第30話 名探偵ね!

 コックリ、コックリ……はっ!? また居眠りしてた!


 グルグルと聖水を極上品質に戻す。もう朝日が登ってる。


「そろそろ砦に行かないと」


「ハルカ、もうこっち大丈夫だ。帰って寝てくれ」


 ドンガさん凄いね……全く寝てないみたい。


 弟くんを背負ってフワフワと洞窟の出入り口にある砦に向かった。砦は出撃兵と冒険者の集合場所になっている。


「は〜い。魔法を唱えました。お勤め頑張って下さいね〜」


 フワフワ〜〜


「お姉ちゃん、大丈夫? 寝たら墜落するよ?」


「はっ!! それは危険……」


 今日は全部お休みにしよう。爆睡する日に決定。


「呪いの事は分かったの?」


「うん。魔法に似ているから。問題はどうやって犯人を特定するかね」


「モッチさんに相談してみたら? あの人の発想力は凄いからさ」


「うん、とりあえず寝よ」


 ウチに着いたらベットに直行してすぐ眠った。




「う〜ん……よく寝た。もう朝かな?」


 朝だと思って起きたら、まだ真っ昼間だよ。


 弟くんはちゃんと店を開けて働いているな……


 立派すぎるね……また寝ようかな……


 ぼ〜〜っとしていたらモッチさんが訪ねてきた。ビンに閉じ込めたヒルが気になってしょうがないみたい。


「本を全部読んだんですが、まず呪いを解読する必要がありますね。このヒルはたまに動物の血をあげれば、しばらく生きていると思います」


「呪いの解読ねぇ……どうやるの?」


 モッチさんからビンを受け取り、アルテミスの杖に魔力を注いで光魔法を唱えた。


 光がヒルを照らすと赤い小さな魔法が浮かび上がった。


「モッチさん、この魔法陣を正確に書き留めて下さい」


「え、ええ。分かったわ」


 モッチさんが何度も確認しながら魔法陣を紙に書いた。


「出来たわ」


 その紙を受け取って読み解いてみる……


「この辺りが呪いの種類。ここが対象者。ここがヒルの使役者ですね」


「ここに犯人が書かれているって事ね!」


 そうなんですがとても古い術式です。今の魔術とは違うみたいでそこまでしか分かりませんね」


 それからモッチさんと魔法陣の仕組みについて色々と話をした。


「この名前の部分……1文字だけ同じね。王妃の名前はサスティナ。犯人は最後に『ス』のがつく名前よ」


「そうですね……それだけではとても特定出来ませんね」


 そんな人幾らでも居そうだね。


「この呪術の欠点はヒルの移動範囲が狭いという事です」


 呪いの対象者にかなり接近しないといけない。術者にとってはかなり危険な術だ。


「ドワーフ族の中に犯人が居るとは思えないわ。王妃はとても温厚で皆に慕われているの」


 ドワーフ族ばかりの国で近寄ってヒルに襲わせるのは難しい。他国の人はすぐに分かってしまう。今は冒険者も多いけど王妃はかなり前に呪いを受けたみたいだった。


「王と王妃は周辺国に救援を求めに行っていたわ。襲われたのはその時ね」


「このヒル、今は血を吸って大きく成長していますが元は極小だったと思います。それなら蚊に刺された程度の痛みしかないはずです」


 恐ろしい術だけど極々至近距離に寄らないと使えない。


「お姉ちゃん、何か分かったかな?」


 弟くんに分かった事を教えた。


「ふ〜ん。『ス』が最後につく人ね。探してみるね」


 弟くんはそう言ってお店に行ってしまった。

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