#04 最後の一回

 …――目の前にいるのはサイコパス。


 そう思わされてしまうような血走った目つきで、一正は僕らをキッと睨み付ける。


 対して、


 フーもハウもホワイも一様に呆れたようなジト目になり見つめ返す。


 やれやれだとばかりに。


 僕はと言えば、これ以上、一正を追い詰めるのは得策とは思えず、ともすれば、なにかしら、まだ彼の手の中には爆弾的な言動が残っているのではないかとさえ心配にもなる。そんな僕の気持ちなど、お構いなしにフーは淡々と追い詰めてゆく。


 フムッ!


「さて、では、お開きとしましょうか。よろしいか?」


「なにがだよ。なにが、お開きなんだよ。意味が分からない。馬鹿にしているのか」


 一正は、突然のお開き宣言に困惑と怒りを隠せない。


 そんな感情をぶつけられてもフーは飄々と言い返す。


「もう、これ以上の無駄なあがきは、みっともないですよ。蛇足に過ぎません。推理ゲームにおいても茶番劇以上のものでもないです。控えて頂いて、よろしいか?」


 おおい。


 おおい。


 それを言っちゃってもいいのか。いいのかよ、フー。


 そこまで追い詰めたらヤバいんじゃないのか。本当に大丈夫なのか?


 一正は、更に怒りがこもる逝ってしまった目つきで僕らを睨み付けてから舌打ち。


「おっと」


 フーは何かを思いだしたように顎を撫でてから言う。


「最後のヒント料を徴収しましょうか。話はそれからですね。よろしいか。山口君」


 ちゃっかり、ここで最後の最後に残ったブツを回収しようと動き出した。というかだ。渡すわけがないだろうが。最後の一回分は残して、この事件を終えると、さっき決めたんだからな。お前らの思い通りにはさせないと、そう決めたんだからな。


 ただし、


 ここでヒント料を出し渋ると、この先、追い詰める作業は僕の仕事となるだろう。


 果たして、ずぶの素人でしかない僕にもできるのか?


 うむむ。


 頑張るしかないと言われれば、確かにそうなのだが。


「お父様」


 と、ここでホワイが微笑んで、ゆっくりと口を挟む。


 なにやらフーに耳打ちをしたあと……、また、こちらに向き直り、微笑み続ける。


「なるほど。最後の一回は……、よろしい。では今回は特別に無料でという事で問題ないのですね。では、あとの事は君に任せましょうか。……という事です。フム」


 と僕には全く意味が分からない交渉がまとまったようでフーがこちらに向き直る。

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