第9話


「ほら! 朝だよ! さっさと起きなさい!」


 突然入って来た侍女はとてもこの家の主人の娘に対するものでは無い。


 今はまだ、この家の娘。その娘に対しての無礼。愚かなこの侍女には分からないらしい。


「……」


「ちっ! 起きていたか……。ほら、早く用意して来な!」


 そう言うと侍女はセシリアの用意もせずにそのまま何もせずに出て行く。


 だから、ここ最近は自分でも着れる服に着替えて自分で準備するしか無かった。


 それでも自分で準備するには限界がある。それにまだ4歳のセシリアは着替えにしても完璧では無い。貴族の令嬢は準備してもらうのが当たり前。それすらセシリアにはしてもらえなかった……。


 精一杯頑張って準備して、みんなが居るダイニングへ向かうがお義母様とキャシーには笑われて、お父様だったは私に怒る。そんな見窄らしい姿で来るなと。


 それなら、仕事を怠っている侍女を注意してくれれば良いのにお父様だった人はそんな事はしない。むしろ分かっていて私を怒っている。


 その後は無理やり侍女にお世話をされ、髪を梳かすのも力強くするから痛いし、服も私には全然似合わない物を着せて来る。


 もうここにはセシリアを虐げる者たちしか居ない。


 すると、セシリアの側で禍々しい雰囲気を感じる。


『あの女……』


『我のセシリーに……』


 お母様とお父様はカンカンに怒っていた。お顔がものすごーく怖い……。


(おかあさま、おとうさま……)


 セシリアに呼びかけられてハッとする2人。セシリアの方に顔を向ける時はにこやかに笑った。


『セシリー、大丈夫よ。これからはお母様と精霊さんがセシリーの準備をするからね』


『ああ、心配することは無いぞ! どれ、すこーしお仕置きをするかな……』


 お母様とお父様がそう言うとふわりと風が吹いた。部屋の中なのに風が吹いた。


 その事に少し驚いていると、その風が私のことも包み込む。ふわふわと風に包まれていると髪は綺麗にハーフアップにされていて、魔法の様に服も可愛らしい服に変わっていた。


「わあ! かわいいおようふく!」


 こんなに可愛らしい服は一年ぶりだ。可愛らしい服は全てキャシーに取られてしまった。


『セシリー、気に入ったかしら?』


「うん! おかあさま!」


『それは良かったわ♪』


「あっ……、でも……」


『どうしたの、セシリー?』


 可愛らしい服を着れたことは嬉しい。でもこんな服を着てキャシーに会ったら取られてしまう。せっかくお母様が用意してくれた物なのに……。


「このおようふくをきて、キャシーにあったら、せっかくおかあさまがよういしてくれたのに、また、とられちゃう……」


『ふふっ、そのことについては心配しなくても大丈夫よ、セシリー。それにそのお洋服はセシリーの元でしか価値が無いわ』


「??」


『とりあえず、取られても大丈夫。また、お母様が新しいお洋服を用意するわ』


『お父様もセシリーにお洋服を用意するぞ!』


「……うん!」


『それじゃあ、その姿であの人達に会いに行きましょう。きっと驚くわよ!』


 ふふふとお母様は不敵に笑った。



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