後日談 ①
式の夜は、いろいろあって大変だった。
始終ヒトデさんのペースで迫られ、実は皇室の初夜は複数名に監視される中で行われるものだったと聞いてテンパった挙句にぼろっと前世の事までしゃべってしまい私の頭はてんやわんやの大騒ぎに。
まぁ、監視に関してはヒトデさんが廃止してくれていたので問題なく、ついでに私がやけにポイント保持していた理由もわかったが。ヒトデさん曰く、おそらく前世の事も加算されているのだろうと。私がこちらで生まれてから獲得するには多すぎるそれに、私自身覚えていないが、かなりの事があったのではないかと言われた。覚えていないのは、防衛ではないかとも。
じゃあまあ思い出さない方がいいのかなと忘れる事にして、さっさと仕事に出なければ。ヒトデさんは日が昇る前から起きて仕事に行ったのでいない。休んでいていいと言われたが、ただ飯ぐらいは嫌なのでさっさと抱えている仕事を終わらせようとだだっ広いベッドから起き上がりいつもの魔導士服に着替えて部屋を出ようとしたら、何故か部屋から出してもらえなかった。
何で着替えているんですか、とか侍女に言われた。無理しないで横になってください、とも言われた。ベッドに食事まで持ってこようとするし。
いやいや全然何も問題ないのですが。健康優良児ですがと思いつつ、絶対寝室から出さないぜ! っていう感じの侍女に諦めて寝室で出来る仕事をしていたら、ヒトデさんがやってきて大人しくしていてくれと言われた。
何故に。
疑問が顔に出ていたのか、ヒトデさんは人払いをして教えてくれたのだが。あー、そうか。なるほど。初夜の後ね。あぁなるほど。なるほどね。つまり、私は動けない方が昨夜はお楽しみでしたねという展開で仲良しこよしアピールが出来ると。そういうわけなのですね。なるほどなるほど。
くっそ恥ずかしいな!
私ステータス鍛えてきたからなぁ……かなり丈夫だし、体力あるしなぁ……
ちなみに元気に動き回っていたら、それはそれで不仲というよりもヒトデさんの沽券に関わるらしい。
なんか、すみません……無駄に元気ですみません……
恥ずかしいやら申し訳ないやらで謝っていたら、ヒトデさんは何故かニヤリと笑って手加減はいらないかと言って仕事に戻ってしまった。
……てかげん。
確か、ヒトデさんのステータスって、百超えてたような……私勝ってるのって幸運だけだったような……
すみませーん、体調悪いので私寝ますねー。
と仮病使おうとしたが、事情を察したらしい侍女さんには生暖かい目で見られいたたまれなかった。夜にならなければ不幸ルームには行けないし、行ったら怒られそうだし。私の愚痴のはけ口はどこに……
ハッ! そうだねこさん!
彼女ならば同じ魔導士。確か通信の魔法が使える筈だ。わにさんが前に教えてくれたから……ええっと、ねこさんはラファトリシアに戻ってるはずだから方角はだいたいこっちでしょ? でもって距離は……ええっと……
あーだこーだする事半日、やっとこさねこさんに通信が繋がった。
〝ねこさーん!〟
〝……サギ。あなたこれ、どうしたのよ〟
〝わにさんが教えてくれました。良かった、つながった!〟
〝これお互いに目印になる魔道具を用意しておいてやるのよ……よく繋げたわね……まぁサギだものね……〟
〝ねこさんねこさん〟
〝全然聞いてないし。で、何? どうしたの? 通信なんて〟
〝いたたまれません!〟
〝……なにが?〟
〝周りの目が生暖かいんです! 今朝からずっと!〟
〝……そりゃーあなた、ねぇ。昨夜を考えればそうなるんじゃない? 随分元気そうだけど〟
〝とても元気です。元気に仕事出ようとしたら侍女に全力で止められてヒトデさんに周りでどう思われているのか赤裸々に解説されて今に至ります。元気ですけど、瀕死です!〟
〝……あんたたちは〟
〝ねこさん、こういう時、どうすれば平常心でいられますかね? 顔だけはもう無にしてやり過ごしていますが……〟
〝初々しいわねぇ……いいんじゃない? ドキドキで〟
〝呆れないでください~~見捨てないで~~〟
〝いやあなたね……それは解決のしようがないと思うのだけれど……思う存分楽しんでとしか言えないわよ……〟
〝ね゛ござ~~ん゛〟
〝どうせそんなの数か月で当たり前に変わるわよ〟
〝……あたりまえ、に? これが、続く…ので?〟
〝それは続くでしょうよ。結構ヒトデ、あなたに執着していたし。囲い込むのに躍起だったのよ? もうちょっと気づいてあげてほしいぐらいよ。
あ、ごめんなさい。ちょっと他の通信が入ったわ。一度切るわよ〟
〝あ、はい〟
プツンという感覚があって、ねこさんとの通信が切れた。
しかしあたりまえ、って。
いつになったらそんな境地に入るので? っていうか、本当にそんな頻回に起きるの? ヒトデさん体力大丈夫? いや大丈夫だあの人。ステータスやべえ人だったわ。それが手加減って……
この時、私は生まれて初めて自分の体力を心配した。
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