戦国異聞三代記

@Hiryu11

第1話 産声と決意

1519年永正19年


尾張国の津島商人の家に男児が産声を上げる。


その名は並河与五郎則房のりふさ。


彼の誕生が戦国の世にどの様な影響を与えるかまだ誰もわからない。




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与五郎は津島の街で父の手伝いをしていた。


与五郎の父は質屋をしており、彼は何でも買い取ると評判のいい男だった。そして困った人に金を低金利で貸す善人でもあった。


金を返せない者には労働で返してもらい、怪我や病気で働けない者には、返済を待ったりした。


与五郎の父は金貸しや質屋以外にも、戦場で傷薬を売ったり、戦が終われば死体の埋葬を無償で行い、死体が身に着けていた武具や鎧兜の販売を織田弾正忠家の許可を貰い行っていた。




そのため与五郎の家はかなり裕福な家であった。そして家には与五郎の父を慕って配下になっていた者たち住み込みで多く働いていた。




与五郎はそんな父に憧れ、そしてその父を超えるために、父の伝手を使い寺で学問に励み、父の配下で腕の立つ牢人から刀や槍などの武芸を習い、父の手伝いをしながら商売を学んでいた。




そんな与五郎を見て父は、


「与五郎、あんまり頑張り過ぎるなよ、お前はまだ子供なんだからな」


そう言って父は与五郎の頭を撫でる。


「私は早く父上の様な人になりたいのです」


与五郎の言葉を聞いた父はさらに頭を撫で微笑みました。




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そこから時は流れ、1534年天文3年の春。


与五郎は突然父に家を自分ではなく弟に継がせるべきと主張した。


それに驚いた父と弟の八六は、


「与五郎何を言い出す、家を継ぐのはお前に決まっておろう」


「そうですよ、兄上、兄上以外に継ぐ人はいません」




与五郎は、


「八六、お主はわしと違って父の商才を引き継いでおる。わしが家を継ぐよりお主が継いだほうが良い。」


と反論した。




「兄上、仮に私が家を継いだら、兄上はどうするのですか」




「それなら心配はいらん。薬売りの客でわしが小さい頃から知っている、平手殿(平手政秀)の口添えをしてもらい、織田に仕官させてくれるぞうだ」




それを聞いて2人はまた驚いた。


「与五郎、お主、武士になると言うのか!」


「そうですよ、いくら兄上が武芸に長けてるとは言え商人の子が武士になるなんて…」




「心配いらんと言っておるだろ。それに美濃の守護代、斎藤利政は油売りの息子と聞く。商人の子でも武士になれる世なのだ」


そう言って2人を説得して、与五郎は織田弾正忠家に仕官する事となった。




そしてその織田弾正忠家にとき同じくして戦国の世に新しい風を吹かせる革命児が誕生した。

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