素材を探しに
第26話 ノービスクラフター
セントリウスに戻って来てから3日。
他のプレイヤーに比べ早い段階で第3エリアに到達した兄たち、エンカッセパーティーとオオカミの人のパーティーは、後から第2エリアに到着したプレイヤーたちを第3エリアに誘導?している。
理由はあの廃村。
私が初めてあの場所に到達した時に出たアナウンスで言っていた、セーフティーエリアとして使うには損傷が激しいから、リスポーン地点として利用するにはこの廃村を復興してください、というやつだ。
今後、第3エリアに攻略エリアを移すには、どうあってもあそこの廃村を復興してリスポーン地点を更新できるようにしないと、第3エリアの攻略に影響が出る。
それに、死んだら最も近いリスポーン地点がセントリウスの中央にある噴水前とか、デスペナよりも嫌な措置だと思う。まあ、私がゴフテスに負けた時に比べればまだましではあるけど、それでも嫌なことには変わりないよね。
一応、第3エリアに入ってちょっと行ったところに、簡易セーフティーエリアがいくつかあるから、最初の内はそこを使って休憩なり回復が出来るから死に難いと思う。
ただ、第3エリアに移動できるプレイヤーが増えれば、それも満足にできなくなるはず。それを解消するためにもあの廃村の復興は必要だと思う。
私も廃村の復興を手伝うべきなのだろうけど、あそこに行ってもやれることはほぼない。
なるべくプレイヤーに見られたくないし、先頭に立って指示を出すことも向いていない。兄たちみたいに第3エリア到達の手伝いをするのは、目立つだろうし知らないプレイヤーに絡まれそうだからやりたくない。
ただ、一切手伝っていないという訳でもない。
あの廃村を復興させるためにはいくつかの素材が必要で、その素材は木材と石材、後は金属類。まあ、家を作るのに必要な素材だね。
それで、これなら目立つこともないだろうと、私はその素材を集めることで手伝うことにした。
ただ、原木を木材に加工するには【木工】の生産スキルが必要だし、金属や石材の元となる鉱石を集めるには、鉱山や採石場のような場所がないセントリウスでは集めることが出来ない。
だから、集めると言っても木材の元となる原木を集めるだけなのだけど。
本当なら、委託に流れている木材や石材なんかを買えば早いのだけど、何度か必要な素材を買い占めた所為か、何かわからないけどこれが売れている、と判断した一部のプレイヤーがその素材の価格をつり上げてしまった。その所為で既に元の価格の3倍、基本価格の2倍の値段まで高騰してしまっている。
さすがに、最初の価格と比べて3倍になってしまうと買い続けることは出来ないので、それまで委託で素材を買って集めていた他のプレイヤーは、私と同じようにフィールドに出て素材を集めているようだけど、やはり委託で買い占めるよりも集められる数は少ない。
価格を下げて欲しいところだけど、言ったところで下げてくれることは無いだろうし、これは地道に集めていくことしか出来なさそう。
それで、兄たちが廃村の復興を頑張っている間、私は第3エリアで取って来た素材を消費しつつ、委託で素材を買い、生産スキルを上げ、出来上がったアイテムを委託に流す。そして気分転換に原木を集める、を繰り返していた。
当然だけど、製作したアイテムで私が使う用の物は委託には流していないし、現状流すべきではないアイテムも流していない。
生産作業の途中、【調合】の熟練度が50%になったところで新しい称号(タイトル)を獲得した。
『称号(タイトル):ノービスクラフター
取得条件:生産1次スキルで熟練度が50%を超える物を3つ以上取得している。または生産1次スキルで熟練度が80%を超える物を2つ以上取得している。
効果:生産成功率上昇(極小)』
この段階で
効果が極小の段階でその効果を実感することは出来ないだろうけど、無いよりはいいかな。それにノービスという事はこれよりも上の称号が有るという事だ。これよりも良い物となれば効果も上のはず。そうであれば獲得しておきたいところだ。
まあ、この称号(タイトル)の獲得条件的に、私のプレイスタイルであれば自ずと獲得できそうだし率先して動く必要は無いだろうね。
称号(タイトル)を獲得した後は【上級錬金】の熟練度上げも兼ねて、拡張鞄を大量に作った。
前に総合委託に流した時は売れ残っていたのだけど、どうやらプレイヤーの誰かがそれを見つけたらしく、気付いたら売れていた。
何故プレイヤーが買ったことがわかったかというと、掲示板の方で話題に上がっていたから。と言うか、売れていたことに気付いたのも掲示板で話題になっていたからだ。
現状、純生産職のプレイヤーはLVがとても低い。生産しても一切経験値が入らないから、その分戦闘職のプレイヤーに比べてLVが上がり辛い、というよりも殆ど上がらない。
中には未だにLV一桁の生産職プレイヤーも居るくらいで、当然、殆どの生産職プレイヤーはLVが20を超えていないのでインベントリの枠は増えていない。
だから、私と同じようにインベントリに入れられるアイテムの量と言うか種類を増やすため、拡張鞄が売れたのだと思う。
生産系JOBでギルドランクがDになっていれば、ギルドの生産工房が使えてインベントリの枠の事を気にしないで済むのだけど、LVが低いからエリアBOSSは殆ど倒せていないし、受けられる依頼も低ランクの討伐系か生産系の物のみ。当たり前だけど、それらの依頼ではギルドポイントはあまり稼げないから、生産職プレイヤーの大半はまだEランク止まり。
生産系JOBでギルドランクがDになっているのは、一部の生産トップのプレイヤーや今出ている料理納品依頼を熟したプレイヤーくらいしか居ない。
だから、一々生産施設からギルド倉庫のアイテムを引き出しに行くのが面倒、という理由で拡張鞄の需要があるのだろう。
たぶんこのまま拡張鞄を作り続けてもある程度は売れるとは思うけど、採集に持って行くことも考えられるから重量をある程度無視できる圧縮鞄の方が売れると思う、と言うか完売までの時間を見ればこっちの方が先に売れていた。
作って専用委託に流した物は今のところ全て売れている。他に同じような物がないから売れているのだろうけど、ありがたい事だ。
その内、需要が減ったり同じ圧縮系のアイテムを作れる錬金師プレイヤーが出て来たりするだろうから、それまでは熟練度上げのついでに作っていこうと思う。
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