第3章 10 いきなり2度目のチェンジ 1
長いオールを持った時に、私にある考えが浮かび・・すぐに頭の中でロザリアを呼び出した。
≪ ロザリアッ!! ≫
≪ キャアッ!な、何ですかっ?!里香さんっ! ≫
≪ 今の状況は分るわね?さあ!今すぐ私と身体を入れ替わりなさいっ! ≫
そして私は無理矢理、里香さんに身体をチェンジされてしまった。
「ロザリアちゃん。どうかしの?」
私が少しの間無言だった為か、ナッツさんが首を傾げるように私を見ている。
「い、いえ。何でもありません。どうかお気になさらないで下さい。」
必死でホホホホと笑ってごまかす。
≪ 酷いじゃないですか、里香さんっ! ≫
頭の中で里香さんに抗議する。
≪ 何言ってるのよ。ナッツさんの事は知ってるでしょう?ジョバンニ以外の男の人との初デート・・頑張りなさいよっ! ≫
そして里香さんとの通信?は途切れてしまった。
「大丈夫、ロザリアちゃん?」
突如声を掛けられて、気付けば何とナッツさんは至近距離でじっと私を見つめている。イヤアアアッ!は、恥ずかしい・・・!
「は、はぃいっ!だ、大丈夫ですっ!」
端正な顔立ちのナッツさんにじっと見つめられて、思わず顔が真っ赤になってしまう。
「あれ・・・どうしたの?さっきとは何か・・・まるきり雰囲気が変わっちゃったね。フフ・・初心な女の子みたいだ。こういうロザリアちゃんも可愛らしいね。」
等と言いつつ、ナッツさんはそっと私の右頬に触れてきた。
「あ、あ、あの・・・。」
もう、私の頭はキャパシティーが一杯だ。顔から火が出そうなほどに真っ赤になっているのが自分でも分る。
私たちは湖の淵でボートの端っこに座って見つめ合っていると・・・。
「ロザリアーッ!!」
湖のすぐそばでジョバンニ様の私を呼ぶ声が聞こえた。慌てて声のする方を向くと、そこに紙コップを片手に、ハーハーと荒い息を吐いている、何とも間の抜けた格好の一応まだ私の婚約者であるジョバンニ様が立っていた。
「あ・・ジョ、ジョバンニ・・・様・・・・。」
私はジョバンニ様を上から下までじっくり見た。ぼさぼさに乱れ切った髪に赤ら顔。荒い息を吐きながら、パークに来るには不釣り合いなスーツ・・・。
何とも見れば見る程にジョバンニ様から魅力を感じなくなってくるのは何故だろう?
一方、目の前にいるナッツさんは・・端正な顔立ちに、真っ白なYシャツから覗く逞しい体つき・・思わず目を奪われてしまう。
「おい。ロザリア。こんなところで一体何をしているんだ?俺とデート中だと言うのにお前は俺という婚約者がいながら、他の男と2人でボートに乗っているのか?」
ジョバンニ様はイライラした様子で私を睨み付けている。
「おい!そこのお前っ!彼女は俺の婚約者だっ!勝手に手を出さないでもらおうか?さあ、ロザリア。すぐ船を降りてこっちへ来い。今ならまだお前のその無礼な態度を許してやるから。」
何とも上から目線の態度で私に命令して来るジョバンニ様。しかし不思議な事に私の心にはさざ波一つ立ってこない。
「おい、ロザリア。聞いているのか?全く相変わらず鈍臭い女だ・・ボートから降りられないなら俺が手を貸してやる。」
すると今まで事の成り行きを見守っていたナッツさんが口を挟んできた。
「君、さっきから黙って聞いていれば随分ロザリアちゃんに酷い事を言っているね。言っておくけどロザリアちゃんは今日はもう君とのデートは終わったんだよ。これからは俺とロザリアちゃんのデートの時間なんだから。」
「な、何だってっ?!貴様・・っ何って失礼な奴だっ!この・・庶民のくせにっ!」
ジョバンニ様がナッツさんに掴みかかろうとした時・・・。
「ロザリアちゃん、オールを借りるね。」
不意にナッツさんは私と座る位置を素早く交換すると、オールを握りしめて物凄い速さでボートを漕ぎだした。
「うわああああっ?!」
不意にボートが動き出し、掴みかかろうとしたジョバンニ様は・・・。
ドッボーンッ!!
派手な水音と共に湖に中へと落ちてしまった。
「ぶわっ!お、溺れるっ!」
「ああっ?!ジョバンニ様っ?!」
水の中でもがくジョバンニ様がどんどん遠くなっていく。何て・・惨めな姿なんだろう・・。
気付けば私の顔には笑みが浮かんでいた―。
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