第一章 同人家族爆誕
第1話 リアルはアニメより奇なり
両親が“アニメの価値観の違い”とかいう信じられん理由で離婚した。
そんな衝撃事実を知ったのは、クラスごと異世界転移して特殊能力を得るとしたら俺はどんなものになるだろうとかそんなワクワク中二病を煩っていたリアル中学二年生の頃だ。
俺こと『
――そんな生活が半年続いた頃。
遅めの夕食時に親父が作った新作アニメを観ている中、親父がこんなことを言い出した。
「朝陽。父さん再婚するから、明日から新しい家に行くぞ。そんで名字も『
「は?」
「お前もそろそろ進学を考える時期だ。そのためにも、早めに引っ越して環境を整えた方がいい。向こうには連れ子の姉妹がいるが、朝陽なら上手くやれるだろう。めちゃ可愛い子たちだぞ。ラブコメアニメの主人公になったとでも思っておけ」
「は?」
「昔、母さんがこんな設定の少女漫画好きだったよな。まさか父さんがリアルにそんな状況になるとはなぁ。そうそう、このアニメも次の話でこいつが義理の姉妹に告白されるんだよ。朝陽も似たような状況になったりしてな。はっはっは!」
なに笑とんねん。
なに監督が次週のネタバレしとんねん。
待て待て待て!
「いやいや待てよ親父! は? 再婚? 新しい家!? 苗字が変わる!? なんだよいきなり知らんぞそんなの!」
「リアルはアニメより奇なり。アニメもリアルに負けないようなものを作らんとなぁ。はっはっは! お、そろそろ入浴シーン来るぞ。ここ花見さんの作画超絶気合い入ってるから見とけ。パンツの皺まですごいぞ。お前ファンだったろ」
「マジか花見さんなら見ないと――って違うわ! おいこら親父! 話聞け! そもそもどんな相手だよ!? 姉妹!? 聞いてねーよそんなの! おいアホ親父! 自分で作ったアニメのヒロインが下着姿になるとこ凝視すなって! おいってぇ!」
――そうして明朝の日曜日。
俺はちょっとした荷物を手に、アホ親父と“新しい家”へ向かった。
親父と住んでいた家から電車でわずか二駅。都内の一等地で、立派な門構えの豪邸と呼んでも差し支えないすげぇ家だった。庭には綺麗な花がたくさん咲いている。
そこで俺を待っていたのは、三人の女性だった。
「あなたが朝陽ちゃんですね~。ようこそ美空家へ♪ 私は『美空まひる』です。今日からは、本当のママだと思っていっぱい仲良くしてくださいね~♪」
おっとりとした優しい雰囲気のものすごく綺麗なこの銀髪の女性が父さんの再婚相手。つまり俺の義理の母親だ。えっ外国の人? 信じられない。
「へぇー思ったよりカワイイ顔してた! んふっ、あたしは『美空
初対面でもグイグイ迫ってくるこのスーパーモデルみたいなイケイケ金髪美少女は、一つ年上の義理の姉のようだ。顔小さっ。信じられない。
「…………あの。『
母親の後ろに隠れながらおそらくは挨拶をしてくれた大人しそうな銀髪の子が、二つ年下の義理の妹になるらしい。前髪で目元を隠している。可愛い。信じられない。
「あ……ども。朝陽です。よろしく、お願いします……」
俺はまとめて挨拶を返しつつも呆然としていた。
――こんなんマジでラブコメ主人公じゃん。
小さい頃、母さんが持っていた少女漫画で確かにこんな設定の話を見たことがあるが、いざ自分の身に起こると現実味がない。この人たちが今日から俺の新しい家族? これからはこの人たちと一緒に暮らしていくのか? 俺が? どうやって? はぁ~~~?
親父が俺の肩をがっと掴み、左手で親指を立てる。
「朝陽。お前が主人公としてこの家族をハッピーエンドに導いてくれ。俺の息子ならフラグ回収くらい簡単だろ? 選択肢が見えたりしてな。はっはっは」
「なに笑ってんだアホ親父! なにがフラグだ! マジでいきなりどうしろってんだよ!」
「ラブコメアニメの主人公ならこんくらいすぐ馴染めるから大丈夫だろ。なぁまひるさん?」
「そうですね~大地さん♪ 朝陽ちゃんとなら、すぐ仲良くなれると思います~♪ ね~夕ちゃん?」
「ラブコメだったらあたしってヒロインになっちゃうの? んやぁーちょっと照れちゃう。でもあたし攻略するの難しいからね~? ま、けどよるちゃんよりはカンタンかな?」
「……夜雨は、モブキャラ、です…………」
「というわけだ朝陽。まひるさんも夕ちゃんも夜雨ちゃんもアニメ好きだし趣味は合うから安心しとけ。さぁ、二人きりの天堂家は今日から五人の美空家としてやっていくぞ。いざゆかん、ラブコメアニメを超えた新世界へ! はっはっはっは!」
「うるせぇアホ親父~~~~~~!」
そんなこんなで、マジでラブコメアニメみたいな展開で俺に新しい家族が出来た。
義理の母親と、義理の姉と、義理の妹。しかもとんでもない美女揃い。
これからどうなってしまうのかという不安と、ちょっとした期待。上手くやっていける自信などまったくなかったが、それでも俺はどこかでドキドキとした高揚を抱えていた。
こうなった以上、とにかく家族として上手くやっていくしかない! 電話をくれる母さんにあれこれと相談したりしながら、俺はなんとか『美空家』での生活に慣れていった。いやホントに! めちゃくちゃ頑張ったと思うわ!
そしてようやく受験シーズンを乗り越えた中学三年生の冬。
親父は、再び“アニメの価値観の違い”とかいう理由で離婚をした。
リアルはアニメより奇なり。
その通りだよふざけんなと俺は強く思った。いやマジでふざけんなよおおおお!
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