#09 それも
とはいえど、今、フーにも言われた通り、何をすべきなのか、それが分からない。
晴れ渡った空ではジョウビタキが飛び回っていて小さな鳴き声を聞かせてくれる。
平和だなと思う。推理ゲームなどしていなければだが。
「フムッ」
フーは、心中を察してくれたのだろうか、ただ静かに佇み場が動くのじっと待つ。
下手の考え休むに似たりとは、上手く言ったものだな。
無為に時が過ぎてゆく。
それでも、彼らは、各々、好き勝手な事をしている。飽くまで僕が主体になって捜査を進める事を望んでいる。多分、このまま、ここで立ち尽くして夕方を迎えたとしても彼らは一切、動かないんだろう。むしろ帰ってしまう危険性さえもある。
今日の捜査は、これくらいにしておきましょうかとだ。
本当に、一体、どうすればいいのか。なにか捜査を進展させる一手はないものか。
と目を閉じてから天を仰いで、何度目なのだろうか、一つ、大きなため息を吐く。
やはり、ここでヒントを請求すべきなのか? と諦めにも似た思いが浮かんだ時、
痛いッ。
足の裏に違和感を感じる。どうやら石を踏んでいたようだ。クソッ。ツイテナイ。
って、……、あれ? 踏んでいた、だと?
待てよ。
ちょっと待て。うん。そうだッ。まだ、これがあった。
と、一欠片のパズルのピースを見つける。
踏んだ。
そうだ。
事件当夜、なにかを踏みませんでしたか?
とフーが、トラック運転手に聞いていた。つまり、踏んだとは事件に対しての大きなファクトとなり得る。それは、無論、トラックで踏んでいなかったかという事だろう。となれば……、トラックを調べるという手があるではないか。うん。そうだ。
せっかく、宅配会社まで来たのだ。トラックを調べなくてどうする。
ようやく打開策が思い浮かび、顔が、ほころんでくる。
「およよ」
ハウが花を見るのに飽きたのか、或いは僕の異変に気づいたのか、僕を見てくる。
「ようやく、なにかに気づいたみたいだわさ。でも、それも見当違いだったりして。てかさ。素直にヒントの請求すれば時間も無駄にならないのにね。ねっ? 姉貴」
シンビジウムから視線を離さないホワイに目配せする。
てか、聞き逃さなかったぞ。それも、と言いやがった。
つまり、一正とトラック運転手が共犯関係にあったという仮説は見当違いなのか?
それは分からないが、ともかく、それもと言ったのだ。
などと考えていると、ホワイは、一つ咳払いをしてから、ハウの頭を軽く小突く。
「こら、ハウ。せっかく必死で頑張っているのです。応援してあげなくちゃですよ」
笑み、僕に視線を移す。
また意味深な感じでだ。
「痛ぇッ」
とハウが大げさに言う。
……安定のじゃれ合い。
意味深なホワイの含み笑みさえなければ。
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