物語の真相①
ガイはこの世界を憎み、殺意を持ってしまった。
灰色の空に覆われた荒れ果ての世界になってしまった。
「「姫様!!」」
翡翠と真珠が雫に近寄った。
「せ、青藍…。」
「雫!!?」
「世界の秩序が乱され…私の杖も奪われた。のちに…私は死ぬわ…。」
「そんな事させねぇよ。お前を死なせない。」
「青藍?」
「行くぞ。」
雫を抱き上げ、俺はある場所に向かった。
俺の後に翡翠と真珠も着いて来る。
灰色の世界に一つだけ、飲み込まれていない場所があった。
森の奥に進むとそこには白い花が実っている大きな木が見えた。
「「大きな木だ!!」」
翡翠と真珠は大きな木に向かって走っていった。
「まさか。青藍…?」
「お前を眠らせる。」
「!?」
「雫。ガイを救えるのはお前しか居ないんだ。」
「…。」
「だから…死なせない。お前はガイと一緒に死ぬんだ。」
俺は雫の目を手で塞いだ。
そしてもう片方の手で木に触れた。
木は俺の魔力を吸い上げ、花の色が青色に変色した。
枝が雫の体を持ち上げ、青い花が花のベットを作り、そこに雫を寝かせた。
「翡翠、真珠。こっちに来い。」
「姫様…寝てるの?」
翡翠が俺に尋ねて来た。
俺は2人の肩を触った。
「良いか。2人は今日から俺の従者になってもらう。」
「「どういう事?」」
「雫が俺にお前達を託した。雫は愛した男を救いたくて、俺に力を渡してくれた。」
2人は黙って俺の話を聞いていた。
「ごめんな。翡翠、真珠。俺の従者になってくれるか?」
「なるよ。姫様は真珠と一緒に居させてくれた。真珠と一緒なら僕は何でもするよ。」
そう言って翡翠は真珠の手を握った。
「俺もなるよ。翡翠と一緒に居れるなら。」
「ありがとな。」
2人の頭を撫でて杖を取り出し、従者の儀式をした。
2人の赤い薔薇は青い薔薇に変わった。
「2人にはこの木と雫を守ってほしい。」
「この木は何なの?」
真珠が俺に尋ねて来た。
「この木は…。いや、MADAに飲み込まれていない場所が此処だけだったんだ。」
「どうして?」
翡翠が首を傾げた。
「ガイが居た場所からこの木まではかなり距離がある。黒いオーラに触れていない場所が此処だけだった。」
「なるほど。」
真珠が納得していた。
「頼むな。」
俺は2人にこの木と雫を守るようにお願いした。
そして2人を残し俺は森を後にした。
灰色の世界は異様な空間に変化していた。
洋風の街並みから荒れ果ての街並みに変わり、今まで空には何も浮いていなかったのに、家が沢山浮いていた。
「歪みの影響…か。」
「「青藍様。」」
声のした方に振り向くと、俺の屋敷に居た猫のメイドが立っていた。
「お前達…どうして此処に?」
「「雫様が青藍様にご用意した店に案内します。」」
「店?」
「「こちらに御座います。」」
猫のメイドが歩き出し、俺はその後に付いて行った。
「「ここで御座います。」」
「ここが?」
そこには古びた家が建っていた。
「「こちらが鍵になります。」」
そう言って俺に鍵を渡して来た。
「!?」
赤い薔薇の鍵を見て俺は気が付いた。
「この家は名付け屋か?」
「「作用で御座います。我々は雫様の命により名付け屋の家をご用意させて頂きました。」」
「やはりそうか。」
雫はこうなる事を予想していたのか。
ガイがMADAに飲み込まれてしまう事を。
もしかして自分が殺されるかもしれない事を。
だから俺に力を半分託したのか。
「なるほど、雫らしいな。」
俺は鍵で扉を開け、中に入った。
部屋の中は本が沢山積まれていて、ランプが灯っており、月のライトや宝石が部屋いっぱいにぶら下がっている。
色々な地図が壁に貼られ、薬草の匂いと花の匂いが混ざっていた。
「雫が俺に託したんだ。ガイを止めてやらねぇとな。」
そこから俺は渡り人でもあり、名付け屋となった。
世界が歪んだ事で変わってしまった事がある。
それはこの世界に来た魂が欠片化してしまう事。
もう一つはMADAに選ばれた者が来れるようになってしまった事。
どうやらこれはガイが雫の杖を使って仕組みを変えたのだろう。
MADAをこの世界に侵食させる事。
キャストって言っていたけど、もしかして人間の事か?
あの化け物の正体も分からない…。
この世界は自殺した者も、命のレールが切れてしまった物も平等に来れる場所だった。
だけど、この世界はMADAに飲み込まれてしまったせいで、MADAの存在を知った者、殺意を持った者だけが来れるようになってしまった。
世界の秩序を戻すのは時間がかかる。
あと、もう一つ最悪の場合がある。
それはガイが禁忌の林檎の存在を知っている。
雫はガイとよく植物園に行っていた。
その時に雫が禁忌の林檎の話をしたらしい。
勿論、この話をした時はガイがMADAに飲み込まれるなんて思っても居なかったのだ。
だから話しても問題は無いと思っていた。
「一応…確認していた方が良さそうだな…。」
雫が管理していた植物園に向かった。
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