#10 ヒントの請求
僕は顔を真っ赤にして机を叩く。
ああ、分かったよ。
分かったんだよッ!
クソが。
今更で余計な事がさ。フー・ダニット、犯人は誰か。ハウ・ダニット、どんなトリックを使ったのか。ホワイ・ダニット、動機はなにか。そうだよ。そうなんだよ。推理小説の三大分類こそが、こいつらの名前だったんだよ。アホか。くだらない。
実に、くだらない。
こんな偽名を使うなんて世の中を小馬鹿にしているのかッ。そうとしか思えない。
ホワイが、微笑む。
「フフフ。その通りです。大正解ですわ。でも気づくのが、少々、遅すぎますわね。フジバカマを贈りましょうか。ためらいや判断の遅れは致命傷を招きますわよと」
また心を読まれた。
自分の席に戻ったホワイは、両肘をついて両手を組んで顎を乗せる。
そういえば、先の待ち合わせでハウが見たのはブラウン・マジェスカでしたわね。
フフフ。
血が、騒ぎますわ。
「フム。話が大きく横道に逸れてしまいましたね。本題に戻しましょう。さて件の事件で、あるトリックを使えば一正君が奈緒子君を殺す為の時間は作れるのです」
「フンガー。その重要なトリックはハウちゃんが解明したわけ。偉い? 偉いよね」
と、またハウが、いらない事を言って話をかき混ぜる。
にっししと白い歯を存分に魅せてから大口を開け笑う。
けらけらと豪快に。
フーは苦笑いをしてハウの目の前に人差し指を立てる。
ブゥっと息を吐き、ふてくされてから静かになるハウ。
「ともかく、時間的猶予を考えてみた時、川村一正君にしか奈緒子君は殺せいないのです。加えて、動機の面から省みても一正君が犯人だとしか言えないわけです」
「……、それが、どうにも分からない。どんなトリックを使って時間的な猶予を作ったんですか? どう考えても一正が奈緒子を殺す事ができるとは思えないのです」
僕は間髪入れずにフーへと問う。
おもむろに目を閉じ苦笑うフー。
先ほど、
ここまでがサービスです、と言ってあったはずですと。
一旦、間をおき、仰々しく言う。
「さて、ではゲームでのヒントについてのお話をしましょうか。先ほど、ちょうどハウが、お遊びでヒント請求の提示をしていましたよね。あれを例にしましょうか」
ハウのお遊びっていうのは……、
あのフレームレートとかサンプリングレートとか言っていたあれか?
「あの時、ハウのお遊びに対して、わたくしがヒントの請求には5万円を頂きますと言いましたよね。覚えておいでですか。あれがヒント請求のサインとなります」
ヒ、ヒントだとッ?
「のち山口君がヒントを得たいと考えた場合にのみ、追加で5万円を払ってもらいます。お金を受け取ったあと、わたくしどもがヒントを提示するという流れですね」
だから、
ヒントってなんだ?
意味が分からない。
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