第1章 12 素顔確認
この太めの身体はどうやら運動音痴らしい。廊下を走ってるだけで息切れするなんてあり得ないっ!それにしても・・・・。
「どうして誰もいないのよっ!」
廊下を走りながらやけくそになって叫んでいた。大体これほど立派な屋敷なら使用人の50人位はいてもいいんじゃないのっ?!
「も、もうダメ・・これ以上走れない・・・。」
ゼエゼエ言いながら廊下の壁に寄り掛かると、そこはたまたまドアだったらしく、ガチャリと開いて私は後ろに倒れこんでしまった。
「キャアアッ!」
急に背もたれがなくなり、そのまま後ろにもんどりうつ私。
ドスンッ!!
鈍い音を立てて私はおしりから床に倒れこんでしまった。
「く~・・・・いった~い・・・。うう・・もう何なのよっ!」
腰をさすり、床に座ったまま室内を見渡すと、思わず自分の運の良さに小躍りしてしまいそうになった。何とたまたま入り込んだ室内はバスルームだったのだ。
タイル張りの床に壁は一面の白。腰の高さにある窓の下にはアンティーク好きな乙女にはたまらない?猫足のバスタブ。
さらに浴室内を見渡すと壁には洗面台が取り付けられ、細かいタイルでできたすり鉢状の洗い場の奥にはいぶし銀の蛇口が床の上から伸びている。コックをひねれば水が出てきそうだ。
「え~と・・・タオル・・それに石鹸は無いのかな・・?」
あたりをきょろきょろと見渡すと正面に壁に取り付けられた木製の棚を発見した。
「どうかタオルが入っていますように・・。」
棚に近づくと祈る気持ちで持ち手を握り、いざ、オープン!
カチャリと観音開きの扉を開けると、中は3段の棚に分かれており、おあつらえ向きに上部には真っ白なタオルがきっちり折りたたまれて入っていた。そして下段にはかごに入ったソープディッシュの上に固形石鹸が入っていた。
「やった!タオル発見!しかも石鹸迄あるじゃないの!」
そこでさっそく私は顔を洗うことにした。しかしここで問題発覚。このロザリア、髪の毛が長く腰まで届く。両サイドはリボンでまとめて後ろに垂らしているのだがこれでは顔が洗いにくい。
「全く・・・こんな長い髪の毛、邪魔なだけだっつーの。」
私のもともとの髪の長さは肩につくかつかないかの長さしか無い。この身体にロザリアの意識が無ければこんな長い髪うっとうしいだけだからバッサり切ってやるのに・・。でも、勝手に切れば泣いてしまいそうだしな・・・。
「仕方ない・・我慢するか。」
しようがないので、リボンをほどき後ろで一つにまとめた。そしてコックをひねり水を出すと石鹸を濡らす。そして念入りに泡立てて・・・・うう・・・手だけじゃ泡立てにくい。こんな時にスポンジか、目の細かいネットでもあれば簡単に泡立てることが出来るのに・・・。しかしあいにくここにはそのようなものは存在しない。
「あ~!めんどくいっ!」
仕方ないので手の上で5分ほど必死で石鹸を泡立てると顔に乗せ、泡で撫でるようによ~く洗って、最後に水でバシャバシャと念入りにすすぐ。
キュッキュッ
コックをしめて水を止めるとタオルで優しく顔の水気を拭き取り、真正面にある壁掛け鏡を眺めてみる。すると・・・。
「あら~・・・なかなかこれは・・・。」
そこには小太りだが、なかなかの美少女が鏡の中に映っていた―。
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