#06 CVと花言葉
美味いカツ丼を食べたせいなのか鼻血が出てきそうだ。
間違いなく、鼻の下も、伸びていた。
とハウに馬鹿にされる。
あっ!!
「エロガッパ、発見ッ!」
と……。
いかん、確かに言う通りだ。がぶりを振る。今は下らない事を考えるよりもタウンページが、一体、なにを意味するのかを考えるべきだと思い直す。そして大きなヒントとなるであろうピンク色のバラの花言葉を考える。一体どんな意味が? と。
ピロンとスマホが鳴る。
ううん?
誰だッ?
僕はスマホをポケットから取り出して画面を見つめる。
四つ葉のCVさんだッ!
「電話、鳴ったね。ダイン〔※この世界のライン〕? 見てもいいわさ。待ってるよん。はふ。あたしらは食べ疲れたから休憩してる。でも出来るだけ早くねぇ。よろしこ」
ハウが鼻歌まじりに軽く言う。フーもホワイも、同意したのか、まどろんでいる。
ありがたい。真面目に。
今、この場において、一番、距離があり、遠い人間である四つ葉のCVさん。しかし、このメンツの中では、もっとも頼りになる味方。だからこそダニット一家を無視してスマホに集中する。なにせ特上が三つで並が一つだからな、と悔し紛れにも。
>トリックについて分かった事を、ご報告いたしますね。
おお、さすがCVさん。
なにか分かったようだ。
>多分、奈緒子さんは一正さんの車を降りてはいません。ただ車の中で殺されたのでもありません。この矛盾が、まだ解消しきれていないのですが、そう推測します。
降りてはいない? でも車の中で殺されたのでもない?
>只今、様々な場面を想定して色々な可能性を精査しております。そうして一つの可能性が浮かび上がってきました。ただし、今、それを、ここで申し上げられません。
申し上げられないって?
何でだ?
>その可能性を申し上げてしまえば、山口さんと灰色探偵ダニットさんとの推理ゲームにおいて混乱を招く恐れがあるからです。なので今は聞かない方が得策です。
そうか。
なるほど。でも徐々にでもCVさんの中でトリックが解明されてきているわけか。
うん。そうだな。今は、続報を待った方がいいかもな。
>わざわざ報告ありがとうございます。また何かありましたら宜しくお願いします。
とスマホを使い返事をしてからフーへと視線を移した。
やっぱり四つ葉のCVさんは頼りになる。僕にとって。
目の前の誰かさんたちとは違ってな。
「どうしました? 何かありました?」
とフーが不思議そうな顔つきで言う。
「いえ、なにも。気にしないで下さい」
「そうですか。よろしい。ところで、ピンク色のバラの意味を考えていたのでは?」
とフーが穏やかなる笑みを浮かべる。
まあ、いつものやつだ。
あの厭みなにやにやだ。
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