闇からの囁き〜雨宮健の心霊事件簿〜③
蒼琉璃
第1話 プロローグ
今日は雲一つない澄んだ夜空だ。
都会では綺麗な夜空は見えないけど、気温が低いから月が澄んで見える。屋上からビルを眺めると、ネオンの光が星みたいに輝いて綺麗。
「うん、今日は最高の日。あんなにお月様が綺麗なんて、なんだか幸せな気分になっちゃうなー!」
私は嬉しくなって夜空に向かって大きく両手を広げ新鮮な空気を肺一杯に吸い込んだ。そう、私は今日初めて空を飛ぶのだ。
どうして今までしなかったんだろ。
なんで元カレも友達も会社の先輩も誰も教えてくれなかったのかわからない。
絶対あんなの気持ちいいに決まってるでしょ? 本当はみんなもっと前に……学生の時に経験済みだったりする?
私が飛んでないのばれててみんな秘密にしてんのかな。
もしかして遅れてるの私だけだったら恥ずかしいから飲みの席ではこの話題、気をつけよーっと。
私はハイヒールを脱ぐと、携帯のRECボタンを押し自撮りを始める。
「えっとー、これから坂裏さくらは、○□株式会社の屋上からお空の橋に向かって飛びます! 良いでしょー。これは生配信だけど、後でアーカイブにも載せとくね。バンジー? 違うよ、パンツ見えないように、今日はパンツスーツだから残念でした」
生配信のコメントには、リスナーさんたちのコメントが流れていた。私の本業は広告関係のデザイナーなんだけど、なんとなく始めた配信がきっかけで自分のチャンネルを持ってる。
気軽にメイク動画やコンビニのスイーツ味比べ動画とか、そういう簡単なものだけどそれなりに見に来てくれる人が増えた。
そう言えば、なんでリスナーの皆も教えてくれなかったんだろ。空を飛べるってお金かからずに出来る最高の娯楽じゃない。でも私みたいにまだ飛んだことない子もいるかもだから、これは結構お役立ち情報かも。
『CHAT』
●会社の屋上からバンジーとかできるの?
○さくらん、目の焦点合ってない。なんかきめてんの?(^_^;)
■お、いきなり異世界転移しそうな設定ぶっこんできたな。
◎バンジー飛べるわけないじゃん。ここ東京でしょ。飛べたらごめん!
◇これ、生配信ですか? sakuraちゃん、いつもと様子が違うし心配です。。。
□ねぇ、マジでやばくない?
◎えー、なにかのサプライズイベントかなー。スパチャしときますね! 久々のさくらちゃんの生放送嬉しいです。
●え、まってみんな。本当に警察呼んだほうがよくない?
私は一人一人のコメントに目を通してニコニコすると、カバンの上に携帯を置き録画する。
後でアーカイブチェックしなくちゃ。最近肌荒れひどいからなぁ。中途半端に配信者して休みの前日は朝方まで編集してるからだよね。
私ももう若くないんだし気をつけよ。
私は、柵を跨ぐと空に向かって両手を開けた。誰かに足首を持たれたような気がする。
「それではリスナーの皆さん、今日のsakuraの生配信ライブは、夜空を綺麗に飛べましたです!」
そう言うと私は屋上からダイブした。
ふくらはぎから太股、腰から胸元まで何かが這い上がってくるのを感じた。走馬灯のようにいろんな記憶か頭の中によぎって、周りの風景がコマ割りみたいに緩やかに動いて落下していく。
――――ああ、それが遂に私の顔を覗き込んだ。
知ってる、私、見たことある。
二週間前、あの
『CHAT』
●え、マジ? 飛び降りた?
□命綱あった? 俺見えなかったけどこれガチなん?
◎うそ……もろに見ちゃった。なんで……さくらちゃん飛び降りたの?
☆企画とかじゃないよね? でもsakura一人で配信してたし他の配信者いたらネタバレするよね。
✕ご飯食べてたんだが吐きそう。すごい音した。
○うそ、、、これ自殺生配信じゃん。
▼ねぇ、なんか私飛ぶ瞬間に柵の下に手が見えたんだけど。
□さくら、最近病んでたし心配してたけど飛ぶとは思わんかった。
◇さくらん彼氏と別れたんよな。俺だったら慰めてやれたのに(^_^;) もったいない。
★底辺配信者のsakuraが自殺生配信してたのマ?
■水が弾け飛ぶような大きな音が響いて、暫くすると救急車とパトカーの音が鳴り響いた。これ、フェイクじゃない。あと
●やっぱり、あの二週間前のサイトが原因じゃない? ほら……あの、アクセスしたら呪われるっていうウェブサイト。あれからおかしかったもん。
▲それこそフキンシン! ほんとどこにでもオカルト脳っていうか、陰謀論好きなやつでてくるな。
□呪いのサイト検証できる人いないの? 二週間からおかしくなったのは確かなんだし。
○わからないよ……だって、sakuraのアクセスしたサイトのアドレス、モザイクかけてたし。それにあの時――――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます