第10話
中央食堂のテラスに出て一通り見回し空席で一番端にある席に座った。
席に座って感じる日差しと風が気持ち良い。
俺は食べ始めるために手を合わせる。
「いただきます」
前の世界で食前にやる行為といえば宗派ごとの祈りだったが、この「いただきます」も食後の「ごちそうさま」も祈りではなく食材と調理をしてくれた者への感謝を示す
それでは食べるか。
まずは、ほうれん草のおひたしからだ。
……美味い。
前の世界では葉物の料理は青臭さを消すために酢で漬けたり塩漬けにした物で単品では食う気も起こらない物だったが、これはなんというか繊細な味付けがされていて食べ飽きない。
次に豆の煮物を箸ですくい一口食べる。
……これも美味い。
形は崩れていないがしっかり味が染み込んでいて、おひたしと同じくいくらでも食べれる。
最後のうどんだが、まず具材の油揚げを一口かじるとジュワッと口の中にだし汁があふれてくる。
だし汁と共に噛み締めれば油揚げの甘さも混じり、さらに美味い。
次に麺をすする。
このコシと言うのか?
これのおかげで歯ごたえが良く、だし汁とからんで美味い。
……
その後も無心であっという間に食べ終わったが、もっと味わえば良かったという思いや消化に良い食事を心がけるという意味で、ゆっくり食べれば良かったと多少の後悔が浮かぶ。
まあ、食べた3品への総評は「美味い」の一言だから良しとしよう。
俺が食後の満足感に浸っていたら食堂の中の気配がザワめき、こちらに視線が集まってくるのを感じた。
何が起こったか確かめるためテラスのドア辺りを見ると、システィーゾがドアを開けてテラスに出てくるところだった。
…………テラス内に空いてる席が他にあるにもかかわらずシスティーゾは、俺の方にまっすぐ歩いてくる。
食堂内だけでなくテラスにいる学生達の視線も俺の方に集まってきた。
厄介ごとの匂いしかしないのと食事も終わっているため、ここで席を立っても良いとは思うが、このままシスティーゾの動向を見守る事にする。
……テラス内の席は丸型のテーブルの周りを4つのイスが囲み1組になっていて、テラス内には当然いくつものテーブルがあり空席は他にもあった。
それにもかかわらずシスティーゾは、わざわざ俺の対面の席に無言で座ると俺をにらみつけてくる。
「…………」
俺に何が用があるのかと待っていても、システィーゾは俺をにらみつけてくるだけで何も話しかけてこない。
しばらく待って特に何も状況が変わらなかったため、俺は席を立つ事にした。
「…………待て」
俺が席を立とうとしてシスティーゾが声をかけてきたから俺は座り直す。
「僕に何か用ですか?」
「……貴様、何者だ?」
「試合の時も言いましたが、
「ふん、これまでの事など当てにならん。貴様は明らかに
まあ、さすがに
特に目の前でその変化を見て体感したシスティーゾにしてみれば当然の疑問だな。
さて、どう答えるか……。
最優先は今は精神の奥で眠りについている
それならば、どう答えるかは決まっている。
「何度聞かれても僕の答えは変わりません。僕は
「……チッ」
システィーゾは舌打ちをした後に、また無言になる。
俺は話が終わったと判断して席を立とうとしたら、システィーゾが右手で炎を放ってきた。
俺は瞬時に出した黒い木刀でシスティーゾの右手を下から上にすくい上げて放たれた炎がどこにも当たらないように空へ逃がす。
「危ないですね」
「……必ず貴様の正体を暴いてやる。覚悟していろ」
完全に目をつけられたな。
これ以上
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
「面白かった!」、「続きが気になる、読みたい!」、「今後どうなるのっ……!」と思ったら応援❤️や応援コメントをいただけるとうれしいです。
また作品のフォロー登録や最新話の下の方にある☆☆☆での評価やレビューで、さらに応援してもらえると本当にありがたいです。
なにとぞ、よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます