未定
@mastuyama
プロローグ
寒い。
小さく目に映るビルの灯りといつもより大きな月に、上がった息が白く被る。
数時間前に町にいたときは、人の話し声や電光掲示板のCMの音で普段の声の大きさでは会話がままならないほどだったのに、少し離れたところにいるせいか喧騒は聞こえない。
自身の息づかいしか聞こえない静寂に突如カンカンカンカン、とけたたましい音が鳴り響き私は一瞬肩を上げた。
所々が黒く汚れペンキが剥げた、人がすれ違える程度の道幅の踏切のバーが、軋んだ音をたてながらゆっくりと降りていく。
恐らく今よりだいぶ昔に作られたのだろう。
定位置まで降りたバー。
点滅する赤いライトの下、向こう側に誰かがいる。
なぜかはわからないが、私の血の気が引いたのがわかった。
うまく出来ない呼吸のせいで、か細い声でしか喋れない。
今も当然のように踏切の警告は止んでない。
それどころか、遠くから電車の走行音と地響きが聞こえる。
こんな声じゃ届かないのに。
混乱と悔しさに泣きじゃくる私の言いたいことを全て理解したようにその誰かは頷き、笑った。
赤く反射した誰かは私に何か伝えようと口を動かすが、何を言ったのかわからない。
電車はもうすぐそこまで来ている。
私は_____________
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