僕は僕の親を殺した人たちと殺し屋をする
小紫
Ⅰ 殺しのはじまり
「スパッ、」
僕は初めてこの手を汚ししてしまった。
興奮と罪悪感と背徳感と様々な感情が湧き出てきた。
すると、汗と涙が止まらなくなって体全身が痒くなった。
★
『昨夜未明、環境大臣の西川さんが死体で見つかりました。』
今、日本では当たり前のように毎日権力者が殺されたのニュースが流れている。
いつからだろう、政治家達の権力争いに殺し屋が使われるようになり、
ターゲットにされた人は殺し屋に殺される前に殺し屋を使って自分を殺そうとした人を殺す。
殺しの連鎖。
これが始まり日本だけだなく、今世界中で権力者の殺し屋を使った暗殺が横行してる。
「いや〜まじか、西川危ない発言してたからかな、死んじゃったな」
「おれは、さすがに殺されると思ってよ」
こんな会話が毎朝学校で友達と交わされる最初の会話だ。
僕は高校3年生。名前は成宮康輝という。
私立高校に通っており、大学の附属校なので普通に問題を起こさなければ一流大学に進学できる。
受験せず、そこそこの学歴が手に入るのだ。
親が社長で小学校からこの私立学校に入っており、周りにも親がお金持ちの奴が多い。
なので親に政治家の人が多くはないが存在するので、
「相沢の親殺されたらしいよ」
最近の殺人の横行によりこういう話も出てきたりする。
とても可哀想だが、どうすることも出来ないし、なにより自分には関係ない話だ。
ただご愁傷様。
そう思っていた。
そうこの時は
この後起きることを知らなかったからだ…
★
「ガチャ」
授業が終わって無言で家についた。
家には家政婦の藤野さんだけがいる。
見た目は30歳くらいのおばさんだが、親によると25歳らしい。
親は社長業で忙しく、家についたら藤野さんと二人きりのことが多い。
数ヶ月前に家政婦が変わったばっかで、新入りの家政婦なのであまり仲良くない。
「今日のご飯はカレーですけど苦手なものありますか?」
藤野さんが聞いてきた。
「…ない」
僕は答えた。
あまり知らない女性と話すのは緊張するというか、気がひける。
藤野さんとは微妙な距離感である。
この後カレーを美味しくいただき、勉強したあと
明日は学校の朝番なので夜の11時にはベッドに入り就寝した。
★
突然目が覚めた。
手元のスマホの時計を見てみると深夜2時だ。
「ガチャ、ガチャ」
何か親の部屋の方で物音がする。
親が多分遅くに帰ってきて今何かしているのだろう。
起きてしまったが尿意があるのでトイレに行って、明日も早いし寝よう。
そう思って立ち上がった瞬間
「キャーーーー。」
母の声だ。
こんな声を上げるのは珍しい。
ねずみでもいたのだろうか。
なんか様子が変だ。
『ねぇ、やめて、お願いします。ホントに、ホントに。』
その声が聞こえた1秒後に
「グサッ、/」
嫌な予感がする。
父と母の寝室に少し早足で向かう。
なぜか寝室扉が開いており、物が扉から出ていた。
なんで物が出てるだ?
恐る恐る、扉の中を覗いてみると血が飛び散っていた。
よくみると
父と母の死体だ…
あ、
僕は何も考えられなかった。
きれいに胸にナイフが刺さっている。
その芸術に思わず感動して立ちすくんでいた。
その横を見てみると
あれ、藤野さんと知らない男の人が立っている。
その瞬間、
「バンッ」
一瞬だった。
僕は鈍器で顔を殴られ気を失った。
★
「おはよう、」
目を開けると知らない部屋の中にいて、
知らない美人なお姉さんが目の前に立っていた。
親が殺されたんだ…
急に気絶する前のことがフラッシュバックして。
怖くなり逃げ出そうとしたら、
何かに引っ張られ逃げることができない。
自分の手足を見ると縄で縛られてた。
『こいつ、やっぱ殺した方がよくね』
目の前の美人なお姉さんが奥にいる、ガタイがいい男性に言う。
「いや、生かしているのはキャップの判断だ。何か考えがあるのだろ」
何を言ってるんだこの人達は、
突然、扉の奥から藤野さんに似た若いお姉さんがやってきた。
いや、よくみると藤野さんだ。
『坊ちゃん、あ今は坊ちゃんじゃないね、康輝君
見てのとおり、あなたのお父さんとお母さんは依頼があり私たちが殺したわ』
『あなたは暗殺依頼がなかったから今ここに生かされているのよ』
『この後キャップが来てあなたを殺すか殺さないか判断するからちょっと待っててね』
僕は状況を理解した。
藤野さんは父と母を殺す準備のために数ヶ月前に家政婦さんとしてうちで働き、
昨晩その殺人が決行され殺されたのだ。
藤野さんが年より上に見えたのはわざと厚化粧をして怪しまれないようにしていたのか。
そして、父と母の依頼人に頼まれて親は殺されたが
僕は依頼に入っていないため殺されなかったのか。
親は社長業で忙しく、余り僕の面倒は見てこなかった。
決して仲良くはなく仲は悪い方だった。
そんな僕でさえ、イラついた。
コイツらは僕の親を殺したのにこんなにもせいぜいとしていることに。
「ガチャ」
奥から若くて背の高い男の人が入ってきた。
「キャップ、こいつどーします?」
この背の高い男こそが、さっきから名前が出てくるキャップらしい。
「ん、んんん」
く、苦しい。
急に手を伸ばして僕の頭を掴んできた。
『おい、坊や。お前には今から二つの選択肢を用意する。
俺らと一緒に殺し屋をするか、日本海に沈められて行方不明になるかだ』
すると、そこにいるガタイのいい男性が突然
「ギャップ、まじか。こんな雑魚そうなのチームにいれるのか」
『黙れ、俺の判断だ
坊や、どーする3秒以内に答えないと即死だ」』
ん、こいつは何を言ってるんだ、
殺し屋をやるか、日本海に沈めるかの二択とか意味がわかんない。
そしたら急に頭を掴んでた手の握力を強めて
『おい、早く答えろ』
まじかよ、めちゃくちゃな二択だ。
殺し屋がいるとは巷で聞いていたが目の前にいるなんて。
ましてや、親を殺した奴らと一緒に殺しをやれだと
殺しなんてアホだし、目の敵だ。
それぐらいなら死んでやる。
「日本海に、」
と言った瞬間顔面を思い切り殴られた。
痛い、
どういうことだ
『二個めの選択肢は元々ない。
お前には殺しの才能があるみたいだ。
チームに入れ』
「は?こんな奴いれんの?どういう事」
美人のお姉さんがキレながら言っている。
すると、
『黙れ』
『リリカによるとこいつは親が殺された後、胸にささったナイフに感動してそれをみて立ちすくんでいたらしい』
『殺しができるタイプの人間だ』
僕には意味がわからなかった。
死のうと思って日本海を選ぼうとしたのにチームにいれる?!
何を言ってんだ。
『お前には殺しの才能がある。
一緒に殺しをやれ、有無は言わせねぇ』
『おい、わかったか、コラっ』
「はい。」
小さな声で思わず僕は返事をしてしまった。
これが全ての始まりだった。
この返事さえしなければ、
僕は今そう思う
この一言で
僕は僕を殺した人たちと殺し屋することになってしまった。
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