第1章 10 勝手にすれば?
馬車はガラガラと音を立てて走り続けている。そして私の向かい側の席に並んで座るジョバンニとセレナは顔をくっつけて話をしながらクスクスと笑いあったり、こちらを時折見ながら囁いたりしている。これは明らかにこの身体の本来の持ち主であるロザリアを意識してやっている行動なのかもしれないけれど・・・所詮この2人は高校生のお子ちゃま。しかも私の双子の弟妹よりも年下なのだ。何も感じるはずがない。そんな事よりもこの響き渡る揺れとガラガラと音を立てる馬車の方が気がかりだ。ゴムがあるなら車輪にはめ込めばよいだけの事。ただ、私にはあいにくゴムの知識も車輪の知識も無い。誰か専門家に頼めば・・・。等と考えているうちに馬車の外の景色は単調な森の中に入ってしまった。・・いかん。眠くなってきた・・・。
「ねえ。」
私は眼前でいちゃつくジョバンニとセレナに声をかけた。途端に何故かこちらを向いて笑みを浮かべる2人。
「ふん。何だ?何か俺たちに言いたいことでもできたか?でもお前に口を挟める権利などないからな。こんな婚約いつでも破棄できるのだから。」
何故か勝ち誇ったかのような言い方をするジョバンニ。
「ジョバンニ様。そのような言い方はロザリア様が気の毒ですわ。」
鳥肌が立つかのようなお上品な話し方をするセレナだが、あんたの本性はもう知ってるのよ。
もう相手にするのも面倒くさい。
「私、眠くなっちゃったから寝るね。悪いけど着いたら起こしてくれる?それじゃよろしく。」
「「へ・・・・?」」
目をぱちくりさせてきょとんとする2人は放っておいて、馬車の壁に寄り掛かり、目をつぶって・・・。
「おい!ふざけるな!ロザリアッ!」
大声を上げるジョバンニ。
「何よっ!うるさいわね!眠いんだから寝かせてよっ!」
私も負けじと声を張り上げる。セレナは何故か固まっている。
「お前・・・この状況を見て本当に何も思わないのか?いつもなら目に涙を浮かべて俯いてプルプル震えているじゃないか?!」
「うるさいなあっ!あんた達にはこれっぽっちも興味無いのっ!勝手にいちゃついていればいいでしょう?!私には何の関係もないんだからっ!それより私の眠りを妨げないでよっ!それとも・・・私の気を引くためにわざとやってるの?!」
「!!」
するとジョバンニは顔を真っ赤に染めて一瞬固まった。え・・・?嘘・・・。ひょっとして本当にロザリアに興味があったとか・・?
「え?ジョバンニ様?」
セレナも何か感じ取ったのか、不安げにジョバンニを見る。
しかし次の瞬間・・・・。
「何を馬鹿なことを言うっ!俺はなあ・・お前のような女には1mmも興味ないんだよっ!」
「だったら興味がない者同士お互いさまということで、もう私に構わないでくれる?眠くてたまらないんだからさっ!」
うん、本当に冗談抜きで眠くてたまらない、おかしい。絶対に妙だ。どうしてこんな夕方から・・・居心地の悪い馬車の上でこれほどまでに眠くなるのだろう?まるで得体のしれない力によって、強制的に眠りにいざなわれているような感覚だ。もう瞼を開けているのもしんどい・・。私のそんな様子に気付いたのか、何故かジョバンニが心配そうな様子で声をかけてきた。
「おい?どうした?ロザリア?大丈夫か?しっかりしろよ。」
うるさい・・・こっちは眠すぎて・・返事も出来ないんだから・・・。
グウ・・・。
そして私は目の前が真っ暗になった・・・・。
****
カチコチカチコチ・・
どこからともなく、規則的に時計の音が聞こえてくる・・・。
え?時計?!
慌ててガバッと飛び起きると、そこは見知らぬ部屋だった―。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます