第13話 遊園地デートイベント
そんなわけで、結局家族四人で休日の遊園地に来たわけである。
「おお、ずいぶん賑わってるな。めっちゃ綺麗になってるし」
入場後、まったく見覚えがないほど綺麗にリニューアルされた園内に驚く俺。もっと小さかったときの記憶とは完全に別の場所になっている。休日ということで人も多いが、これくらい賑わっている方が遊園地感はあるよな。
「いくつになっても、遊園地はワクワクしますね~♪ 家族四人で来るのは初めてですし、美空家のラブラブ遊園地デートです~♪」
まひるさんが手を合わせて嬉しそうに声を上げる。これをデートと表現するあたりまひるさんらしいなって思う。
そんなまひるさんは白いワンピースにカーディガンを羽織る清楚な装いで、やっぱりお嬢様な
いやホント、こうして見ると改めてめちゃくちゃ綺麗な人だなってわかる。やはり親父にはもったいない人だ。つーかどうやって結婚までこぎ着けたんだよ。その時点でアニメより奇だよな。
「遊園地……ひさしぶり……。にいさんとは、初めて、だから……嬉しい……♪」
俺と手を繋ぐ夜雨は、フリルがついた女の子らしいピンク色のニットの上着にロングスカート、肩には小さめのポシェット。頭にはキュートな
「なになに弟くん。さっきからあたしたちをジロジロ見てさぁ。ひょっとして見惚れてる~? 弟くんにそんな目で見られると、お姉ちゃん困っちゃうなぁ~?」
ニマニマした目で胸元を隠しながら俺の方を見る夕姉。
長い金髪は一つに結んでいて、胸元のちょっぴり空いたブラウスに、下はスラッとした脚がよく見えるデニム地の短パン。オシャレなウェッジソールサンダルとかいうのも似合ってる。
なんつーか、格好良さと可愛らしさが同居しているような見事なモデルの出で立ちだった。脚長ぇ……。つか出し過ぎじゃないのかそれ。
「べ、別にジロジロは見てないだろ。まぁ、まひるさんはやっぱり綺麗だし、夜雨はめちゃくちゃ可愛いなとは思ってたけど」
「やった~朝陽ちゃんありがとう~♪」
「に、にいさん……えへへ……♪」
二人が左右から俺の腕を掴んでニコニコになる。それを見て夕姉が「んもー!」と声を上げた。
「二人にだけ素直でずるくなーい!? お姉ちゃんは? ねぇねぇお姉ちゃんは~っ!? 結構気合い入れてコーデしたんだけど! もっとジロジロエッチな目で見てもいいから褒め称えてよー!」
「見てほしいのか見てほしくないのかどっちなん!?」
「そのどちらも内在しているのが乙女心ってもんでしょうが~! 今までラブコメ作品で学んできただろー!」
「無茶言うな! ハイハイキレーですよ! 園内で一番の美人です! さすがプロのモデルだね!」
「はいブブー! 雑なので親愛度変化なーし!」
両手で×を作った夕姉は、なんとも不服そうな目を俺に向けながら腰に手を当てて大きなため息をつく。
「弟くんさぁ、そんなんでよく人生の主人公やれてるよね。もっとヒロインに愛されようと思わないワケ? 『お姉ちゃんキレイだよ~カワイイよ~ケッコンした~いブヒヒ~♥』くらい言えないの~?」
「言えたら気持ち悪くない!? てか俺の人生のヒロイン夕姉なのかよ!」
「はいはーい♪ ママも朝陽ちゃんのヒロインになりたいで~す♪」
「えっまひるさん!?」
「あ…………や、夜雨もっ……」
「おお夜雨まで……! ありがとな、お兄ちゃん嬉しいぞ!」
俺にくっついたまま楽しそうな空気を作ってくれる二人。その気遣いに感謝だな。しかし夕姉はぷくーとふくれ顔である。ったく仕方ねぇな。
「ヒロインとかはともかく、夕姉もちゃんと似合ってるって」
「へっ?」
「さっきのは確かにまぁ雑だったけど、別にその、う、嘘ではないしな。てかもう行こうぜ! 昼になると混んでくるだろ」
気恥ずかしくなって歩き出そうとする俺。
呆然としていた夕姉は目をパチパチさせて、それから急にパァッと表情を明るくして俺にくっついてきた。
「うわっ! ちょ、なんだよ!」
「やればできるじゃーん! へへっ、それじゃあ美空家のみなさん! 今日は家族でめいっぱい楽しむぞー! おー!」
「「おー!」」
「お、おー」
テンション爆上げした夕姉の掛け声にまひるさんと夜雨が応え、俺も恥ずかしながら続く。そうして家族四人くっつきながら歩き出した。おいおい他にこんな仲良し家族いないだろ目立ってるじゃん!
「弟くんっ」
「ん?」
夕姉が俺の耳元でささやく。
「親愛度、1くらいは上げといたげる♥」
少しドキリとした俺は、「……お、おう」と適当な返事をしておく。夕姉は「にへへ」と笑った。
ともかくこうして、美空家四人での初めての遊園地イベントが始まったのだ。
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