賢者の石《ただの石ころ》

「人は何故なにゆえに生きるのか?」


私のは私にうた。


私のは、いつも私にいかける。


何故なにゆえに、ぬしはそう思う?」

如何いかなるなる理由りゆうをもって、そうしたのだ?」

「ならば、どうなると思うてのことか?」


色んなことを問いかけてくるけど、

こたえ」は教えてくれない。

 


(もしかしたら、師匠ししょうは何も知らないんじゃないか…? )と思って、聞いたことがある。

 

 

「お師匠さま?わかりやすくお答えくださらないのは、お師匠さまもわからないからではないですか…?お師匠さまは、いつも答えを教えてくれません…。」


「ふむ、では問おう。お主はどんな答えを求めとるのか?」


「お師匠さま、ですから、私は答えを求めておるのです。」


「ふむ、なるほど。それならば、どんな答えがお主にはのか?」


「ですからお師匠さま、それをお師匠さまにご指南しなん頂きたいのです。私にはどんな答えがのか?が、わからないので、それを教えて欲しいのです、お師匠さま。」


「ふむ、なるほど。ならばこう答えよう。

 答えは既に。」


「お師匠さま…。こことはどこですか?それにここにあったとして、それのどこが答えなのですか?」


「ふむ、お主は何をているのだ?何をいているのだ?何をうているのだ?

この世界はお主の問いかけによって、その姿、形を如何様いかようにも変えてくる。

しかるに、お主の問うた事が、そのままお主に答えとしてやってくるのだ。

故に、お主は何を問うた?して、ここには何がある?」


「お、お師匠さま…、ですから私は答えを教えて欲しいのです…。ですから、ここに全てがここにあると言われてもよくわかりません。ここに何があるのですか…?まったくわかりません…。」


「ふむ、そしたなら、それがお主の答えじゃな。答えとは、にとって、まったくということじゃの。」



「…。お師匠さま…?私が未熟だから、ちゃんと教えてくれないのですか?私はお師匠さまから、色んな事を学び、そして、お師匠様のような素晴らしい人になりたいと、今まで師事してきました。ですが、お師匠さま…、私には全くわからないのです…、悲しいのです…、辛いのです…、なぜ、私にちゃんと教えてくださらないのですか…。お師匠さま、私は…。」



「ふむ、お主は何を求めているのだ?何を問いたいのだ?お主への指導は手を抜いた事がない。最も教えておる。」


 

「お師匠さま…、ではなぜ、私はのですか…?わかりやすく教えてくださってるのなら、私は今ごろ沢山わかることが増えてるはずなのに…。」



「ふむ、それはお主が、からだろうな。わかりやすいがわかったなら、石ころ一つからでも、全てがわかるだろうに。」

 

 

「お師匠さま…、いくら何でも石ころ一つから全てをわかるなんて無理ですよ…。お師匠さまは、きっと私のことが嫌いなのですね…。」



「ふむ、お主は石を石としてかておらんようだな。ならば…、ふむ…、そうだの…、よし…。」



「え…、え?え?ぇえ?えぇぇぇぇ?お、お、お、お師匠さまぁぁぁ!?お師匠さま?お師匠さま…?お師匠さまぁぁぁー!!」



この日を境に、お師匠さまは になってしまった。

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