恋人たちの四重奏

ひろきち

プロローグ -始まりの日-

[ピンポーン]

インターホンの音に部屋のドアを開けると隣の部屋に住んでいる恋人の楓が立っていた。

珍しいスーツ姿だ。


「お待たせ! 遅くなってごめんね。ケンち・・・じゃなくて健吾君♪」

「おはよう楓。まだ慣れないか?呼び方。無理しなくてもいいんだぞ」

「う~ん。でもこういうタイミングじゃないと呼び方とか変えるタイミング無いし」

「まぁ確かに」

「でしょ」


楓とはご近所同士の幼馴染だったけど、小学生の時に俺は親の仕事の都合でこの川野辺の町を離れた。そして高校2年の時、7年ぶりに町に戻り楓と再会。

小学生の頃は一緒にサッカーしたりゲームしたりと男友達の様な付き合いというかライバルでもあり親友みたいな関係だったけど・・・再会した楓は見惚れるくらい可愛く綺麗になっていて・・・ちょっと違うかもしれないけど一目惚れ?の様な感じで思わず告白してしまった。

半ば勢いみたいなところもあったけど、楓も7年間俺の事を思い、彼氏も作らず待っていてくれたということで告白はもちろんOK。

気が付けば周りからバカップルと言われるくらいの関係に。


まぁそう言うこともあって小学生の頃からの癖で高校時代は楓から"ケンちゃん"と呼ばれていたんだけど流石にそろそろ恥ずかしい(正直今更感は・・・)ということで大学に進学するこのタイミングで呼び方を"健吾君"に変えることになったんだ。でもまぁ癖というか中々ね。


ちなみに俺の方も"健吾君"と呼ばれると慣れないからか何だかドキっとしてしまう。

さて、そんな楓とは地元にある同じ大学を受験し揃って合格。

今日はその川野辺大学の入学式というわけだ。


「それはそうと親父達は後から来るんだし、とりあえず早く行こうぜ。入学式から遅刻はシャレになんないし」

「だよね。遅くなってごめんね。

 普段あんまりお化粧とかしないから時間かかっちゃって」

「まぁ楓は化粧とかしなくても可愛いけどな♪」

「もう!恥ずかしいよ」


な~んて朝から楓とじゃれ合っていると


「朝から仲がよろしいことで・・・それよりほら、早く入学式に行くよ」

「「露!いつから!」」

「さっきから居たわよ。朝から2人の世界作っちゃってるから声掛けづらかったの!

2人共昔は意地張りってばっかりだったのに数年ぶりに再会したらラブラブになってるとか・・・ほんと妬けちゃうわね」


会話に入ってきたのは俺の従姉妹でこの春から同じ大学に通う田辺 露。

見た目だけならお世辞抜きで可愛いと思うんだけど・・・結構毒舌で俺は少し苦手だったりもする。

小さい頃は身体が弱くて、人見知りの大人しい感じの子だったのにしばらく会わないうちに・・・なぜこうなった?


まぁそれはそれとして、そんな露も入学式ということで今日はスーツ姿だ。

長い髪はサイドテールでまとめられ、普段より少し大人っぽい雰囲気。多分、街中を歩けば振り返る人も結構いそうなレベルの美少女っぷりだ。

ちなみに露の実家は都内ということで、俺達と同じアパートに住んでいる。


「け 健吾君はあげないんだからね!!ほら健吾君も露の事をそんなに見ないの!」

「もぉ前にも言ったでしょ。別に取るつもりないから大丈夫だよ」

「そうだよ楓。俺も露はただの従姉妹だとしか見てないし」


そうそう。それ以上になることはないよ。


「え!?そうなの!私は健君の事を・・・」


そう言いながら上目使いで俺を見つめてくる露。


「え、あの、露・・・さん?」

「・・・・ははは」

「え?」

「 慌てちゃって♪大丈夫だよ私も従兄弟としか思ってないから。安心しなよ楓ちゃん」


何やら俺の反応を面白そうに笑う露。

この辺りは雫姉に似てるというか・・・姉妹して俺の事からかって。

楓はそんな露を怪しげに見ながら話しかける


「ほんとう?」

「ほんと ほんと♪さ、早く行こうよ。私この辺りの地理詳しくないんだから案内よろしくね!」


はぁ~朝から疲れるわ。

ってこの先、毎朝こうなるのか?





