2.死後の世界の行き方


どれだけ泣いても、涙が枯れる事は無かった。


次の日に、星のお通夜が行われた。


高校のクラスメイト、担任、部活の先輩や後輩が沢山来て、泣いていた。


線香の香りが漂い、白い百合の花に囲まれた笑顔の星の写真。


棺桶の中に眠る星の姿。


何もかもが、僕にとっては信じられない状況だ。


母親は、僕の側を離れないで泣いていた。


僕の思考は止まったままで、ただ眠っている星を見つめるしかなかった。


皆、何で星が自殺してしまったのか分からない状況だった。


クラスでも人気者で、部活でも活躍していた星が自殺するなんて誰もが思わないだろう。


僕でさえも、思っていなかったのだからだ。


お通夜が終わり、母親が部屋に入って来た。


「明日は星君の顔、見れるの最後だから寝ておきなさい。食べれそうだったらおにぎり食べなさいね。」


そう言って、母親はおにぎりをテーブルの上に置いて部屋を出て行った。


パタンッ。


僕は、勉強机に飾っていた星と僕の写っている写真を手に取った。


戻るのなら、この頃戻って欲しい…。


星、もしかして悩みがあったのか?


僕にも言えない悩みが、あったんたじゃないか?


最後のあの星の言葉。


あれは、意味のある言葉だったんじゃかいのか?


「お前は、ずっと俺の味方でいてくれるのか。」


星は、どうして…。


そんな事を言ったのか。


僕に伝えたかった事は、他にあったんじゃないか?


そう思ったら星が自殺をしたのは、何か理由があったんじゃないかと思ったのだ。


僕は、星とのメールのやり取りをもう一度、見直そうと思い、スマホを開いた。


すると、写真フォルダーに身に覚えのない動画があった。


日付けを見てみると、昨日の日付けだった。


僕のスマホで、動画を撮っている星が映っていた。


「星!?」


僕は震える指先で画面をタップした。


[ あーっあっと。よし、晃が風呂入ってる間に動画撮らせてもらうな。晃は、俺にとってかけがえの無い存在だ。いつも晃には、迷惑しか掛けてなくて…。そんなどうしようもない俺と、いつも一緒に居てくれた。本当に感謝しているんだ。

だからこそ、俺は…、この世界を壊したい。

っと晃が帰って来る!!]


慌てて動画が止められていた。


「星…どういう事だ?」


この世界を壊したい?って、どういう事だ?


ますます意味が分からなくなってしまった。


もしかしたら、星の部屋とか何か手がかりになる事があるのかも知れない。


そう思い、僕は隣の星の部屋に向かった。


ピンポーン。


インターホンを鳴らすと、星のお母さんが出てきた。


「あら…晃君。どうしたの?」


かなり顔がやつれていて、目も泣きすぎで腫れていた。


「星の部屋に入りたくて…。アイツとの思い出に浸りたくて…」


咄嗟な判断で、来ちゃったけど。


こんな理由で、部屋に入れてくれるだろうか…。


不安な気持ちで見つめる。


お願いだから、何も聞かずに入れて欲しい!!


「晃君は、星と1番仲良くしてくれていたものね。入って良いわよ。ゆっくりしていって。」


よ、良かったぁあぁあ…。


ホッと胸を撫で下ろし、おばさんの後を付いて行った。


おばさんは、星の自室に通した後は自室に戻って行った。


物があまりないシンプルな部屋で、床にはサッカーボールが転がっている。


壁には僕との写真が沢山壁に貼られていた。


「懐かしいな…。」


ギシッ。


僕は星のベットに腰掛けた。

 

枕元には星のスマホが置いてあった。


「もしかしたらスマホに何かあるんじゃないか!?」


そう思い、スマホを手に取った。


僕とパスワードは同じ、「0715」にしてある。


小学校の頃初めて試合に勝った日にしようって星が言い出し、無理矢理パスワードを、一緒にさせられたのだった。


タッ、タッタッ。


パスワードを入れ、写真フォルダーやメールを見た。


1つのメールに目がに付いた。


"Mada"


マーダ?って何だろ…


メールを開くと、サイトに飛ぶURLだけがあった。


明らかに怪しいメールでだな…。


もしかしたら、星に関係あると思いURLを開いた。


髑髏のマークが嫌に目立つサイトに飛んだ。


読んでみると死後の世界の行き方と書いてあった。


(ようこそ、この世界に絶望した者達よ。)

(この世界から逃げて、楽園の扉を開く勇気はあるか?絶望の中に生き、死ぬくらないなら、死ぬ理由を選ばないか?)


