第92話換金

ギルバートさんが上の階に帰った後、私達は一度集合してからレインさんの居るカウンターに向かった。

 

「それにしても凄かったな、本当にマリアがパーティー組んでくれてラッキーだったな」


「そうよね、あたしらなんてマリアがいてくれるお陰で稼ぎがすっごく増えたもん」


「俺は孤児院の皆まで面倒見てもらって感謝してもし足りないです」


3人はレインさんの所に行くまで私のことを褒めてくれていた。

 カウンターに付くとアベルが依頼書と討伐証明部位を渡して依頼終了の手続きをしてもらっていた。

 依頼の確認が済んだレインさんから報酬をもらったアベルは改めて話し始めた。


「レインさんすいません相談が有るのですが・・・」


アベルが切り出すとレインさんは笑顔で。


「構いませんよ、なんでしょう?」


レインさんの答えを聞いたアベルは、今日の出来事を話し始めた。


「実は今日倒したオークの中にどうもオークソルジャーと言う上位種が一緒にいたらしいのです」


アベルがオークソルジャーのことを話すとレインさんは真剣な顔になり。


「それは本当ですか?その死体を見せていただけますか?」


レインさんは真剣な顔で言ってくるので、私はオークソルジャーの死体をレインさんの見える位置の床に出し、レインさんに見えるようにした。

 買取カウンター前でもないのに、私がオークの死体を出したので、他の冒険者達は何事か遠巻きに野次馬をし始めた。

 私の出したオークソルジャーの死体を、虫眼鏡のようなもので見ていたレインさんは、頷いてから離し始めた。


「オークソルジャーの死体で間違いないですね、依頼料と買取金額を上乗せ致します」


レインさんがそう言ってくれたので皆喜んでいた。

 その後買取カウンターに移動しようとしたアベルに


「待ってください、まだブッシュメカックの事とワーラントの事も言っておいた方が良いと思います」


私の言葉にアベルは「あ!」と声を出して戻り、レインさんはまだ何かあるのかと真剣な顔で聞いていた。


「その言えばオーク以外にもブッシュメカックとワーラントにも遭遇したんです!しかもかなり街道に近い所で」


アベルが言うとレインさんは怖いほど真剣な表情になり、周りに居た冒険者達もざわざわと話し始めた。

 

「それは本当ですか?・・・いえ本当なんでしょう、だとすると北へ向かう小隊の護衛のランクを上げないといけません、それに北東の森にはしばらく、鉄等級以下の冒険者は入れないようにしないと、被害が出そうですね」


アベルの報告を聞いたレインさんは、これからのことを考えているのか額に手を当てて悩み始めた。

 少し待つとレインさんは顔を上げ。


「報告ありがとうございます、ブッシュメカックとワーラントはこちらで買い取りさせていただきます。

 もちろん依頼扱いに致しますので安心してください、依頼料はギルドマスターに相談して後日お支払いいたしますので、死体は買取カウンターにお願いいたします」


レインさんに報告した私達は、買取カウンターに向かうと、買取担当の筋肉質なおじさんが満面の笑みで待っていた。


「おう!オークソルジャーにブッシュメカックそれにワーラントまで有るんだって、えれー腕が立つじゃねーかその調子で稼げよ!」


大きな声でそう言うおじさんの前に私は買ってきた獲物を出そうとして一瞬止まった。

 せっかく飼ってきたから孤児院の皆に解体の仕方教えて上げたいな、アベルに聞いて一匹残せないかな?

 私は考えついたことをアベルに提案するために、アベルの居る方に振り返った。


「アベル一匹オーク貰っても良いかしら?孤児院の皆に解体を教えたいのよ」


私はアベルに提案するとアベルは笑顔で。


「いいぜ!どうせなら俺が教えてやるよ、報酬はマリアのご飯でいいぜ」


アベルが快く了承し得くれたので私はオークを1匹残すことにした。

 私はおじさんの前にオークとオークソルジャー、ブッシュメカックとワーラントをストレージから出していった。

 おじさんはそれを運びながら、手に持った紙に買取金額を記入していった。

 全部運び終えたおじさんは、私達に見えるように紙を見せ、買取金額を説明してくれた。


オーク 20,000ローン 4体=80,000ローン

ブッシュメカック 100,000ローン 10体=1,000,000ローン

オークソルジャー 100,000ローン

ブッシュメカックリーダー 500,000ローン

ワーラント 1,000,000ローン


合計 2,680,000ローン


買い取り金額を聞いて皆嬉しそうにしていた。

 1人当たり67万かしら?ワーラントはアトムくんの居ない時に倒したものだけど、分配しちゃっていいのかしら?

 私が考えながら質問すると、アベルとマーナは顔を見合わせて頷いてくれた。


「ああ、いいぜ、どうせマリアのアイテムボックスが無きゃ運べない量だし、保管もマリアに任せっぱなしだし、その手数料だと思えば安いもんだろ?」


アベルが言うとマーナも頷いていた。

 

その様子を見て目を白黒させながら、アトムくんが顔を朱に染めて「ありがとうございます・・・」と呟きながら頭を下げた。

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