第149話 ミーガンとの打ち合わせ
トランに着いて4日目。あたし達は、ミーガンさんと日程の打ち合わせをしている。
「では、予定通り2日後にトランを発つということですね」
「ええ、幸いにして予定通り、いやそれ以上の売り上げになりましたから。あとはトランで仕入れられるものを仕入れてエルリックに向かいます」
「トランでの仕入れは高値になるんじゃないですか?」
トランの状態からついあたしの口から疑問が零れた。
「ふふ、朝未様、値上がりしているのはトランで消費するものですよ。トラン外に売るために作ったものはむしろ値下がりしているんです」
「え?なんで……。あ、そうかトラン以外には持ち出せなくて売れないから安くなっているんですね」
「そういうことです。ただ、みなさんがヴァンパイアを斃してくださったので、これからは多少商人も動きやすくなると思いますから値段も変わってくると思いますけどね」
ミーガンさんがいたずらっぽくウィンクをしてみせる。
でも、そのミーガンさんの言葉に、ちょっとしかめっ面で瑶さんが疑問の声を上げた。
「そこは、まだちょっと早計だと思います」
「なぜでしょう?みなさんが斃したヴァンパイアが、あのあたりのアンデッドの原因だったのですよね」
「直接的には、ですね。しかし、あのハンス・フォン・ゼーガース男爵と名乗ったヴァンパイアが言った我が王というのが引っかかります」
「つまり、より上位のヴァンパイアが裏にいる、と?」
「その可能性が高いです。となれば、一時的に街道のアンデッドが減っても……」
「より強いアンデッドが現れる、ですか?」
「その可能性が高いでしょうね。時期は分かりませんが」
「そうなると、また聖国というかトランが孤立しかねない感じになりそうですね」
ミーガンさんが少し考え込んだわね。
「ここは、いっそ……。しかし……」
何かブツブツをつぶやいている。
「ミーガンさん、どうされたんですか?」
「い、いや。瑶様の予想が正しいのなら、ここトランでの仕入れが、さらに困難になることが予想されるわけで、となれば、仕入れ量を増やすべきだと考えたのですが、さすがに馬車には余裕がなく、いっそマジックバッグの購入をとも思い悩んでいるのです」
なるほど、マジックバッグは高価だもの、それは悩むわね。
「ミーガンさん。追加で仕入れたい商品の重さってどのくらいあるんですか?なんならあたしが持っていきましょうか」
「重さ自体は大したことはないんですが。それでも40レグル程度にはなりますし、それに嵩張りますので一人ではさすがに」
「ふふ、試してみますか?」
40レグルってことは200キロくらいだものね。そこで、ミーガンさんが既に仕入れた商品をマジックバッグに入れて見せてあげた。
「そ、それはマジックバッグですか。ちょっと見せていただいても良いですか?」
「あ、ミーガンさんが持つのは無理ですよ」
「え?」
持ち上げようとしたミーガンさんの顔がこわばったわね。
「朝未様、これは?」
「だからミーガンさんが持つのは無理って言ったじゃないですか。このマジックバッグは容量増加だけのマジックバッグなんですよ。だからある程度力のある人じゃないと持つのは無理です」
そう言って、持ち上げて見せると、今度はミーガンさんが驚いたような顔に変わる。
「あ、朝未様。持てるのですか?」
「便利ですよ。これで簡単には盗まれることはないですし」
と笑ってあげた。
結局、そこで仕入れ済みの商品を預かり、ミーガンさんは追加で馬車に載るだけの商品を仕入れることになった。
「朝未、良いのかい?」
「え?何がですか?」
「元々の荷物だって軽いものじゃないよね?やっぱり私が持とうか?」
「それは、前にも話し合いましたよね。前衛の瑶さんの動きがわずかでも鈍るより、あたしが持っていた方が良いって。それに実際の戦闘に入った時には、その場に落として参戦するんですから、大した影響はないです」
「それにしても、朝未の探知魔法があるから、そんな慌てる事態こそないよね」
「いえ、先日のヴァンパイア戦でまだあたしの探知魔法だとはっきりわからない敵がいることがわかりました。何よりあたしには攻撃魔法もありますから。だから、荷物はあたしが持ちます」
「はあ、朝未も頑固だよね。でも、いつでも交代するから」
「はーい。それより、この後はギルドに報告ですよね」
「ああ、今日の夕方に報告して明日の朝、聖国に捕まる前に出掛ける」
あたしたちは、ギルドに足を向けた。
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