレイヤーが出てくるかもしれない。


「とりあえず、この先は鉱山を挟んでイスタット公国の反対側の出口に繋がっている。と言っても、まだここから結構な距離はあるけどな。それに、この先の出口に行ったところで、出口の近くには町なんてものはないから滅多に行く奴は居ないけどな。最近、変な生物が住み着いたみたいなことも聞いたし」

「そうですか」


 うーん。変な生物が住み着いているっていうのが気になる。もしかしてゴフテスみたいな存在が住み着いているのだろうか。

 たしかゴフテスもいつの間にかあの場所に居て、ギルドが討伐の準備をしていたって話しを聞いたし、似たような感じかな。でも、そうなるとエリアBOSSの可能性が凄く高いのだけど。


「ああ。ま、許可証を持っているのなら行き来するのは自由だぞ」

「わかりました」


 とりあえず、この先の情報を教えてくれた兵士2人組に頭を下げて、私は先に進んでみることにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る