さぁ、冒険に出かけよう!

お茶の。つづく

序章

追憶、少女が見た世界

 空にふわふわ浮いてるあれはなんだろう?

 川を泳いでるお魚じゃないあれはなんだろう?

 暖炉で燃えている火の中にいるあれはなんだろう?

 土を掘るとひょっこり顔を出すあれはなんだろう?


「あたちには見えないなあ」


 お友達に聞いてみたけど、みんな見えないって言った。

 そこにもいるのに、みんなの側にもいるのに。


 お父さんとお母さんにも聞いてみた。

 でもやっぱり見えないって言った。

 ちゃんとそこにいるのに、みんなには見えないみたい。


 だからなのかなぁ。

 その子たちが寂しそうな顔をしてるのは。


 ある日、男の子たちがからかいに来た。


「やーい、変なのが見える変な女ー!」


 そう言って男の子たちは石を投げてきた。

 わたしは変な女の子なのかなぁ。

 でもだからって石を投げてくるなぁ!

 むきー!


 誰にも見えない不思議あなたたち。

 あなたたちは一体誰なの?


 ある時、みんなで遊んでいてわたしは迷子になった。

 ひとりが怖くて寂しくて、泣きながらお家を探した。

 お外はどんどん暗くなるのに、お家に帰れなかった。


「どうしたの君、迷子なの?」


 話しかけてくれたのは、見たことのないお姉さん。

 お姉さんは泣いてるわたしの頭を撫でてアメをくれた。


 本当は知らない人からもらっちゃダメだけど、アメは甘酸っぱくておいしかった。


「この街には詳しくないけど、放ってはおけないなぁ。よーし、私が必ず君のお家を見つけてあげる!」


 お姉さんはわたしのお家を一緒に探してくれた。

 わたしが泣くと大丈夫と言ってアメをくれた。


 どうしてお姉さんはわたしを助けてくれるの?


「んー? それはもちろん、私は冒険者だからね!」


 お姉さんはそう言って胸を張って笑った。

 気づけばわたしもなんだか元気になって笑っていた。


 その後、帰ってこないわたしを探してたお父さんやお母さん、それにたくさんの大人のひとたちを見つけて、わたしは無事に帰ったこれた。


「大冒険だったね! 君と一緒に冒険できて楽しかったよ!」

 

 お姉さんはにっこり笑ってそう言った。

 わたしもはじめはひとりで怖かったけど、お姉さんと一緒にいれて楽しかった!

 お父さんとお母さんと一緒にお礼を言ったあと、お姉さんは帰る時に。


「じゃあね、これからの君の冒険に幸あれ!」


 最後にそう言って、わたしの頭を撫でてアメをくれた。


 怖かったけど冒険は楽しいものだと知った。

 わたしもいつかお姉さんみたいになりたいなぁ!


 季節が変わり冬がきた。

 外は雪が降って真っ白な世界になった。


 お友達は楽しそうに遊んでいたけど、わたしはお家の中で泣いていた。

 毎日お水をあげてたお花が枯れてしまったから。

 いつもお水をあげると喜んでいた子たちも元気がない。


「ココ、お別れは悲しいけれど、そのお花も綺麗に咲くことができてきっと喜んでいるよ。だからちゃんとありがとうとさようならをしないとね」


 お母さんと一緒に咲いてくれてありがとうと心を込めてお礼を言った。


 するとあの子たちは、ぴょんぴょん跳びはねてからわたしとお母さんに大きく手を振って消えていった。


「え!?」


 お母さんは驚いた顔でわたしとお花を見ていた。

 その日の夜、お仕事から帰ってきたお父さんに今日のことを話した。


「私も見たの、ココが言ってたことは本当だったのよ」

「もしかするとそれは花の精霊だったのかもしれないね」

「おとぎ話に出てくる精霊が、ココには見えていてあの時私にも見えた……不思議なことがあるものね」


 どうしてわたしには見えるの?


「うーん、それはお父さんにもわからないなぁ」

「もしかすると精霊さんたちは、今もここにいるんだよって伝えてるのかもしれないわね」


 あの子たちいつも寂しそうだから、わたしがみんなにいるんだよって信じてもらえるようにがんばる!


「ふふ、そうね。みんながいるって信じてくれれば、精霊さんもきっと喜んでくれるわ」


 うん!

 決めた!

 わたしあのお姉さんみたいな冒険者になっていろんな冒険をして、みんなに精霊さんのことを教えてあげる人になる!

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