23. 僕のほしいもの

主様の偉大さを再確認してから一週間たった。


「さて、どうしようかな。」


僕は困っている。何に困っているかというと、イベントについてだ。


 いつもの通り通知をOFFにしていたのでイベントの告知に気付かず今日が準備期間の最終日というのも少し困っている。


 今回のイベントは、生産系のイベントらしく作成物ならなんでもOKという懐の広いイベントらしい。武器や防具、アクセサリー、アイテムはもちろんのこと、彫刻や絵画などの美術品もエントリーできるらしい。


 出品物のエントリーは、インベントリからできるみたいで自分が作った物がある場合に出品するかどうかのタグが出る使用になっている。出品した物は【現都市リアル・シェル】の特設会場に展示されるらしい。一人三点まで個人のブースで展示されるそうだ。そこでプレイヤーの投票により優劣を競う、ある種の展示会や博覧会みたいな感じのイベントだ。


「リアル・シェルに行けないし、出品だけするしかないかな。」


 そう、僕はリアル・シェルに行けないのだ。プレイヤーのLVを10まで上げると各主要都市にあるゲートが使えるようになるらしい、基本は行ったことのある場所にしかいけないらしいが同行者がいるとある程度は可能になるみたいだ。僕のLVは1、そしてここはアイランドタートル、ゲートなんてあるはずがない。


 素材のレア度が高いからごり押しもできそうだけど、『プレイヤーの投票』この評価方法が厄介だ。


 性能はそうでなくても見映えだけで優劣がついてしまうこともあり得るので、見た目と性能、両方揃ってないと厳しいかな。


 面白いというか危険なアイテムはいっぱい作れたんだけど、


【破砕のパインボム】 ★10

破裂すると周囲の装備を無差別に一定時間のあいだ破壊状態にする。スキルや特殊な効果による防御は出来ない。破壊状態の装備は変更、修理することができない。別名 破廉恥ボムとも呼ばれる。


【∞バナナスリップ】  ★10

投げて地面に落ちると、周囲に【魅惑のバナナスリップ】をおびただしい数ばらまく。


追跡者ストーカーココナッツ】 ★10

相手に向かって投げると必ず当たる。スキルによる防御、回避は出来ない。STRの値により威力、スピードが増加する。VITによるダメージの減少が出来ない。


見事に果物しかないが、性能は驚異的、というか危険だ。


そして、たまたまできたのがこれだ。


【完熟ベイビーキングバナナ】 ★12

シュガースポットがほどよく広がり、より美味しくなったベイビーキングバナナ。オリジンモンスター【マジカルモンキー】がどこからともなくやってくる。


 召還アイテムができてしまった。まぁ、インベントリから出した瞬間に奪われるんだけどね。常に一匹以上のお猿が一緒にいるから召還とかする必要もないしね。



.......悩んでもしょうがないか、完熟バナナ以外の3つを出品しよう。結果は、一週間後のイベント最終日に発表されるそうだ。



「よし、とりあえずはこれで大丈夫かな?さて今日も、修行を頑張ろう。」


 生命力関係のスキルを習得したこともあり、ゴリラな師匠からは、「まずは、自分で使って慣れてみろ。」と自主的な修行を行うようにいわれている。生命力を使いこなすには、ひたすら練習してスキルLVを上げていくしかないというのが僕の結論だ。


生命波動  生命力を体に纏い攻撃や防御等に転用できる。LVにより転用できる種類、威力等が上昇する。使用時に毎秒SPを3消費する。

LV×HP200.SP100.STR20.VIT20の増加


生命闘技  生命力を武器の形に形成できる。形成した武器のスキルを使用できる。武器を形成する際に任意のSPを消費する、消費したSP1につきSTR.DEX.SPD+1の武器となる。LVにより変換効率が上昇する。また、武器を芯として纏わせることも可能。※特殊なスキルの為LV上昇による武器の使用アシストは適用されないのでご注意ください。

LV×HP100.SP200.STR10.DEX10.SPD10の増加


生命の力  自らの命を燃やし力に変えることができる。任意のHPを使用し全てのステータスを上昇させる。HP1%消費につきステータスが1%上昇する。LVにより変換効率が上昇する。LV×1分の持続が可能、任意の解除もできる。発動中は消費したHPの回復が出来ない。

LV×HP200.SP50.ALL10の増加


 はっきり言って、序盤で手にいれていいスキルじゃないはずだ。凄く使い勝手もいいし、魔法との併用ももちろんできる。問題は【生命波動】の説明がいまいち不親切なことくらいかな。師匠の気配が無い理由も【生命波動】で周りの生命力と同化しているのは、なんとなく理解できたがまだLVが低いせいか同化までは出来ないので、スキルを発動した状態でお猿達と遊びながら修行中というわけだ。



「キャー、キャー、キャー」


「ダメだよ、完熟バナナは数が少ないからちゃんと作れるようになるまで待ってね。」


「キー」


「拗ねてもダメだよ。サンプルがなくなったらもう二度と作れないかもしれないからね。」


 偶然できた完熟バナナをあげてからお猿達のおねだりがひどい。最近では断ると、拗ねたり落ち込んだりするようになってきた。見た目が可愛いだけに罪悪感がとてつもないのだ。遊んでいたら(修行?)必ずおねだりされる。

 

「作れるようになったら、いくらでも作って上げるから。今日はとりあえずこれで我慢しようね。」


 幼い子供をあやすように優しく言葉をかけ、他のもので気を反らす事にして取り出したのが、飴玉だ。圧縮エキスと生命の大樹の糖度の高い樹液を使って作った特製品だ。それを大量に取り出した。色々な味があるのでカラフルで見た目も楽しい。


「「「「「キャーーーー」」」」」


よしよし、とりあえずは気を反らせたけど、たぶんすぐに飽きるだろうし....調理道具と、調味料とか小麦粉などの食材がほしい。


 ダメもとで参加したイベントだけど、特別賞の商品が【運営への要望】といった漠然としたものだったが、僕にはこれが一番欲しいものだった。


 各ギルドには、取引板と呼ばれる物があるらしい。余ったものや採取物等がプレイヤー間で売り買いされているらしい。拓人から情報収集をし、モカさんで確認を取ったので間違い無いと思う。


 出来れば【運営への要望】で取引板をログハウスに設置してアイランドタートルで手に入らない物がほしい、そして、マスタークラフトのスキルを育てるためにも工房の設備を充実させたいのだ。


「まあ、希望は薄いけど一週間後を楽しみにしていようかな。」




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【現都市リアル・シェル】

有名なブランド店や一流の料理店からファーストフードのチェーン店等、現実世界の商店がマーケティングや宣伝を目的として出展している。町並みは現実世界のショピングモールを巨大にした感じで、ゲートからのみ移動が可能。





 


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