第4話
彼との距離は、簡単に縮められた。同じ店に行って、同じ漫画を読んでいるのだから、まあ当然といえる。わたしも暇が取り柄なので、なるべく店に行って、彼の予定に合わせて漫画を読んだ。
でも。
彼は、名前、あと仕事の内容を、言うことはなかった。名前のほうはいい。あなた、って呼べばいいから。ただ、仕事に関しては、かなりなんというか、ただならぬもの、ふれてはいけない雰囲気、みたいなのを醸し出していた。だから訊けない。
それでもいいと、思う。どんな名前で、どんな仕事でも。彼であることに変わりはないのだから。あっなんか漫画の主人公みたいな思考してるわたし。なんか嬉しい。
そんなことをしていて。
ある日突然。
彼がいなくなった。
店に。
来なくなった。
普通ならここで展開は終わりで、漫画だったら特有のランダムエンカウントイベントや意外と近いところに住んでました発覚、あとライバルや敵の登場があるところだけど。現実だから。漫画のようにはいかない。
そう。うまくいかない。うまくいかないので、事前に策を打っておいた。店主を買収し、彼が来たらわたしに連絡するように、とりなした。スーツケースが役に立った。人生初賄賂。ワイロ。お店に送る、見返りを目的とした多額の寄付金。
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