第30話 武器選び
「まずは、ヨウとかいったか。獲物は何を使う?いや、2人の使っている獲物を見せてもらった方がいいか」
あ、瑶さんがイヤーな顔してるわね。まあこんなプロにお手製の手斧と弓を見せるのはちょっと嫌なのは分かるわ。あ、でも瑶さんが諦めたわね。鞄から手斧を出しているわ。弓はまああたしが背負っているしね。あたしもそっと弓と手斧を出したのだけど、どんな反応するかしら。
「ふむ、手作りか。素人の手作りとしてはまずますかの。しかし、こんなものを使うとは何かトラブルでもあって武器をもちだせなんだのか?身なり言葉遣いからしてこんなものを常用する部族の出ではあるまい」
あれ?ヴェルマーさん嫌味のひとつも言うかと思ったのにちゃんと見てくれてるわね。
「まあ突然の事でろくな装備を持ち出すことも出来なかったのは確かです。だからこそ、多少の余裕の出来た今のうちに装備を可能な範囲で整えたいと思っているのです」
確かに、あの転移は突然の事だったわよね。それに、あたしだけだったら2日後にはきっと魔獣のお腹の中だったわね。
「手斧と弓を手作りしたのは得意だからというわけではないという事だな」
「ええ、その場で作るにはそれしかなかったというだけです」
ヴェルマーさんが考えこんじゃったわね。
あ、奥に入っていっちゃった。
「とりあえず、色々試してみてくれ」
そう言ってヴェルマーさんは、いくつもの武器を出してきたわね。槍、剣、弓、斧、そして、あれはハンマー?
それぞれに大きさも大きい物から小さいものまで色々あるわね。
「うわあ、大きい剣ね」
「ちょっと嬢ちゃんがそれを持つのは……。え?持てるのか?振れるか?」
あら、120センチくらいの剣は持っただけでヴェルマーさんが顔を引きつらせているわね。でも、これは長すぎてあたしが振るには向かなそうかしらね、でも、一応振ってみようかしら。
「嬢ちゃん、両手持ちでとはいえ本当に振れるんだな」
「でも、ちょっとあたしには向かないわね。重さで身体が持っていかれそうだもの」
あ、瑶さんが少し前までは槍を見ていたと思うのだけど、1メートル弱くらいのあたしが振った剣より短い剣を試しているわ。両手で、片手で上から下から横から、そして突き。結構重たいと思うのだけど、随分長い時間振っているわね。
結局30分近く振り回して満足したらしい瑶さんが、今度はずっと短い30センチくらいの剣、あれって短剣っていうやつかしら、を持って振り始めたわね。ただ、こちらはさっきと違って随分と振りがコンパクトだわ。逆手に持ったり、左手に持ち替えたり色々ね。
「相方の素振りにみとれておらんと嬢ちゃんも選べよ」
うーん、やっぱりあたしは弓かしらね。弦を掛けて、グイッと引いて。ちょっと弱いわね。こっちの太い弓はどうかしら、うーん、太いわりに弱いわ。
「嬢ちゃん、こっちを試してみてはどうだ」
あら、あたしが弓を色々触っていたら80センチくらいの小ぶりの弓を渡してきたわ。ちょっと華奢な感じがするのだけど。あら引いてみると、これは結構来るわね。でも、十分に引ききれるわ。
ゆっくりと弦を戻し弓を観察してみましょうかね。あら?これ貼り合わせてあるわね。重さも木より重い気がするわ。
「この弓、単なる木製じゃないですね」
「お、分かったか。芯に鋼を仕込みカタンパルで挟み込んだ強度と耐久性を両立した弓だ。
「カタンパル?」
「おう、この近辺で採れる粘りと強度において最高の木材でな剛力の樹と呼ばれる木材だ」
「それって、結構貴重だったりします?」
「貴重と言えば貴重だがそれほどでは無いな。ものはそのあたりに結構生えているからな。単に切り倒すのに難儀するというだけだ」
「そんな材料で作った弓なんですね」
「おう、サイズ的に小ぶりなんで嬢ちゃんには扱いやすかろうと思ったが。まあ弓兵でもある程度以上力が無いと引けないんでどうかとは思ったんだが、嬢ちゃん、あっさり引いたの。良ければ射てみるか」
あたしはヴェルマーさんの勧めに従って矢を借り的に向かうことにしたのだけど、とりあえず20メートルからでいいかしらね。
ヒュン
あら、上にズレたわね。
そのぶん下を狙って
ヒュン、ストン
当たったわ。良い感じね。そこから10射ほど射て、全部当たったわね。
とりあえず矢を回収して、30メートルで……
最終的にはその広場の最大長50メートルで試したのだけど。50メートルで8割当たったのよね。
直径30センチの的でこれだけ当たれば十分よね。
「あたし、今まで20メートルで5割の命中率だったのに、弓が変わるだけでこんなに違うの?」
「嬢ちゃん当たり前の事を言わんでくれ。我らが心血を注いだ弓と素人がどうにか形にしただけの弓では違って当たり前。むしろさっき見せてもろうた手作りの弓で20メートルで5割当てる方が俺にとっては驚きだわ」
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