第23話
「――――して話とは公爵」
最初に口を開いたのは俺だった。
何故なら時間は無限ではなく有限だからだ。
話の内容がキャシーならばきっと短くはない話だろうし……と思っていた。
「内容を察して頂き光栄ですよ殿下。陛下ならば先ずはあり得ませんからな。次代の国王の御代は期待が出来そうです」
何気なく父である国王を無能呼ばわりする公爵も公爵だが、それを咎めず静かに頷く俺も俺……だな。
「さて、話の内容を察して頂いたようなのでお互い腹を割ってお話致しましょう殿下」
「ああ」
そうして俺達は濃縮で短い密談を行ったのである。
その内容とは――――。
公爵自身キャシーを異性として見る事は出来ない。
ただし生まれが王女なのでそれなりに公爵夫人としては遇すると。
また一切お互いの私的な趣味や嗜好、愛人等についても干渉はしない。
その中に敷地内にある公爵の趣味目的で建てた別邸には一切立ち入らないし口も出してはいけない。
だがその代わり次代の公爵家となる者は公爵夫人であるキャシーの産んだ者とする事。
「し、しかし公爵はそのっっ」
これは同性であっても
「ご存じの通り私は成熟未成熟関係なく男としては不能なのです。ですから妻となるキャサリン王女の産みし子が次代の公爵となればよいと思っております。何と申しましても王女は王家の娘なのです。我が公爵家にまた新たなる王家の、いえ王族そのものより濃い血が入る事となるでしょうなぁ殿下」
「それはどういう……」
確かにキャシーは王女だ。
確かに王族の血が公爵家へ流れる――――までは理解が出来るのだが何故そこでより濃い血と強調されるのだろうか。
「ふふ、我が家には王家同様に影がおりましてな。ええ実に優秀な影なのです。特に貴方と王女の関係もよく理解しておりますよ」
「――――っっ⁉」
「まあまあその様に警戒されずともいいですよ。私には特段気にするものではないですしね。まあ妻となる王女が執着している相手が実の兄である貴方であり、貴方はご自身の愛する婚約者を護る為に妹君に身体の関係を強いられていると言う事実も今の私には全く以って関心はありません。何れ王女が生むだろう子は間違いなくこの世で最も王家の濃い血を受け継ぎし者。その事実だけで十分なのですよ」
「わ、俺は何があろうとキャシーとの間に子を儲ける
つい我を忘れて立ち上がれば声を大にして叫んでしまっていた。
常に冷静沈着であらねばならない王族として致命的な感情を吐き出してしまったがもう遅い。
そう一度吐き出したものは二度と回収出来はしないのだ。
「ふふ、殿下はまだお若い。しかしですよ殿下、貴方の性格ではあの狂女には恐らく打ち勝つ事は出来ないでしょう」
一瞬狂女とは誰の事なのかと俺は心の中でふと考えてみる。
すると公爵は声をあげて笑いながらその答えを教えてくれたのだ。
「狂女とは貴女の双子の妹君であられるキャサリン王女の事ですよ殿下」
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