------------------------------

川野辺駅前からバスに乗り大学へ。

今日は大学内の講堂にて入学式が行われる。

この大講堂は大学自慢の施設らしく時折各種音楽イベントなども行わている。

そういえば、前に楓とクラッシックコンサートを見に来たこともあったよな。


ちなみに2階は保護者席で1階は新入生ということなので、俺は楓と露と一緒に入り口で手続きをしたのち1階の席へと向かった。

露は見た目可愛いし、楓も綺麗系だ。それに俺も楓も背が高めということもあり結構目立ち、周りからの視線を集めた。


「ねぇ健吾君あのあたり座ろうよ」

「そうだな」


席は自由だったので俺達はステージが見やすい中寄りの席を選んで座った。

すると後ろの席から突然声を掛けられた。


「田辺。それに小早川さん!」

「楓さん久しぶり!」


「藤原。それに森田さん、夏川さんも」


うしろを振り返ると高校バスケ部時代のライバルでもありバイト仲間でもあった藤原と夏川さん、そして藤原の彼女の森田さんの姿があった。

そうだよな。これからは藤原達とも同級生なんだよな。

俺や楓が藤原達と挨拶をしていると露が俺のジャケットの裾を引っ張ってきた。

何か用事かと思い露の方を向くと小声で話しかけたきた。


「高校の時の知り合い?」

「あぁ別の高校なんだけどバイト先が同じでな」

「そうなんだ。私も紹介してもらえないかな?」

「あぁそういえばそうだな」


俺や楓に対するいつもの雰囲気と違って何だか少しオドオドしている。

もしかしてだけど人見知りは相変わらずなのかな?


「藤原、それに森田さん、夏川さん。

 こいつなんだけど、俺の従姉妹で田辺 露って言うんだ。雫姉の妹で俺達と同級生になるからよろしくな」

「あ あの・・・田辺 露です。文学部です。よろしくお願いします」


「こちらこそよろしく。俺は藤原 和志。田辺とは部活ではライバルだったけどバイト仲間でね」

「私は森田 由紀。私も文学部だから一緒だね♪」

「私も文学部だから一緒かな。あ、私は夏川 唯香ね。

 雫さんの妹さんって事は・・・もしかして露さんもバスケやってたの?」


「は はい。姉程上手くはないですが、一応やってました」

「わぁじゃあバスケ部入る?私もバスケ部入るつもりだから一緒にやろうよ!」

「は はい。是非」


え!?そうなの?露もバスケやってたの?

と思い楓を見ると知らなかったという体で首を横に振っていた。

今は元気そうだけど、俺も楓も露は身体が弱いイメージだったから運動部に居たとか想像もつかなかったんだよな。

まぁ雫姉は全国レベルのプレイヤーだったから比べるのもだけど・・・露はどんなプレイヤーだったんだろ。

っていうか雫姉ってそういう情報全く教えてくんないよな。

露の引っ越しも俺と楓に押し付けて自分は亮兄とデートに行っちゃうしさ。



その後、始まった入学式は滞りなく進んだ。

明日からは、いよいよ本格的な大学生活が始まる。

勉強もだけどバスケもまた頑張りたいな。

今から楽しみだ!


ちなみに露は何やら夏川さんと打ち解けたのか式の間も楽し気に会話をしていた。

露の大学での友達第1号かな?



***********************

ということで7年目の約束の続編を開始させていただきます。

土曜~日曜辺りで最低週1回は更新を行えるよう頑張りますのでよろしくお願いします(今担当しているプロジェクトが落ち着けば少しは余裕も出るはずなんですが・・・)



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る