第2話 屋敷の中

 伯爵邸をリネットといろいろと練り歩き場所などを把握することにした。お庭に小さな池があったが掃除されてないのか汚い。


 古い書庫もあまり使われてなくカビ臭く

 て埃もある。

 それから一応薬草園があったが枯れかけ。手入れの庭師はいないのか。

 屋敷自体も古いしあまり補正されていないようた。すると廊下の端からヒソヒソ声が聞こえた。


「ねぇ、奥様のセシリア様はお綺麗だけどやはり旦那様には見向きもされないわ!」


「当たり前よ!あんな禿げ!誰も愛せないわよ!直ぐに離縁するわよ」

 とクスクス笑っている。


「奥様のお持ちになられた持参金はいくらかしら?この家も少しは修繕してほしいわね!古いものばかりでつまらないわ!」

 と言う。そんなに貧乏なのかしら?


 歩いていくと旦那様の書斎の前でディーンさんがまた叱り付ける声がした。


「全く!坊ちゃん!!あんなお美しい方が来られたのに!何故もっと自分をアピールしないのです!?奥様なんですよ?プレゼントをして気を引きお子様を!後継を作るべきです!!」


「………いや、僕にはあの人は高嶺の花だよ…。それに僕はこんな頭だし…」


「諦めるなあああ!諦めたらそこで終了じゃあ!!」

 とディーンさんは凄い形相で言うと、


「もうこの頭は終了している。ほっといてくれ。…大丈夫。社交シーズンはなるべく…カツラを被るけどセシリア様が恥ずかしいようなら僕は離れた所にいるし…」

 と言うとバチンと音がした!


「痛い!お父様にも殴られたことないのにっ!」


「死んでますから当たり前でしょうが!私がお父上に代わり、坊ちゃんを代わりに育てあげたのですぞ!あんないい縁談ありませんよ!美人に恵まれたと言うのになんという気弱な!これでは浮気されてしまいますぞ!」

 と言うとローレンス様は


「ああ…別にいいよ…。僕には魅力のかけらすらない。他の人がセシリア様を幸せにしてくれるならそれでいいし、子供も望むなら引き取って跡取りにしてもいいし、離縁を望まれるなら受け入れようと思う。こちらからは強く言わないよ…」


「ローレンス様っ!」

 とまたバチンと聞こえた。


「痛いよ…お母様にも殴られたことないのに…」

 と言うとディーンさんは


「そりゃ死んでますからなぁ!私が母親代わりとしてここまで育てたんですぞ!」

 さっきは父親とか言ってたな。


「せめて夫婦らしく楽しく会話するのですぞ!!奥様の前では笑って辛い話や暗い話はしないことと教えたでしょうが!!」


「うう…わ、わかっているよ…」

 と情けない声がした。

 ていうかそんな叱らなくてもいいのに。だからストレスで禿げるのよ。


 屋敷もなんか汚いのはメイドの教育がなってなくサボってるのが丸わかりで座って話してるメイドは私を見ると急に立ち上がり掃除を始めた。いや、フリかも。私が行くとサボる気ね?


「なんかとんでもない所ですね。私も昨日少し場所を聞いたり、この家の決まり事なんかを聞いてみたんですがメイド長は適当にしていいわよって言っねました」


「適当って…酷いわね」

 リネットと唸る。っ


「リネット…これは改革が必要かもだわ。ビシっとしないから余計に舐められるし社交界に出ても笑われるのは旦那様が禿げてるだけのせいじゃないかもだわ!


 この家がちゃんとしていないのよ!!それにこのボロさも!帳簿管理はきちんとしているのかしら?もしかしたら横領している者がいるのかもしれなくてよ?」


「私もそう思います…。しかしそれを言うと王子に知れたらこの家大丈夫でしょうか?取り潰されたりしないでしょうか?」

 とリネットが言う。確かになんだかんだで私を酷い目に遭わせた性格の悪い王子がいる。


 私は悪の令嬢として既に王都で噂だろうし。


「とにかく屋敷をちゃんと綺麗にしてみましょう!サボる人には給金は渡さないか減らすのよ!」


「はい!セシリア様!あ!私は頑張ります!汚いのは耐えられない!!」

 とリネットは燃えた。


 *


 次の日ローレンス様に朝食の席で言った。


「え、掃除がしたいって…掃除なら使用人達がしている…よね?」

 と最後は自信なく言う。


「いえ、辛うじて私の部屋はまともにしているようですけど?この屋敷の惨状を見れば判ります!歴史があるのは判りますが壊れて危ない手摺りもただの見せかけで直している風に見せています!ちゃんと直さないと怪我人も出ます!


