第19話私の誓い

私は何も言わずにメイスをストレージに戻すと微笑み。


「兎に角、私はあなたのものになどなりませんから」


私が改めてそう言うとボックスはいきなり。


「ぐ、ははは、今はそれでもいいが俺は諦めねーからな!」


ボックスは宣言するだけで、それ以上は絡まず、ギルドの出口に歩いて行った。


「では私もこれで失礼しますね」


残された私は、冒険者達が茫然としている今がチャンスとその場を逃げ出した。


私がギルドの入り口に行くと突然扉が開かれて二つの人影がギルドに飛び込んできた。

 そして、その勢いそのままに、私にぶつかってきた。

 

私はぶつかってきた人影と一緒に床に倒れてしまう。

 いった~、何よいきなり!お尻ぶつけちゃったじゃ無いの。


私がぶつかってきた影を確認しようと、前に意識を向けると右腕を掴まれた。

 吃驚している私を置き去りにして、目の前にいた人影は。


「お願い!アベルをアベルを助けて!」


声に釣られてそちらを見れば、銀髪をボブカットに纏め、ノースリーブのシャツとホットパンツという動きやすい恰好をした。

 女の子が金髪の男の子に肩を貸しながら、必死の形相で頼んできた。


女の子が肩を貸している金髪の男の子に目を向けるとかなりの重症だった。

 右腕は筋肉で辛うじて繋がっていてブラブラと揺れて今にも落ちそうな状態で身体もあちこちに切られ刺された傷が見えた。

 辛うじて臓器が飛び出した箇所は無かったが余りにもボロボロな状態で生きているのがやっとな状態だった。


「ねえ!あなた神官なんでしょ?お願い!なんでも、あたしができる事なら何でもするから!だから、お願いだから!助けて!!」


銀髪の女の子が掴んでいた私の腕に力を込めて、訴えかける。

 私は余りの惨状に言葉を失い、一瞬気を失いかけた。

 でもね、私の前には助けを求めている人がいる。

 傷ついて倒れ、今にも命が失われそうな人が、“あの時助けられなかった”助けられるかもしれない命が!

 助けられなかった無力な私じゃ無い!助けられる力が有る私だ!


「神様、今、私に力が有ることに感謝します『フルヒール』」


私は跪き両手を組み、組んだ両手を胸の前に掲げ、祈りと共に回復魔法を唱える。

 私が回復魔法を唱えると金髪の男の子は全身を光に包まれる。

 だけど、なぜか私の身体にも光が降り注いでいた。

 いつも、回復魔法を使うときは、対象者が光に包まれることは有るのになぜか私まで光に包まれていた。


しばらくして、光が収まると金髪の男の子の傷は綺麗さっぱり無くなっていた。

 シン、と静まるギルド内、冒険者たちが固唾を飲んで見守る中、金髪の男の子が呻きながらその赤い瞳を開いた。

 

「う、ここわ、!ゴブリンどもは?」


目を覚ました男の子は、辺りを見回しながら、状況を確認し始める。

 そんな彼に銀髪の女の子は抱き付いて泣き出してしまった。


その様子を見ていた冒険者達は一斉に叫び声を上げ。


「すげーな、あの嬢ちゃん」


「俺、信仰心無いけど、奇跡ってあるんだって思った」


「まさか死人まで生き返らせるなんて」


「あんなボロ雑巾でも、案外生きてたんじゃないか?」


「あの状態で生きてるわけねーだろ」


口々に意見を交わし、感想を言い合った。

 そんな中金髪の男の子は、驚愕して自分に抱き付いて泣く女の子に困惑し、周りを見渡すことしかできなかった。

 私は、金髪の男の子が生きていたことに安堵して、静かに立ち上がりギルドを離れるためギルドから出て行った。

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