神神の微笑。はっぴゃくまんの神の頂点に君臨したら。この世界から出て行ってくださいと言われました!

八五三(はちごさん)

終章

第零話

 美しい少女が、一軒、一軒、見える家の灯りをじーっと微動だにしない瞳に映しながら思い悩む姿と違い、少女の艶々つやつやとした美しい髪は瞳と対照的に激しく風になびく。

 建物の屋上に設置されている鉄製の転落防止の柵に腰をかけながら少女は空中に向かって、ぶらぶらと足で空気をかき混ぜて遊んでいた。

 次に少女の瞳に映し出されたのは、西洋式庭園である。

 花壇には、綺麗に咲いた花たちが、アスファルト舗装された道を包み込みながら、ここに来る新しい者達を歓迎していた。

 その西洋式庭園を最高に演出している舞台装置が少女の頭上に存在した。

 宇宙そらから夜の地球に明かりを照らしている月である。それも、まんまる、お月様、満月だ。

 

 少女は、不意に頭上を見上げると、ゆっりと手を伸ばす。絶対に掴めるはずのない、満月を掴もうとした……。

 

 そのとき!

 

 少女の身体が大きく揺れる。


 次の瞬間、少女の見ている景色がスローモーションで動き出す。

 そして、少女が目で捉えているのは、自分が腰をかけていた。鉄製の柵だった……。

 少女が落下しているその姿を見せつけるために、最高のスポットライトが少女に向けられ、そのスポットライトの光を浴び姿が窓ガラスに、くっきりと映し出されていた。


 そのまま、地球の重力に引っ張られ続けている少女の身体がコンクリートの壁に、黒い影が投影されると。

 また、少女の姿が窓ガラスに映り込むと……。


  ついさっきまで見ていた、一軒、一軒に灯された明かりが見えると。すぐにまた、自分が落下する姿がはっきりと映す窓ガラスに、映し出されると。

 少女は、ニコッと可愛らしい笑みをした。

 その表情から今、自分の身に起こっていることに対して、まったく物怖ものおじするどころか、落下していることを心の底から楽しんでいるみたいだった。

 すると、窓ガラス越しに『一年三組』というプレートが掲げられているのが、少女の目に飛び込むと。


「もう……、二階……、思ってたよりも時間が……」


 呟くと少女は急に地面に視線を向けた!




 何処どこからともなく。


「はぁー……。私がやって来たのに気づいたからといって、学校の屋上から飛び降りる人が……。間違いましたね、人ではない。あなたなら問題ないですものね」


 その言葉に。


「エーぇー、人なんですけど!」


 少女が校舎を背にしながら、ぴょんぴょんと効果音が聞こえてくる。ユニークな歩き方をしながら、その言葉を発言した人物に近づいて行く。


「高等学部の制服、お似合いですよ」


 近づいてくる少女に、褒め言葉を贈った。

 その言葉を受け取った少女は、左右の手を握り拳にし、腰に当てると。ぐいっと見せつけるように大きな胸を突き出した。


「……、……。ったく、ぺったりんこした胸が大きく膨らんだからって、調子に乗りやがって。だいだい私は……」とブツブツと小さな声で呟き始めた。


 

 ブツブツと小さな声で呟いている。胸、持論を心地よいBGMとして聞いていた少女が。急に、ふんっと鼻を鳴す。

 その瞬間に、ブツブツとBGMを担当していた人物が、ギョロリと目が動き少女を鋭くにらみつけ。


「転移じゃなくて、転生にすんぞ!」


 少女は両手を前に出せるだけ出しながら、ダメ、ダメ、と両手をめいいっぱい広げながら左右に振りながら。


「ごめんなさい! 転生じゃなくて、転移でお願いします!」


 少女から謝罪の言葉を聞くと。

 怒りに燃えていた瞳が鎮火され、瞳にうっすらと涙を浮かべながら。


「……、……。私の力では、あなたを転生させるどころか、逆に殺されてしまいます。あなたは強くなりすぎてしまった。この世界を壊せるほどに」

「しってる」


 涙が目尻に溜まり溢れそうにな瞳で自分を見つめいる人物に、少女はにっこりスマイルで答えると。


「準備が整いました」

「ありがとう。後のことは、よろしくね!」

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