4 俺の手伝い内容

「手伝うって……どういうこと?」

「まず私は、再構成したこの世界を元の荒涼とした地球に戻そうとしました。その後にあらためて別の文献を見つけ出して再構成をする……ですが、できませんでしたッ!」

「できないって……なぜ?」


 彼女が俺の手の中のラノベを指差す。


「元に戻すには、再構成した時と逆の手順、その文書を介して逆構成しないといけないのです。それが保全係の逆復興マニュアルですから」


 映像の再生と……逆再生みたいなモノなのかな。


「ですが、その文書はなぜだか『文字』を失っていましたッ!これでは『文字』が内包する次元変移連想イメージ流を逆走させての世界構成リバースができないのですッ!」


 あ、なんかちょっと判らなくなってきた……。


「加えて、非常に摩訶まか不思議なのですが、私の『記憶素子』の読み解きや『物質の再生』にも大幅な制限がかかっており、自分がおかしな格好で生体構成されていることに気づきましたッ!」

「え、じゃあ、そのちょっとエッチな格好は……?」

「ハイッ。どうやら私も再構成された世界のイチ構成物として取り込まれてしまったみたいなのです」


 え……。じゃあ、このチンプンカンプンな状況、誰が収拾しゅうしゅうするの?


「そして、私に可能だったことは、この『始まりの部屋』を用意すること、その文献と同時代の生命体を、『記憶素子』に基づいて再生すること……」

「それって……つまり……」

「ハイッ。私も序盤だけチラ見しましたがその文献上の『女神』。それが私に与えられた役目のようです」


 言われて、俺はラノベの表紙を再び見る。

 その表紙に描かれている一人の少女……女神。転生した主人公を最初にナビゲートする存在。

 このイラストの女神の格好と、目の前の彼女の格好を交互に見る……。確かに、同じみたいだ。


「そこで、私は仮説を立ててみましたッ!その文献どおりに物事を運ぶと、何かしら起こるのではないか、と」

「それで……俺を再生した……」

「ハイッ!そうしたら文献が復活しましたッ!」


 嬉しそうに、ピョンピョンと飛び跳ねまわる……女神。俺は開いた口がふさがらなかった。


「きっと、この文献の末尾に至るまで、この世界で同様な行動を取っていけば文献は復活ッ!そうしたら一旦この世界をリセットできるようになるはずです!」

「じゃあ、俺に手伝えってのは……」

「そうです。私がその文献の内容を知ってるのはここまでですッ!同時代人のあなたならきっとその先もご存知のはず!!」


 自称、宇宙人……でいいのだろうか。目の前の女神は、なんとも無垢むく屈託くったくのない笑顔を浮かべて、突拍子とっぴょうしもないお願いをしている。

 途中で読むのを辞めた俺だけど、確か記憶では……このラノベ、結構長かったぞ?

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