Ⅲ 暗殺開始

「わかった。」

「行って暗殺しよう。」


僕はそう言い放ってしまった。


取り敢えず、ナイフだけ持って外に出よう。


そう思って、ドアノブに手をかけたら


『お待ち下さい、どちらに行くのですか?』


すると、リリカがドアを開けようとした僕のことを止めた。


どういうことだ…

行って暗殺するんじゃないか。


「お前が言ったんだろ」

「暗殺だよ、行くんだろ。」


と強めに言うと


『まずは作戦を立て、その後暗殺しに行きます。』


殺すのに作戦なんか必要なのか。

ナイフで刺して終わりじゃないのか。


するとリリカは少し重めな声で間髪いれずに


『暗殺は必ず成功するものではありません。

 むしろ成功率は高くないです。』

『成功率を上げるには、作戦を立てなければなりません。』


そうなのか。

確かに言われてみればそうだ。

何事にも準備は必要だ。


『暗殺する時は必ず作戦を作ります。』

『その際、まずは一番成功しそうな作戦を練ります。

 それを私たちのチームでは、a案と呼びます。』

『その後、a案が失敗したときの代替案として

 b案、c案と作っていきます。

 下の上程度の暗殺ならd案まで作れば充分でしょう。』


そんなに作るのか…


『今回はあなたが初めてなので私が練りましょう。』


「わかった。」


リリカはパソコンで武蔵野市の地図を調べだし、次々とパソコンのタブを開いて、スマホにメモしていった。


5分ぐらい経つとリリカは急にパソコンを閉じた。


作戦が完成したのだろうか。

すると、急にリリカは立ち上がり


『これは暗殺用のスマホです。』

『肌身離さず待っといてください。』


と言ってスマホを渡してきた。

僕はそれを受け取り、


スマホは暗殺にも使えるのか

すごいな、


と思っていると


『air dropで今回の作戦データを送ります。』

『受け取ってください。』


といってair dropで作戦を送ってきた。


『詳しいことは現地で説明します。』

『行き道、送った作戦を頭に入れといてください。』


「わかった。」


僕はそう答えた。


作戦が完成したので、ぼくたちは外に出て暗殺することにした。


「ガチャ」


外に出てみると、辺りは真っ暗であった。


僕がこの人達に気絶させられ拉致されてから丸一日たったのだろうか。

最初は嫌悪感のあった暗殺業だが受け入れつつある。


今日の話を聞いていると暗殺業は面白そうだ。

それが僕の正直な感想だ。

しかし、人を殺したくない。

どうやってこの人から逃げるか考えないと…



リリカさんの運転で暗殺現場近くまで向かった。

暗殺業だからといって特別の車ではなくただのバンだ。


2人きりで車中話す会話もなく気まずいと思っていると


『そういえば、暗殺ランクの話をしてませんでしたね』


リリカさんが話しかけてきた


「してない、」


すると丁寧な口調で説明し始めた。


『暗殺にも様々な種類が存在します。』

『一般人一人を殺す暗殺とか、権力者グループ潰すための殺人とか。』


『その中で私たちのチームでは暗殺の規模の大きさや難易度を含めた総合的なランクを下の下とか上の中とか上中下を使って表します。』

『今回の暗殺は武蔵市の市議会議員の暗殺依頼ということで規模だけみれば下の上です。

しかし、武蔵市の警察とはパイプが存在するので証拠隠滅が容易であり難易度が低いので下の中となります。』


「そのランクは誰が決めているのか」


『外交班の人です。』


『殺し屋にも色々仕事に違いがあり、暗殺を実行する暗殺班や仕事を集める外交班、機械をいじるメカニック班など他にも様々な仕事があります。私はもちろん暗殺班です。』


殺し屋というと殺すだけが仕事と思っていたが、

殺し屋というのが当たり前に仕事となっている今の世の中では、きちんと仕事として成立するようにできているのか。


『暗殺依頼も外交班の人が受けとります。』

