第16話 やらかし案件ね!

 ついに戦いの日が来た。


 魔女の服を纏って戦闘の準備を整える。


 やってやる! 


 窮地に追い込まれドワーフ族を救うよ!


「で、何でシュンも居るのかな?」


 弟くんが腰に小さな袋をぶら下げて後ろを歩いている。


「ドンガさんが1人でここに居たら危ないから着いて行けってさ」


 ジトッ……怪しい。本当かな? 確かめたいけど待ち合わせ時間だし、ドンガさんが何処に居るのか分からないし。


 洞窟に入ると門の前でソウガとプラムが武装を整えて待っていた。2人共、片手斧と小さな盾装備している。鎧は簡素なハーフプレートアーマーだ。頭には丸い兜を付けている。


「新兵部隊揃ったな。今日が初陣だ。落ち着いて大人達の言う通りに行動する事!!」


「「「 了解です 」」」


 ソウガがいつもとは全く違って見える。重たそうな門が開いていく。


「ね? お姉ちゃん、みんな何も言わないでしょ?」


「本当だったみたいね。先に相談してよね」


「仕返しだよ。お姉ちゃんだって相談しないで参戦するのを決めたでしょ」


 洞窟を奥へと進むと分岐路があった。


「ここを曲がるとオラ達の家がある。今日は真っ直ぐだ」


 真っ直ぐ進むと厳重に警備された門があった。


「ソウガ隊、出撃します!」


「はい! ご武運を!!」


 門番達が胸に手を当てて私達を送り出してくれた。門が開くと外の景色が見えた。


 木の柵で洞窟の出入り口付近をしっかりと囲んでいる。ここが最終防衛の砦みたいね。


 ズラリとドワーフ族の戦士達が整列していた。私達もその列に並ぶ。


 全部で100人位かな……かなり少ない。


「これよりナナンゴ村奪還作戦を開始する! 全軍進め!」


 ドンガ王が先頭で進んでいるみたい。戦士達も進み始めた。私達もそれに着いていく。


「すぐにナナンゴ村だ。ゴブリンはドンドン増えているらしい。オラ達の村はもう無茶苦茶だってさ……」


 ゴブリンが村を占拠したのね! 


 ゴブリンは緑色の肌をした人型の凶悪なモンスターだ。背は人より低い個体が多い。知性は低いけど武器を使う個体もいるし、上位種は魔法を使う事もある。


 狡猾なモンスターだから油断は出来ない!


 ナナンゴ村に到着した。ゴブリン達が馬鹿騒ぎしているのが聞こえてくる。


 ドワーフ達はドンガ王を先頭に山型の突撃陣形を組み始めた。いよいよね!


 スッと隠蔽の杖からアルテミスの杖に持ち替えた。


「支援魔法を唱えます! 拡大魔法陣展開!!」


 地面にオレンジ色の大魔法陣を展開する。全てのドワーフ達が魔法陣の上に立っている。いけそうね!


 集中して連続で魔法を唱えていく。無詠唱だけどね!


 力、体力、素早さ、器用さ、知力、魔力、精神力、運、攻撃力、防御力、命中率、回避率、魔法攻撃力、魔法防御力。


 こんなもんかな?


「はいどうぞ!」


「「「 ………… !! 」」」


 どうしたんだろう? 戦わないのかな?


「お姉ちゃん……やりすぎだよ……」


 弟くんがブツブツと呟いているね。


「い、いくぞ! 突撃!!!」


 おかしな間があったけどナナンゴ村へドワーフ達が突撃して行く。


「ソウガ隊! 遅れるな! 着いてこい!」


 村から激しい戦闘の音が聞こえてくる。


「なんじゃこりゃ〜〜!!」


「俺っち最強〜〜!!」


「ゴブリンがゴミのようだ!!」


 ソウガ隊も村の中に入った。ドワーフ達の数よりゴブリンの数の方が圧倒的に多い!


「来るぞ!!」


 ソウガの前にゴブリンが飛び出して来た!


 敵対するモンスター達に対して遅延魔法を唱えた!


 飛び掛かって来たゴブリンがスローモーションになる!


 ん? 迎撃態勢のソウガまでゴブリンが全然来ない……


 遅い! ちょ、ちょっと遅すぎないかな?


 周りを見たらゴブリンはみんな遅くなっている。遅いと言うか動けていないレベルで遅い。止まっているみたいね!


 暇なのでゴブリン達に防御力ダウンの魔法を唱えた!


「だから、お姉ちゃんやりすぎだって……」


 後ろで弟くんがブツブツ言っているけどこれは戦いなの!


 やりすぎる位で丁度いいの! 多分……


「ヤァ!!」


 ソウガの片手斧がゴブリンの体を捉えた! 


 ドン!!


 ゴブリンが遥か彼方へ飛んでいく……


「へっ!? な、何だコレ!!」


「ソ、ソウガ! チャンスよ! しっかり!」


 副長のプラムが呆然としているソウガに声を掛け、ゴブリン達を次々と豪快に吹っ飛ばしていく!


「プラムって小さいけど強いのね!」


 ゴブリン達は全滅した。


「全軍砦へ退却!!」


 ドンガ王の大きな声が聞こえてきた。


「へっ? 勝ったのに退却しちゃうの?」


「ゴブリンは村の外にも沢山居るんじゃないかな? 数を減らすのが目的みたいだね」


「ハルカ! 退却命令だぞ!」


 ソウガが声を掛けてきた。


「う、うん!」


 砦に戻ったけど何故かみんなが私をジト目で見てくる。


 どうもやらかしたかな? こういう時はニコニコ笑う!


「えっと……怪我した人居たら治療しますよ〜〜?」


 テヘッ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る