第6話 体術スキルの正体…

 昨日はなかなか眠ることができなかった。睡眠不足だが、心は軽やかだ。


「行くぞー、レイン!」


 俺は、レインとマリーを連れて街に出た。まずは、レインの洋服を買いに行った。マリーに選んでもらった服を買ってあげると、楽しそうにスキップしながら歩いていく。


「良かったね、レインちゃん」


 喜ぶレインを見て、マリーもすごく嬉しそうにしていた。


 洋服を買った後も、屋台をまわってご飯を食べたり公園で花を見たりしてあっという間に一日が過ぎた。


「マリーさんがお母さんになったら、私、すごく嬉しいな!」


 宿に帰っている途中、レインがおねだりするような目で言ってきた。


 俺の頭は不覚にもマリーとの家庭を想像してしまった。だめだ。そんなことはあり得ないのだから。


「そうだね、私も楽しいと思う!」


 マリーは俺と目が合うと、下を向いてそう返した。

 …これはどういう意味なんだ?まぁ、深い意味はないだろうな。

 

 二人ともすごく楽しそうだったし、今日はこの世界に来てからの一番の思い出となった。


 

 ルイスからは二日後に新しいパーティー、「リザルト」として初めての依頼を受けたと伝えられている。

 パパとして、レインにもっと良い暮らしをさせてやりたい。俺は、これからのことを考え、一層気を引き締めた。




ーー「リザルト」として初陣の日が来た。


「今回の依頼はこれだ」

 リーダーであるルイスは依頼書を見せてきた。




 依頼コード1032ーークルタ洞窟の魔物ーー


ーークルタ洞窟に住む魔物、コバルトウルフの爪を収集せよーー


 報酬ーー金貨一枚ーー




 金貨一枚の依頼か。今回は危険が伴いそうだな。


 ーー今回の作戦はこれだ。


 マリーは武器屋で買った短剣を持って入るが、職業はヒールというスキルを持った回復魔法士である。

 戦いには後方支援として参加する。


 ルイスは剣士であり、スキルは長剣術である。コバルトウルフは鋼鉄の毛並みを持っているため、少し相性が悪いが敵の注意を引きつける役回りを行う。


 俺は威圧スキルで相手の動きを止めることと、ルイスが敵を引きつけている間に直接攻撃をする。

 俺の役割が非常に重要であるため、少し緊張する。


 作戦を確認し、俺たちは目的地の洞窟へ向かった。

 クルタ洞窟は森の奥にあるそうだ。森では予想外の魔物が出てくることもあると、ルイスに言われていたため常に気を張って足を進めた。


 しばらく歩いた後先頭を歩くルイスが足を止めた先には洞窟らしきものがあるが、倒れた大きな木に塞がれている。


「この前の台風で倒れたのか…」

 

 ルイスは深刻な顔でつぶやいた。この大木はルイスの長刀術でも切ることは厳しいようだ。


「お前、体術のスキルを持っていたよな?この木を破壊出来ないのか?」


 多少力には自信があったが、流石にこれは無理だろ…そう思いながら、俺は大木を殴ってみた。


 ドカーン…

 あれ?


「やるじゃねーかよ!」

 ルイスが俺の背中をドンドンと叩く横で、マリーはポカーンと口を開けている。


 この前はこんな力なかったはずなのに…どうして?

 俺が不思議そうな顔をしているとルイスが驚いた顔で俺に聞いてきた。


「お前、自分のスキルのこと知らないのか?体術スキルはモンスターを倒すことで、ランダムにパワーや走力、防御力が上がることがあるんだよ」


 なるほど、そういうスキルなのか。異世界すげーな…


 俺たちは暗闇で終わりの見えない洞窟の中へと入っていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る