何だよ、この文章…。


絶望した者達って…、下には死後の世界の生き方が書いてあった。


① 自殺をする

自殺の方法はなんでも良い。

②満月の夜に行う事。

③以上で死後の世界に行く方法です。

MADAとは…殺意の事である。


殺意を思つ事で死後の世界の扉が開くでしょう。

死後の世界でお待ちしております。

                   MADA


「何だよ、これ…!こんなので…、星は…、自殺したのかよ!!」


ドンッ!!


僕は苛立ちながら、布団を叩いた。


まさかこれを見て星は死んだのか?


一体…、このサイトは…。


何なんだよ。


怒りが湧いていて来た。


こんなの信じて、自殺したって事かよ。


殺意って、誰かを殺したかったって事か?


バサッと壁に貼られていた写真が、1枚風で床に落ちてしまった。


拾って見ると、小学校の修学旅行の写真だった。


「っ、え?」


写真を見て、驚愕してしまった。


何故なら、僕と星以外の顔が黒く塗り潰されていた。


「何で、黒く塗りつぶしてあるんだ?」


ますます謎が深まった。


本当に星は、これを見て死んだのだろうか…。


色々スマホを見ていると、メモのフォルダーに一件のメモが目に止まり、画面をタップした。


タッタッ…。


(満月、明日決行する。MADAを持って)


「こ、これは…。」


これを見たら予想から確信に変わった。


そうか、星はこのサイトを見て自殺したんだ。


どうして?


一体、何の目的で?


でも、確かな事が分かった。


「誰かに殺意を持っていたから、星は自殺したって事。」


塗り潰された写真、MADAへの検索履歴、メールの履歴。



僕は、親友の星の変化に気付けなかった。


変化に気付いていたら、自殺を止められたのに。


もし、本当に死後の世界に行けるのなら…。


星の事を止められるのかもしれない。


一か八かの賭けだ。


本当に死ぬのか、それとも死後の世界の行けるのか。


星…、僕は助けたい。


今度の満月の日を調べた。


タッタッタッタ…。


二週間後の金曜日だと分かった。


「二週間後か…。あれ…、急に睡魔が…」


グラッと視界が揺れ、布団に倒れ込んだ。


僕は急激の睡魔に襲われ、目を開けれなくなった。


目を開けると、目の前にはあの世界が広がっていた。


「もしかして、ここは死後の世界なのか?」


「ようやく、この世界に気付いたか。」


「っ!?」


後ろを振り向くと、フードを被っ少女が立っていた。


僕は思わず、少女に声を掛けた。


「ここは、死後の世界なのか!?」


顔の見えない少女はら静かに呟いた。


「そう、ここは死後の世界。天国と地獄の狭間の世界。」


「自殺した人が来れる場所なのか?」


「MADAに選ばれし者が来れる場所。そして、貴方もその権利を持っている。」


「え…?僕がMADAに選ばれた?」


少女は鎌を取り出し、振り空に浮いた。


ビュンッ!!


「救いたいのなら選んで、来るのか。来ないのか。

急いで、欠片を…。そうじゃないとー。」


ブォォォォォォォ!!!


大きな風が僕を包む。

 

「そうじゃないとなんだよ!!」


「MADAに乗り込まれる」

暴風に包まれた僕は、空の彼方に飛ばされた。


「待って!!!!」


目を覚ますと、星の部屋のベットの上だった。


カーテンからは、朝日が窓から漏れていた。


そうか、あの夢は死後の世界だったのか。


だけど僕は、MADAに選ばれたって?


MADAは単なる言葉じゃなくて、人物なのか?


だけど、少女が言っていたあの言葉。


「もしかしたら、星を助けられるのかもしれない。」


僕は星を助けたい。


星を助けられるのは、僕だけなんだから。


「絶対に助けてやる。星、お前には聞きたい事が沢山ある。勝手に死んだ事、一生許すつもりはないからな。」


1人で勝手に抱え込み過ぎなんだよ。


待ってろ、必ず死後の世界に行ってやる。


決意を固め、僕は星の部屋を後にした。

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