第122話獣臭い

飲み物を作った私は、皆に飲み物を配ってから夕ご飯にすることにした。

 

「今回は三種類作って見たわ、それぞれ食べてみて感想をお願いね」


私が言うと皆が頷きながら「は~い」と返事をして食べ始めた。

 今回はソースは付けずに食べて貰って、肉の臭みや食べた感想を教えて貰いたいのよね。

 簡単なのはカレー粉を塗しただけのものだけど、さすがにカレー粉を塗しただけの肉だとあの獣臭は消えないわよね。

 

ラナちゃんが手を組み祈りの言葉を唱え始めた。


「光の神ヴェインスヴァイン様に感謝を」


「「「「「感謝を」」」」」


何時ものお祈りをした私達は、カツサンドを食べ始めた。

 パンにカツと葉野菜を挟んだだけの物だけど、中身が解るようにお皿だけは分けてある。

 皆は思い思いのカツサンドを食べ始めた。

 ラナちゃんとアトムくんは味を確かめるように真剣に、アントニーくんは豪快にかぶり付き他の子達も味わいながら食べていた。


「美味いじゃないか!獣臭さなんて全然感じないけどな?」


アベルは塩とお酒をもみ込んで血抜きをした、カツを食べながら感想を言い。

 それにつられるように、同じものを食べていたチェスターくんとエイミーちゃんが頷いて。


「そうですね、気を付けて食べていれば少し感じますけど、このぐらいなら気にならないと思います。

 それに肉が柔らかく感じます、これ本当にウルフの肉なんですよね?」


チェスターくんが注意深くカツを観察しながら、感想を言うとエイミーちゃんも。


「おいしいの、かたくないの」と感想を言ってくれた。


他の子達も皆好評で臭みも気にならないみたいだった。

 私も一口食べてみると、確かに獣臭さは残ってはいたけど、食べられないほどじゃなかった。

 この分なら問題ないわね。

 

私は皆が食べている光景を眺めていると、ラナちゃんが眉をしかめて悩んでいる顔が目に入った。


「ラナちゃん、どうしたの?」


私が質問すると、ラマちゃんは顔を上げ眉を下げすまなそうに。


「カレー粉を使った物を食べてみたのですけど、獣臭さとカレーの匂いが一緒になって来るので、正直に言うと余り美味しく思えなくて・・・」


ラナちゃんの言葉に私は、カレー粉を使ったカツサンドを手に取り、一口食べてみた。

 食べた瞬間口に広がるアンモニアの様な臭さと、カレーの匂いが一体になって、カレーの匂いでは消せなかった獣臭が鼻に抜けて飲み込むのも苦労してしまった。

 しかも肉も硬くて噛み切るのにも苦労して、私は一口食べてカツサンドを置いてしまった。


「う、すごい匂いだな・・・これ俺でも食べたくないや・・・」


同じく一口食べたアントニーくんが、お皿にカツサンドを置きながら呟いた。

 他の皆も一口食べて、カツサンドをお皿に戻していた。


「マリア、このカツサンドって、前に貰ったカレーを使った肉とは違うのか?」


アベルが不思議そうに聞いてきたので、私は前にウルフを狩った時作った、肉にカレー粉を塗した物を思い出しながら。


「あれは一度煮て臭みを取ってから、カレー粉を塗してあったから、今回みたいにこんなに臭く無かったんじゃないかしら?」


私が説明すると、アベルはまた首を傾げながら。


「なら今回もそうすればよかったんじゃないのか?」


アベルの的確な質問に、私は頷きながら。


「今回はカレー粉だけで、獣臭をどれだけ消せるか試してみたかったのよ。

 それにカレー粉だけで消せるなら、作業工程も減らせるから、料理をするラナちゃんの負担が大分抑えられるのよ」


私が説明すると、アベルは納得したように頷き「なるほど」と呟いて最後のカツサンドに手を付けた。

 最後に残ったカツサンドを皆で食べ始める。

 私も手に取り、一口食べてみた。

 これは獣臭さは感じないわね、確かに注意深く感じれば、匂いが無いわけじゃ無いのだけど。

 匂いは大分取れてるわ、でもパサつくし肉の旨味が無くて、カレー粉の物よりましだけど肉も硬いわね。


「うんこっちは臭みが感じませんね、でも肉が硬く感じます」


アトムくんがカツサンドを食べながら呟くと、マーナも頷きながら。


「この肉の感じ、カレー味じゃないけど前の肉に似てるね」


マーナの感想に私は頷き。


「下処理が同じですからね」と答えた。

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