【義妹SIDE】流行病は簡単には治らない病でした

「残念ながらお母様の病には私には手に負えないものです」


 医者の男にディアンナはそう告げてきます。


「う、嘘よ! なんでそんなことがあるんですか! 母も私も悪いことは何ひとつしてないんですよ!」


 ディアンナはそう主張する。アイリスにしてきた数々の所業は知らんぷりだ。


「残念ですが私にはどうしようもありません。ほかの医者や薬師を当たっても同じことを言うと思いますよ」


「う、嘘! そ、そんな! そんなことって! うううっ!」


 ディアンナは母に泣き崩れた。すべてが順調だと思っていたのに、なぜこんなことになったのか。ディアンナは頭を抱えるより他にない。


「ごほっ! ごほっ! げほっ! ディアンナ!」


「お母様! なぜ私達がこんな目に合わなければなのですか! なぜ!」


 母は咳込み、明らかに具合が悪そうです。このままだと長くないかもしれません。


「残念ですが、私には手にも終えそうもありません。このたびは失礼します」


 医者の男は去っていく。


 婚約者のロズワール及び父がやってくる。


「お父様! ロズワール様! お母様が大変なの!」


「そのようだな……その病に対する情報を集めよう」


「僕も陰ながら調べてみるよ」


「私も……」


 と、その時だった。


「うっ!」


 バタリ、ディアンナは倒れた。


「だ、大丈夫か!? ディアンナ!」


 ロズワールがディアンナを起こす。


「大丈夫ですわ。ロズワール様」


(おかしいわね……私こんなことで転ぶはずないのに)


 その時であった。ディアンナは肺のあたりに違和感を覚えた。


「けほっ! ごほっ! げほっ!」


 そして母と同じような咳をし始めたのである。


「ま、まさか!」


 何かの間違いだと思っていた。だが、母と同じ病魔は娘のディアンナにも襲いかかってきたのである。

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