第25話ゴブリン討伐

ボックスも納得したのか大人しくなったので、このまま会議はお開きになった。

 私から離れたローマンさんは、ギルバートさんに何か話しかけると、ギルバートさんが私の所に来て。


「君がローマンさんに交渉してくれたと言うではないか、感謝する」


ギルバートさんはそう言うと深く頭を下げた。

 あの場合は仕方ないよね、出しゃばったとは思っているのよ、でもお金出せる人がローマンさんしかいなかった。

 それにローマンさんだって商人、ただでお金出してくれるなんて、絶対ないでしょ。


「私にできる事をしたまでですので、お気に為さらず」


ギルバートさんはもう一度頭を下げ「ありがとう」と呟いた。


そんなギルバートさんに私は疑問に思ったことを聞いて見る事にした。


「お聞きしたいのですが、領主様は?」


私が質問すると、ギルバートさんは言い辛そうに。


「それは・・・今領主は王都に居てトラットにはいないんだ」


ギルバートさんの説明に私はまあ責任者居ないなら仕方ないのかしら?

 私はなにか釈然としない物を感じていると、ローマンさんがフン!と鼻を鳴らし。


「ギルバート殿、別に衛兵長が居るからってはぐらかさなくても良いのですぞ、領主の息子は呼んでも来なかったと」


ローマンさんは怒気を孕んだ声で言うと、ギルバートさんは困ったように深いため息を吐き。


「別に来なくてもいいではありませんか?来てもらっても困りますから」


ギルバートさんが呆れながらそう言うと、ローマンさんが。


「それもそうじゃの」と肯定した。


話を聞いていると代理人は要るけど来なかったと・・・要するに無能なのね。

 私が心中で結論を付けると会議室を出た。


1階に向かうと、まだ騒がしく動き回っているようだが、中にはパーティー単位で集まって、何か話し合いをしている様だった。

ギルバートさんはカウンターの前に立つと大声を張り上げ。


「これから我々は街道に溢れたゴブリンどもを殲滅に向かう。

 斥候の報告によると数は100、中にはホブが20ほど、ライダーが10ほど居るらしい、十分気を付けて当たってくれ!」


ギルバートさんの号令で冒険者達が移動を始めた。

 私も動こうとするとギルバートさんに。


「すまんが、戦闘前に皆に神聖魔法を掛けてやってくれないか」と頼まれた。


私は頷き「解りました、魔法はステータス増加と持続回復でよろしいですか?」と答えると。


ギルバートさんは驚きながら。


「リジェネレートまで使えるのか、こりゃ大分助かる」と頭を下げた。


私たちがギルドから南門へ向かう途中、町の人に「頑張れよ」と応援されながら歩く。

 南門に差し掛かった所で見知った顔が門の前に居た。


「へインさんこんにちは、へインさんもゴブリン討伐に駆り出されたんですか?」


私がへインさんにそう聞くとへインさんは笑顔で。


「そうなんだよ、まあ俺ら衛兵は拠点防衛だけどな」


へインさんの返答を聞いて、私はもしものためにとストレージからある物を出してへインさんに渡した。

 へインさんは不思議そうに、私が渡した赤い液体が入った瓶を、指に摘まんで振りながら見つめているので。


「それはもしもの時のお守りです」と言っておいた。


それを聞き不思議そうな顔をしながらも、へインさんは懐にしまいながら。


「いつもありがとう」と呟いた。


そんなへインさんに、もう一つサービスと飴玉を手渡した。

 へインさんは飴玉を受け取った時、吃驚して声をあげそうになりながら、手で口を塞いだ。

 へインさんの反応に笑ってしまいながら。


「もしもの時は使ってください」と言い残しへインさんから離れた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る