 後、お庭と池の掃除もしますわ!道具があれば私とリネットも頑張って掃除します!」

 と言うとローレンス様は驚いて立ち上がった表紙にズルリとカツラがズレてそれを見て使用人達は笑い出した。


「貴方達も!カツラがズレたくらいで笑わないの!旦那様も!笑われてストレスで禿げが進行するなら!こんなカツラもう要りませんのよ!」

 と私はカツラを引っ掴み暖炉に思い切りブンの投げ入れて燃やした!!

 パチパチと燃えゆくカツラ。


「ああああああ!!」

 とローレンス様は悲鳴をあげる。

 しかし私は鬼のように腰に手を当て胸を張り言った!


「自信をお持ちください!禿げなんて気にしなくてもいいのです!!自信があればいずれ生えますわ!!お約束致しましょう!毛がちゃんと元通りになった時貴方とお子を作りましょう!!それを目標に頑張るのです!!」

 と私はハッキリ告げた!


 目を丸くしてローレンス様は固まりかけたが


「……は…はい…」

 となんとか言う。

 再び使用人達に向け


「皆さん!この屋敷は確かに古いですけど丁寧に磨けばもっと美しい状態になれます!日々の努力次第です!家が綺麗になれば心も綺麗になります!今の貴方方は他人の不幸を嘲笑う笑う汚い汚れた心の人間のままですわ!!


 自分の人生を綺麗に潤わせたかったら!もう人を笑うのを辞めて熱心に出来ることを精一杯やってご覧なさい!!


 そうすれば世界は違って見えますわ!」


 と言うと全員固まりかけたが次第に拍手された。ローレンス様もポカンとしていた。


「ローレンス様…部屋でいつも仕事してばかりであまり外に出ていらっしゃらないのでは?」


「え?…ええまぁ。すみません…」


「でしたら毎日散歩なさったらどうです?外の空気を吸うことで頭もスッキリです!散歩の習慣をつけるのです!」


「は、はいいいい!!」

 と私に言われローレンス様は従うことになった。

 鬼嫁とか流石悪の令嬢とか言われるだろうが気にしない。


 *


 次の日から私は早速リネットと屋敷を掃除し始めた。


「奥様!私共がやりますわ!」

 と数人が出てきたが


「貴方達は仕事が甘いのです!ほらこの隅を見なさいな!埃が溜まりきってる!!来客時に死角だから目に入らないとでも思いそのままにしていたんでしょう?」

 リネットはスッとそこを拭いて見せた。


「ここだけではなくこの窓枠の冊子の所もうちから持ってきた洗剤ですがこれを使うとこんなに綺麗になります!見てください!汚れた方と今掃除した所を!」

 と拭いた方とそのままの方の違いを見せ付ける。


「ああ…ほ、本当…。私達水拭きばかりで…」


「毎日このピカピカを見たいと思いません?気分も良くなりますし」


「おっしゃる通りですわ…」


「必要ならもっと洗剤の手配をしますわ!」

 と言い私は使用人達に正しい掃除のやり方を教えさす。リネットも鬼になり指導した。


「それから…貴方達…もし手が荒れて酷いなら私の部屋に後でいらっしゃい。クリームを塗ってあげるわ。いい店を知っているから頑張って働いたら給金で買えるはずよ!」

 と言うと使用人達は一気に頑張り始めた!!


 帳簿管理をしている者にも会い調べるとやはり不正がある。


「貴方!この分のお金はどこに行ったの?金庫のお金と合わなくてよ!?」


「そ、それは奥様達の結婚さらた時の料理に…」


「あの料理にそんな大金は必要ない!横領ね?ここの管理は貴方でしょ?他の者は容易に出来ないし鍵は貴方と旦那様しか持ってない!


 引きこもっていた旦那様も任せていたようですしね!残念ながらクビです!よく見たら他の者の給金もちょろまかしていますね!?


 もっと信用ある人を雇う方が賢明です!舐めないで欲しいわ!」


「ひいいいい!!奥様お慈悲をををを!!」

 うるさい!そんなもんないわ!!


 その私の様子を柱からそっと旦那様が覗いていた。


「………なんと素敵な人なんだろう…」

 と呟いていた。

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