第17話 1日目 試練はじまる
移動中のバスの中では、周囲の視線が痛かった。
俺の班は男子三人、女子三人。
性別だけ見れば半々、非常にバランスが良い。
が、見た目だけなら男二人が美少女四人を囲っているように見えてしまう。
まあ、新井
毎年、林間学校は富士山麓のキャンプ場で行われる。
今年はこの「だだっぴろキャンプ場」だ。
ここで班別にコテージで宿泊する。
食事は野外炊飯。二日目の夜にはキャンプファイヤーまでやるという熱の入れようだ。
キャンプ場の共用芝生広場で開会式やら注意事項の説明がされた後、俺たちは割り当てられたコテージへと向かった。
班員名簿の提出が遅かった俺たちは、キャンプ場内で最奥のコテージだ。
コテージ内は広く、ダイニングキッチンには大きな木のテーブルが置かれている。
寝室に使える部屋は二階も合わせて二つ。それぞれに二階建てベッドが二基ずつ置かれていた。
それ以外にも簡易的な布団もあり、このコテージだけで十名の就寝が可能だそうだ。
「うわぁ、すごい」
やたらと広く、普通にテントを張れそうな感じだ。きっとパリピたちはこういうところで「BBQ! BBQ!」とか叫びながら肉を焼き、飲んで歌って踊るのだろう。
トイレは各コテージにあるが、お風呂は共同の大浴場だが温泉を引いているという。
……控えめに言って、高校の林間学校としては最高である。
とりあえずコテージ内の内見が済んだところで、内線電話で召集をかけられた。
二泊三日ぶんの食材と、薪を配給するらしい。
さて、試練が始まる。
この食材配給、先着順で自由に選ぶという、早いもの勝ちなのだ。
そして今いるコテージは、配給場所の管理棟から一番遠い。
「管理棟に向かうメンバーを選ぶぞ」
足が速そうな上位三名。
俺と
この三人で、キャンプ場の受付がある管理棟へと走って向かう、予定だったのだが……。
「せんぱぁい、走るの早いですぅ〜」
どうしてこいつ、ウザい一年女子の
ちなみに一番先頭を走るのは、筋肉巨神兵こと
俺は体力自慢の
「あの女が勝手に着いて来てんだろ? なら合わせる必要はねェ」
と、冷たいお言葉。
たしかにそうである。
急ぐ理由はあるけれど、ゆっくり走る理由は無い。
試練は、もう始まっているのだ。
俺たちが着くと、すでに管理棟の前には行列が出来ていた。
「ほら見ろ、その女のせいだ」
やはり去年と同じく、この林間学校で配られる食材は、早いモノ勝ちだった。
良い肉、新鮮な野菜は早い班から持っていかれる。
それは事前に説明してあるのだが。
結果、俺たちの食材は。
「……このキャベツ、潰れかけてやがる」
「
「お肉は……赤身ばっかりじゃないですかぁ〜、霜降り食べたいですぅ〜」
解せぬ。
だか、
俺たち三人でダッシュで走れば、もう少し良い食材が手に入ったのに。
「おいガク、やっぱりあの女を班に入れたのは失敗だと思うぞ」
やっぱりそうなるよなぁ。
コテージに戻った時には、すっかり
なかなかコテージに入ろうとしない
「ひゅあっ!?」
「最終的に
「でも……」
「
そして今回、責任を取る手段を俺は用意していた。
まさか自分がリーダーになるとは思わなかったけど。
「それにだ、
「そう、だけど」
「なら、その自分の判断を信じろ。それに」
咳払いをひとつ挟んで、
昔とった杵柄、というやつだ。
「その、あれだ。頼りないけど……成り行きとはいえリーダーだし、一応、お前の師匠でもあるから、な」
「……うんっ」
しかし年頃の女の子の頭を撫でるなんて、めちゃくちゃ心臓に悪い。
つか二度とやらない。
「師匠のなでなで、気持ちよかったー」
二度と、やらない……かな。
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