『権力者からの依頼もあれば、一般人からの依頼もあります。』

『受け取る報酬や誰から依頼されてるかはキャップと外交班の人しか、知りません。』


「そしたら、今回なぜ殺してほしいのか依頼の理由とか知らないのか」


『知りません。議員なのでたくさんの人に恨まれてるでしょう。

私たちの仕事は依頼された暗殺をこなすだけで、依頼理由とかはどうでもいいのです。』


僕は沈黙してしまった。

人を殺すというのに、理由や動機もなく殺すなんて、、


この人達はどういう気持ちで人を殺しているのだろうか。

どういう心持ちで向かえばいいのだろうか。


「キキッー」


車が急に止まった。


『近くにつきました。』

『さぁ、行きましょう。』


とても、リリカから無慈悲に感じた。

だが、それは暗殺するのに理由は考えるなというリリカからの愛だったような気もする。



歩いてターゲットの家の近くにつき

僕たちは作戦の確認をした。


作戦はこうだ。

ターゲットは武蔵野市議員の朝倉泰介53歳。

現在深夜3時なので寝静まっていると考えられる。

メカニック班の下調べでは表玄関は監視カメラがあり、今の殺人が当たり前のご時世厳重な守りである。

しかし、裏口が存在し裏口の鍵が植木の下に隠してあり監視カメラに映らず、簡単に開けることが可能だという。


そこで、僕が庭から監視カメラに見つからず植木の下の裏口の鍵をとり、裏口から入る。

寝ている朝倉議員を僕は刺して帰ってくる。

そして、裏口から出て行き鍵をしめてそのまま鍵を持ち帰れば完全犯罪である。


ホームページを見たところ明日は議員の仕事がないので、殺人の現場が見つかるのは遅くなる。


そして、武蔵野市の警察長官は僕たちのチームに暗殺を依頼したことがあるというので特にバレないという。


もしバレたとしても、犯人を特定した検察官の長官を暗殺すれば良いらしい。


完全犯罪だ…

いとも、簡単にできてしまうなんて。


しかし、僕は殺さないことを決めていた。


リリカは近くのコンビニに電話を繋ぎながら待っているのだという。

多分、僕が万が一逃げた時始末するためであろう。


どうやって逃げようか、



そうだ

家に入り、朝倉議員にチームのアジトを言えば良いのか。


僕は庭から入り、鍵をとり裏口から入ったところで寝ている朝倉議員起こしてチームのアジトを教えて逃げ切ることにした。



「スッ」


僕はバレないように忍び足で庭に侵入した。


「ドクッ、ドクッ」

自分の心臓の拍動が聞こえてくる。

とてつもない緊張感と高揚感でアドレナリンの放出が止まらない。


耳をすますと自分足音が聞こえてくる。


「ドク、ドク、ドク…」

どんどん早くなっていく。


やらなきゃ、ここで逃げ切らなければもう逃げれない。


そう思うと、さらに心臓の拍動が早くなり気持ち悪くなっていく。


僕は無事に鍵を植木の下から回収した。


チームのアジトを言って議員に匿ってもらう。

ここでしかチャンスはない。

ここで逃げ切ろう。


そう思い大きな生唾を飲み込み、

僕はドアに鍵を刺した。


「ガチャ」


入った瞬間、奥を見てみると部屋の電気がついている。


電気がついているということは寝込みを襲うはずだったターゲットが起きているということだ。


「ドクッ、ドク、ドクッ、ドク」

想定外のことでどんどん拍動が早くなる。


なんでだ深夜3時なのに起きている。

…どうしよう。

何をすればいいんだ、どうすれば


やばい、やばい


予想外の出来事に僕の思考回路は完全に止まってしまった。



『聞こえてる?』


すると急に、耳元からの電話でリリカが


『作戦bに切り替えてください。

起きていると考えられるで見つかる前に早く殺してください。』


ど、どうしよう…

僕はどうすればいいんだ、




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